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薬膳と食生活国際学術シンポジウム

高度経済成長の後遺症というべき飽食の時代,人々の健康意識が日々向上し,毎日のように新しい健康情報が流され,そのたびに国民は右往左往している。最近頻繁に耳にするメタボリック・シンドロームはまさしく飽食の代償であり,食生活の見直しが急務になっており薬膳に対する期待も大きくなっている。そのようななか,本草薬膳学院・日本国際薬膳師会はこの数年間,中国の多くの中医薬大学と学術交流を行ってきたが,昨年,中国・韓国から日本での国際学術シンポジウム開催の要請を受け,中医学・中薬学・薬膳学・営養学等,予防医学に関心をもつ人々による意見・情報交換による学術の進歩を願って,学院創立5周年・創会2周年の記念にあたる今年,2006年10月29日(日)東京都千代田区学士会館において,「東京2006 21世紀人類健康 薬膳と食生活国際学術シンポジウム」を開催した。

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 上記のほか,中国国家中医薬管理局台港澳交流センター・中国南京自然医学会・中国薬膳研究会が主催し,日本・北京・南京・台湾から230名余りの参加者を迎え行われた。また,今回作成された論文集は,国内外からの著名な先生方の研究発表のほかに真剣に中医学を学んでいる本草薬膳学院関係者のものも含めて,海外17編,国内44編の論文が掲載された,たいへん充実したものとなっている。

 大会主席の国家中医薬管理局医政司司長・許志仁氏より「国際間の協力の強化と薬膳事業の発展,人類の健康レベル向上のため共に努力していこう」とご祝辞をいただき,日本との国際学術交流へ大きな期待の追い風を受け,シンポジウムは幕を開けた。大会主席の国家中医薬管理局台港澳交流合作センター主任の王承徳氏が急遽来日できなくなったため,順天堂大学医学部助手の陶恵寧氏により主題講演の「薬膳は弁証施膳に使用すべし」が代読された。

 手軽にできる健康法として,健康食品やサプリメントを安易に使用する人々が増え,それに伴いトラブルの報告も増加している。健康食品の分野で杜仲茶健康法・コラーゲン博士として活躍されている元日本大学教授で薬学博士の高橋周七氏による基調講演「コラーゲン・杜仲葉・高麗人参の薬膳効果とそのメカニズム」では,老化の目安の1つとされる体内のコラーゲンが,毛細血管より細胞に酸素と栄養を運ぶ最終の経路であり,老化およびストレス・宇宙衛星での無重力状態で減少し,力の刺激により増加することをいくつかの動物実験の報告を合わせながら解説された。「元来漢方薬で樹皮のみを使用している杜仲だが,杜仲葉にも同様の効果があり,特に杜仲葉の『堅筋骨』の薬効は,力の刺激と同様と考えられること,朝鮮人参の安精神(精神神経を安らかにする)・開心(心がおおらかにする)の薬効は抗ストレス作用として働くこと,そしてそれぞれを単独で使うより複数で使うことでコラーゲン増加効果が上がることを実証できた」という。また「朝鮮人参は体質により高血圧・浮腫等の副作用が出ることがあるが,杜仲には血圧安定作用もあるため,一緒に摂ることで体質を気にせず使用できる」と述べられた。

 日常に当然のごとく薬膳が存在している中・韓に比べ,日本では体質を無視し目先の健康情報に飛びつく社会現象がある一方,薬事法・食薬の安全および使用基準など,実情は厳しい。漢方薬の第一人者である大阪大谷大学薬学部教授の谿忠人氏は基調講演「食材と薬膳の漢方薬学的研究に期待する」のなかで「食材の機能と食べる人の個性との相性を長い経験から考慮した料理が薬膳であり,食材の効果は予防効果を担うことで,微妙な作用をうまく拾い上げることが必要である」と薬膳の真髄を述べられた。「食材の特定成分の効果だけをみるのではなく,複数の成分が相互に関係し合った全体が経口的に摂取された後,樹皮細胞や上皮細胞での腸内環境や反応に対する影響や腸管粘膜に吸収されてから体内に与える影響まで考慮し,安全性を確認し予防効果の評価を積み上げていくことが重要であり,それが個性にもとづいた食品の開発にも通じる。食材の『気味や帰経』と体調診断(証診断)と対比させる『弁証施膳』の理念の有効性をいかに評価していくかが,中国伝統医学と西洋科学医療に『橋をかける』研究の進展へつながる」と今後の課題としてあげられた。

