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▼『中医臨床』
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薬局漢方の魅力 【特集】薬局における漢方・生薬製剤の中医学的運用 (前篇)
わが国は社会の超高齢化に伴い,生活習慣病を始めとした慢性疾患が中心となる疾病構造にシフトしてきている。これを受け,近年はセルフメディケーションの考え方が叫ばれるようになってきた。漢方薬はそんなセルフメディケーションを支える最も有力なツールの1つであろう。また,漢方相談を行う薬局は,健康寿命の延伸や予防に関心をもつ国民のニーズに応えることができ,セルフメディケーションを成立させるうえで重要な役割を担うことが期待される。
漢方薬局で購入できる漢方薬には,煎じ薬と製剤化されたものがあるが,本特集では製剤について取り上げる。OTCとして流通するものには,医薬品分類上,大きく漢方製剤と生薬製剤(その他,一部瀉下薬等に含まれるものもある)がある。漢方製剤とは漢方における伝統的な煎剤・丸薬・散剤などの処方のなかで,一般用漢方処方として承認されている294処方に含まれるものを製剤化したものである。一方の生薬製剤は,漢方医学の考えによらず,生薬単味あるいは複数生薬を配合して製剤化したものである。薬局では漢方製剤以外に294処方に含まれない漢方処方や中医学処方を製剤化したものも販売されており,これらは顆粒だけでなくエキス抽出したペースト状の膏剤や煉蜜などで練り上げた丸剤などさまざまな剤型のものがあり,一般に生薬製剤に分類されているものが多い。一般用漢方製剤には温胆湯・黄耆桂枝五物湯・黄連阿膠湯など医療用製剤にない処方が多くあり,さらに薬局では中医学処方を中心に動物生薬を含む製剤も取り扱われている。鹿茸・蛤蚧・冬虫夏草などを含む処方で,植物生薬だけでは足りない部分を補えるユニークな製剤があり,選択肢の幅は広い。
本特集では,「漢方薬局では漢方・生薬製剤はどのように活かされているのか」をテーマにした座談会(猪越英明先生・毛塚重行先生・今井太郎先生)を中心に構成した。総論として漢方薬局にはどのような役割が期待されているのか,という点にスポットを当て,さらに薬局での運用経験・お考えなどについてお話しいただき,各論では領域が多岐に及ぶため,今回は婦人病と皮膚病に絞って取り上げた。
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中医学の智恵を高齢者の健康増進に活かす 【特集】老年症候群の中医治療
日本では2025年には75歳以上の後期高齢者が2千万人を超えるといわれている。2015年の日本人の平均寿命は83.7歳で世界首位を維持しているが,健康寿命は男性で約9年,女性で約13年平均寿命より短いとされており,この要介護状態でいる期間をいかに減らすかが喫急の課題であるとされる。
老年症候群(geriatric syndrome)とは,「高齢者に多くみられ,医療だけでなく介護,看護が必要な,症状や徴候の総称」と定義される。教科書では,少なくとも50以上の老年症候群があげられており,大きく①廃用症候群関連(ADLの低下・骨粗鬆症・椎体骨折など),②慢性疾患関連(認知症・脱水・麻痺など),③急性疾患関連(めまい・息切れ・腹部腫瘤など)の3つに分類される。
こうした疾患の背景は複雑かく多岐にわたるが,近年,日本老年医学会が従来の「虚弱」に代わって表すことを提唱しているフレイルの概念が重要である。フレイルとは,加齢に伴うさまざまな機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態とされている。中国の中医学では,臓腑・気血・陰陽の虚衰がフレイルの原因だとされているが,とりわけ先天の本である腎と,後天の本である脾の虧虚がポイントであると考えている。フレイルの弁証論治はいまだ定まっていないが,フレイルは「しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている」とされており,介入可能な病態であることから,中医学の智恵が高齢者の健康増進に役立つことが期待される。
本特集では,認知症のBPSDに対する抑肝散の有効性をみた研究で知られ,中医学の造詣が深く,高齢者に対する漢方治療経験が豊富な岩崎鋼先生に「高齢者医療における漢方・中医学の役割」をテーマにお話をうかがったインタビュー記事を冒頭に掲げ,さらに「中医学ではフレイルをどうみるか」について中国の雑誌文献を翻訳掲載した。また老年症候群の具体的な治療例として,慢性めまい症について入江祥史先生に,尿失禁と頻尿について田中耕一郎先生にそれぞれ寄稿していただいた。最後に中国の国医大師・張琪教授の認知症治療の経験について翻訳掲載した。 |
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魅力溢れる地域流派の世界 【特集】新安医学――中医学の源流
中国安徽省は「北華佗,南新安」と称賛され,数多くの名医を輩出した地域として知られる。華佗は言うまでもなく後漢代末に活躍した伝説的な名医で,彼は安徽省北端の亳州市の出身である。一方の新安(徽州ともいう)は安徽省の南端に位置し,江西省や浙江省と隣接する地域の古称で,現在の徽州歙県・休寧・績渓・黟県・祁門,および江西省の婺源に当たる。新安では南宋代から明清代にかけて800人を超す医家を輩出し,800冊を超す医学・薬学書を残している。「天下の名医は新安より出ず」といわれるゆえんである。
新安を名医輩出の揺籃たらしめたのは,宋代に起こった靖康の変によって中原から大量の住民が南へと移動した際に,新安が官吏の一家や名家の一族,文化人などの格好の避難場所になったことと関係する。それによってこの地域は儒者の密集地帯となり,徽州文化や新安医学を開花させることになる。
この儒者の密集地帯はやがて「程朱理学の故郷」とまで称されるようになる。そして「良相にならざれば,良医となれ」という言葉の通り,多くの知識人が官吏の道から医師へと路線を変更していく。
新安医学が隆盛を極めるのは明清代である。たとえば汪機の「営衛一気説」,孫一奎の「動気命門説」,呉澄の「外損致虚説」,程国彭の「医門八法説」,鄭梅澗父子の「養陰清肺説」,余国珮の「燥湿為綱説」など,新安医家の独創した学術思想や,汪機の「新感温病説」,方有執の「錯簡重訂説」,程国彭の「八字弁証説」,汪昂の「暑必兼湿説」など,過去の医説を新安医家が継承発展させた学術思想は数多い。
本特集では,新安医学研究の第一人者であり,自身も新安王氏医学の6代目継承者である王鍵教授(安徽中医薬大学学長)を訪問して話をうかがったインタビューのほか,新安医学の医家や学説,名方について紹介する。さらに徽州文化のバックボーンとなった徽州理学が新安医家に与えた影響についても紹介する。 |
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特集/「火」の認識とその治療
中国伝統医学における身体観・病態認識の最大のヤマ場,それは「火」である。火(熱)は生命の根源であるとともに,広範囲の病理にかかわっているからである。
一般に火は熱の極まったものと規定されるが,ここでは火と熱は同質のものとして取り扱う。中医学では,火は五行の1つで,陽性・熱性の物や亢進の状態を指す。火には生理的な火と病理的な火があるが,生理的な火には少火・君火・相火・命門の火などがあり,病理的な火には六淫の1つである火邪や機能亢進によって現れる陰火・陽火・虚火・実火・臓腑の火・五志の火・六淫の化火などがあるとされる。
歴史を振り返ると,火に関する論述は,『内経』の①生理・病理の面から提起された少火と壮火の概念,②機能面から提起された君火と相火の概念に始まり,宋金元代に多くの医家によって重大な発展をみた。先駈けとなったのが『内経』理論と五運六気学説とを結びつけ「火熱論」を提唱した金元4大家の劉完素である。また李東垣は陰火の概念と甘温除熱法を,朱丹渓は相火学説を提起して,その後の「火」の認識と治療の基礎を固めた。そしてそれ以降,「火」は医学の中心命題となり続けた。
本特集では,小金井信宏先生には,火の認識と治療理論と題しておもに表熱証と裏熱実証を中心に解説していただいた。火に関する概念は膨大で紙幅の都合で一部を紹介していただくにとどまったが,表証の火熱証について興味深い論考をいただいた。加島雅之先生には火証に用いる方剤と運用について,歴史的背景を交えて解説していただいた。篠原明徳先生は長年にわたって陰火を研究されており,陰火の症例を報告していただいた。別府正志先生には婦人科の更年期障害に現れたさまざまな火証の症例を報告していただいた。伊賀文彦先生は成都の中医に師事した経験からしばしば火神派流の治療スタイルをとられており,今回は酒皶に対する治療報告をしていただいた。最後に,中国の経験として,3人の名老中医の内傷発熱治療について中国の書籍や雑誌から抜粋して翻訳掲載した。 |
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特集/慢性腎炎の中医治療
慢性腎炎(Chronic Kidney Disease:CKD)は,今や日本において国民病といえる疾患であるが,中国においても国民の健康を脅かす重要な疾患として認識されている。最近の統計によると,中国のCKD患者は1億人を超えるともいわれ,患者の生活の質(QOL)や莫大な医療費の問題を抱え,危急の課題となっている。