 日本大学医学部脳神経外科教授で医学博士の酒谷薫氏による「中国伝統医学における脳とこころと身体」では,脳神経外科の医師という見地からとらえた中医学の基本的な考え方の先進性や脳科学との関連性についての解説があった。「陰陽五行学説は現代物理学のカオス理論にもとづいた生体モデルに通じるものがあり,心身一如の考え方はストレスに対する脳活動や自律神経系の関連性を考えていくうえで西洋医学的にも大きなヒントになる」という。

 地域医療の現場からは,『中医臨床』誌の「私の診察日記」でおなじみの風間医院院長の風間洋一氏により,「健康に生きる」ことについて「長寿であるとか病気に罹らないということだけではなく,どう生きるのか(方法・手段),どう生きたのか(姿勢・質)が重要で,人生を味わい,目的をまっとうしようと努力することが大切である」とお話があった。また「人間の体は,不足した栄養素の環境のなかで生きるために必死になり,生きる方法を自ら獲得する方向に向かうことができると考え,長寿の秘訣は『腹八分』の幾分不足の状態の方がよく,『薬膳』も『薬湯』も必要最小限の量と種類を用いるのがよいのでは」と提案された。

 現在わが国の病因別死亡率1位であるがんについて,大会主席の南京自然医学会会長で医学博士の馬永華氏から「飲食と癌症」,2位・3位の心臓・脳血管の疾患については大会副主席の台湾霊芝輿自然医学文摘雑誌社社長の何永慶氏から「心臓及び脳血管の疾病予防に対する霊芝と黒きくらげの効果」という内容で,それぞれの疾病に対する予防・対策の講演があった。

 超高齢化社会に向けて健康保険の利用増加による財政への圧迫が危惧され,政府の疾病予防に対する期待は大きい。「健康日本21」で個人対応の指導の必要性が求められ,介護保険法の改正により介護予防が重視される現況では,個人対応の予防および治療医学といえる弁証施膳による薬膳的思考は大きな存在になるだろう。そして現代栄養学と「ほどよい塩梅」でブレンドし,標準化していくことができれば,現在の日本のなかで薬膳が広く定着していく近道になるかもしれない。

 現在の健康ブームのなかで薬膳という言葉だけが一人歩きしがちであるが,中医学の知識にもとづく正しい薬膳が日本の食生活のなかに広く普及していくためにも,中国薬膳研究会の教育機構として中国伝統医学の普及および「食医同源」「食薬同源」の思想と現代栄養学とを結びつけ,食生活の改善,薬膳情報の発信および生涯学習,国際薬膳師(士)の人材を育てるための基地としての当学院,国際薬膳師会の役割は大きいと思われる。

大会主席の国家中医薬管理局医政司司長・許志仁氏より「国際間の協力の強化と薬膳事業の発展,人類の健康レベル向上のため共に努力していこう」とご祝辞をいただき,日本との国際学術交流へ大きな期待の追い風を受け,シンポジウムは幕を開けた。大会主席の国家中医薬管理局台港澳交流合作センター主任の王承徳氏が急遽来日できなくなったため,順天堂大学医学部助手の陶恵寧氏により主題講演の「薬膳は弁証施膳に使用すべし」が代読された。

 手軽にできる健康法として,健康食品やサプリメントを安易に使用する人々が増え,それに伴いトラブルの報告も増加している。健康食品の分野で杜仲茶健康法・コラーゲン博士として活躍されている元日本大学教授で薬学博士の高橋周七氏による基調講演「コラーゲン・杜仲葉・高麗人参の薬膳効果とそのメカニズム」では,老化の目安の1つとされる体内のコラーゲンが,毛細血管より細胞に酸素と栄養を運ぶ最終の経路であり,老化およびストレス・宇宙衛星での無重力状態で減少し,力の刺激により増加することをいくつかの動物実験の報告を合わせながら解説された。「元来漢方薬で樹皮のみを使用している杜仲だが,杜仲葉にも同様の効果があり,特に杜仲葉の『堅筋骨』の薬効は,力の刺激と同様と考えられること,朝鮮人参の安精神(精神神経を安らかにする)・開心(心がおおらかにする)の薬効は抗ストレス作用として働くこと,そしてそれぞれを単独で使うより複数で使うことでコラーゲン増加効果が上がることを実証できた」という。また「朝鮮人参は体質により高血圧・浮腫等の副作用が出ることがあるが,杜仲には血圧安定作用もあるため,一緒に摂ることで体質を気にせず使用できる」と述べられた。