近年の中国では,腎疾患分野において中西医結合による目覚ましい成果があがっている。そこで今回は,CKDの原因の代表疾患の1つである慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)の中医治療に的を絞って特集を組んだ。慢性腎炎は,おもに蛋白尿・血尿・浮腫・高血圧などの症状を特徴とし,中医では「水腫」「虚労」「腰痛」「尿血」などの範疇に含まれるとされる。病因には,先天不足・房労過度・飲食不節・情志失調といった内因と,風邪外襲・湿毒浸淫・湿邪侵襲・薬毒傷腎といった外因があるが,いずれにしても腎虚が主体であり,さらにその影響が脾・肺に及ぶ。また,慢性腎炎は外感・水湿・湿熱・瘀血も伴う。したがって,治療では補腎をベースに関連臓腑を補虚したり,適宜,利水消腫・清利湿熱・活血化瘀・健脾化湿することになる。
本特集では,南京の江蘇省中医院腎内科の経験を中心に,慢性腎炎の考え方と治療について紹介する。まず現在の同科主任医師である孫偉教授から,孫教授が提唱している慢性腎炎の治療方法である「益腎清利活血法」の考え方についてお話をうかがったので,そのインタビュー記事を掲載した。本法は,気陰を補益し,湿熱を清化し,瘀血を和絡化瘀する方法である。臨床ではこの方法にもとづく基本方をベースにして患者の病態に応じて加減して対応している。
また同院腎内科は1954年に開設された,中国で最も早期にできた中医腎病科であるが,その開設者が鄒雲翔氏であり,鄒氏は現代の中医腎臓病学の開拓者に位置付けられている。そこで鄒氏の人物像ならびに腎炎治療について紹介する。さらに,孫偉教授らが主編した『慢性腎病 中医特色療法』(人民軍医出版社)より,慢性腎炎に対する7人の名老中医の認識と治療方法を抜粋して翻訳掲載した。 |
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特集/温病学を慢性病に活かす
温病学は中医学の基礎理論を構成する重要な分野の1つであり,『温病条弁』は中医学の4大経典の1つとされる。温病学は主に外感熱病を治療する方法として発展してきた。実際,SARSや新型インフルエンザに対する治療は,温病方が応用されており,温病学が外感熱病に対する重要な治療法であることに変わりはない。しかし近年,中国では公衆衛生環境の改善とともに伝染病の発生は減少し,たとえ発生したとしても伝染病を専門に診る西洋医学の病院でフォローする体制になっているため,肺感染の一部を除いて中医学が活かされる場面は減少しているという。それでは,現代において温病学の必要性は低下したのであろうか。じつは元々急性感染症の治療書であった『傷寒論』が,時代の変遷とともに広く慢性疾患に活用されるようになったのと同じ現象が,温病学でも起こっている。現代の臨床では,非感染性の炎症性疾患や,湿のからんだ疾患を中心に温病学が活かされており,心臓・腎臓・脳などの疾患や皮膚科・婦人科疾患の多くで応用されている。
本特集では,統一教材『温病学』を主編した南京中医薬大学の楊進教授に,中国における温病学の動向(臨床・研究・教育面)について話をうかがったので,そのインタビュー記事を掲載する。その他に,慢性病に応用する温病の治法と方剤,温病の治法を応用したアレルギー性紫斑病の治療経験,営分証の治療法である透熱転気法の雑病への応用,温病方の方証などについても紹介する。
なお,本特集は日本の医師による温病学の応用経験を紹介した既刊の本誌通巻136号特集「日本で活かす温病学」と合わせてお読みいただきたい。 |
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特集/病機弁証――病機を重視した新しい弁証の試み
弁証論治において病機の把握はきわめて重要な要素である。近年,中医学の教材では各疾患をいくつかの弁証タイプに分類して記載しているが(分証分型),ともすれば弁証論治が患者をいずれかのタイプにあてはめる作業になりがちである。こうしたパターン化・硬直化した弁証に対して,近年,警鐘を鳴らす動きがでてきた。南京中医薬大学・周仲瑛教授が提唱する病機を核心とした「病機弁証」である。
「弁証のカギが病機を把握することにある」という観点自体は特に新しいものではない。最近になって,周教授が改めて病機を強調したのは,「近年の大学教育では,学生の中医臨床技能の低下,弁証論治の思考能力の弱体化,機械化・硬直化した弁証分型の援用が指摘されており,複雑で変化の多い臨床の実際に適応することが難しく,予期した治療効果を得られなくなっている」ことが背景にあるという。そして,学生らが固定化した弁証分型の殻を打ち破って,実際の臨床において動態的に対応できる能力を養うために提唱されたのが病機弁証なのである。