 日常に当然のごとく薬膳が存在している中・韓に比べ,日本では体質を無視し目先の健康情報に飛びつく社会現象がある一方,薬事法・食薬の安全および使用基準など,実情は厳しい。漢方薬の第一人者である大阪大谷大学薬学部教授の谿忠人氏は基調講演「食材と薬膳の漢方薬学的研究に期待する」のなかで「食材の機能と食べる人の個性との相性を長い経験から考慮した料理が薬膳であり,食材の効果は予防効果を担うことで,微妙な作用をうまく拾い上げることが必要である」と薬膳の真髄を述べられた。「食材の特定成分の効果だけをみるのではなく,複数の成分が相互に関係し合った全体が経口的に摂取された後,樹皮細胞や上皮細胞での腸内環境や反応に対する影響や腸管粘膜に吸収されてから体内に与える影響まで考慮し,安全性を確認し予防効果の評価を積み上げていくことが重要であり,それが個性にもとづいた食品の開発にも通じる。食材の『気味や帰経』と体調診断(証診断)と対比させる『弁証施膳』の理念の有効性をいかに評価していくかが,中国伝統医学と西洋科学医療に『橋をかける』研究の進展へつながる」と今後の課題としてあげられた。

 日本大学医学部脳神経外科教授で医学博士の酒谷薫氏による「中国伝統医学における脳とこころと身体」では,脳神経外科の医師という見地からとらえた中医学の基本的な考え方の先進性や脳科学との関連性についての解説があった。「陰陽五行学説は現代物理学のカオス理論にもとづいた生体モデルに通じるものがあり,心身一如の考え方はストレスに対する脳活動や自律神経系の関連性を考えていくうえで西洋医学的にも大きなヒントになる」という。

 地域医療の現場からは,『中医臨床』誌の「私の診察日記」でおなじみの風間医院院長の風間洋一氏により,「健康に生きる」ことについて「長寿であるとか病気に罹らないということだけではなく,どう生きるのか(方法・手段),どう生きたのか(姿勢・質)が重要で,人生を味わい,目的をまっとうしようと努力することが大切である」とお話があった。また「人間の体は,不足した栄養素の環境のなかで生きるために必死になり,生きる方法を自ら獲得する方向に向かうことができると考え,長寿の秘訣は『腹八分』の幾分不足の状態の方がよく,『薬膳』も『薬湯』も必要最小限の量と種類を用いるのがよいのでは」と提案された。

 現在わが国の病因別死亡率1位であるがんについて,大会主席の南京自然医学会会長で医学博士の馬永華氏から「飲食と癌症」,2位・3位の心臓・脳血管の疾患については大会副主席の台湾霊芝輿自然医学文摘雑誌社社長の何永慶氏から「心臓及び脳血管の疾病予防に対する霊芝と黒きくらげの効果」という内容で,それぞれの疾病に対する予防・対策の講演があった。



 超高齢化社会に向けて健康保険の利用増加による財政への圧迫が危惧され,政府の疾病予防に対する期待は大きい。「健康日本21」で個人対応の指導の必要性が求められ,介護保険法の改正により介護予防が重視される現況では,個人対応の予防および治療医学といえる弁証施膳による薬膳的思考は大きな存在になるだろう。そして現代栄養学と「ほどよい塩梅」でブレンドし,標準化していくことができれば,現在の日本のなかで薬膳が広く定着していく近道になるかもしれない。

 現在の健康ブームのなかで薬膳という言葉だけが一人歩きしがちであるが,中医学の知識にもとづく正しい薬膳が日本の食生活のなかに広く普及していくためにも,中国薬膳研究会の教育機構として中国伝統医学の普及および「食医同源」「食薬同源」の思想と現代栄養学とを結びつけ,食生活の改善,薬膳情報の発信および生涯学習,国際薬膳師(士)の人材を育てるための基地としての当学院,国際薬膳師会の役割は大きいと思われる。

本草薬膳学院・管理栄養士・国際薬膳師・国際中医師  星 奈おみ





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