本特集では,まず病機弁証を提唱した周仲瑛教授と,その弟子である周学平教授を南京に訪ねて行ったインタビュー記事を掲載した。病機弁証を提唱した背景や意義,具体的な方法,今後の展望などについて話をうかがった。その他に,周仲瑛教授らの著書や論文を参考に基本知識を編集部で整理。さらに周仲瑛教授の提起した重要な学説である「瘀熱病機」について,その概念と外感・内傷それぞれに対する治療方法を紹介した。また,難治疾患の1つである風湿病に対する病機弁証についても紹介した。 |
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特集/難病治療のもう一つのカギ「瘀血」とその治療
瘀血の概念は『黄帝内経』が嚆矢となり,『傷寒・金匱』が基礎を築き,歴代医家によって少しずつ掘り下げられてきたが,その概念が整理され,盛んに研究されるようになるのは清代になってからである。その代表は王清任(『医林改錯』)と唐容川(『血証論』)である。
瘀血は体内の血液が瘀滞し,流れないものをいい,経脈外に溢れて体内に溜まったり,血がスムーズにめぐらず経脈内でふさがったり,臓腑組織内に溜まったりした血液を指す。瘀血はおもに血のめぐりの不良によって発生するが,気虚・気滞・血寒・血熱・痰濁・外傷などはすべて血のめぐりを阻害する原因となる。また瘀血は病理産物であるとともに,新たな血瘀を生む発病因子にもなるため,複雑かつ多方面に影響が及び,多くの難病を引き起こす。そのため中医学では「久病は絡に入る」「久病に瘀多し」「頑疾に瘀血多し」「瘀は百病を生む」といわれる。
今号では,本誌の「中医診察ナビゲーション」で連載中の山東中医薬大学の丁元慶教授に,瘀血の概念とその治療についてコンパクトに概説していただいた。また瘀血証の難治性疾患治療では周仲瑛・顔徳馨という2人の国医大師の経験を中国の文献から紹介した。また日本からは玉嶋貞宏先生と吉澤和希先生にそれぞれ瘀血の絡んだ疾患の症例を報告していただいた。病因別特集の第3弾! |
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特集/難病治療のカギ「痰」とその治療
痰によって引き起こされる疾患は多種多様で,しかも複雑なものが多いことから,「百病の多くは痰によりて祟と作す」「怪病(原因のよくわからない病気)に痰多し」といわれる。とりわけ無形の痰は,複雑な疾患を広範に引き起こすことから,「変幻百端なり」と表現される。
痰は,主に治節を主る肺,運化を主る脾,開闔を主って腎陰・腎陽を有する腎の機能が失調すると形成される。その他に肝気鬱結によって生じた火が津液を煮詰めて痰を形成するケースがあるほか,形成された痰は気の動きとともに移動するため,肺・胃・心竅・肝・腎・経絡などに達して各部位に応じた証に変化する。そのため単に去痰薬を使えばよいというわけにはいかない。病機を把握して証候を弁別することが大切である。
今号では,本誌の「中医診察ナビゲーション」で連載中の山東中医薬大学の丁元慶教授に,痰の概念とその治療についてコンパクトに概説していただいた。
痰証の治療では周仲瑛・朱良春という2人の国医大師の経験を,また高齢者は痰証を生じやすいため老年疾患に対する治療経験を中国の文献からそれぞれ紹介した。特に2人の国医大師からは単純な化痰法ではない「痰を見ても痰を治さず」の方法が示され弁証論治の妙味をあじわえる。また日本からは「怪病有痰」の治療経験を田中耕一郎先生に,漢方エキス製剤を用いた小児の痰証治療経験を渡邊善一郎先生にそれぞれ報告していただいた。病因別特集の第2弾! |
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特集/百病の長「風」とその治療
「おもうに六気の中で,ただ風のみが五気すべてを従えることができる。もし寒を伴えば風寒といい,暑を伴えば暑風といい,湿を伴えば風湿といい,燥を伴えば風燥といい,火を伴えば風火という。おもうに風はこれら五気を奮い立て人を傷つけることができるため,百病の長といわれるのである。こういう理由から,病気の原因は風によって起こるものが多い」
清代の葉天士が『臨床指南医案』の中でこう述べるように,「風」は数ある致病因子の中でも筆頭に取り上げるべき重要な病因である。特に風証は風と結びついた邪の性質によって性質は異なるため,たんに祛風薬を使えばよいというわけにはいかない。
今号では,本誌の「中医診察ナビゲーション」で連載中の山東中医薬大学の丁元慶教授に,風の概念とその治療について簡単に解説していただき,張安玲教授には『黄帝内経』における風について概説していただいた。古代人の素朴な観察から生まれた風の概念は今なお中医基礎理論のなかで重要な役割を担っているのがわかる。風証の治療では上海と安徽の2人の老中医の経験を中国の文献から抜粋して紹介し,さらに日本の臨床経験を滝沢健司先生と緑川沢樹先生に報告していただいた。病因別特集の第一弾! |
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