上海の名中医たちが若手医師らの手を引く
中国中医薬報の記事の中に,今度研修に行く上海中医薬大学付属曙光医院で,伝統への回帰を目指して,若手医師らに対して老中医たちが古典を中心とした伝統的中医学を直接伝授するという新たな動きが起こっているとのニュースがありました。
11月の研修で指導していただく予定になっている先生の中にも,この研修班で研鑽されている先生がいらっしゃるかもしれません。
すさまじい勢いで現代化が進む現在の中医界,力のある老中医が本当に少なく,かつ高齢になっている中で,やはり古典や伝統を重視しなければ中医学が存続しえないという事に気づき,大きな危機感が生まれているようです。
記事の翻訳文を,以下に掲載します。
古典を精読して理論面を強化――上海の名中医が若者の手を引く
上海中医薬大学付属曙光医院が9月26日に発表した情報によると、伝統的な中医の人材を育成するため、同医院は中医古典研修班を発足させた。最初の24名の学生がそれぞれ有名な師匠のもとに弟子入りするとともに、『黄帝内経』などの四大経典の精読に取り組み、伝統的な中医理論の素養の強化を目指す。中医を「原汁原味(元の風味そのまま)」に回帰させるため、いま上海市内のいくつかの大きな中医医院で「名中医が若者(年が若くてキャリアが少ない人たち)の手を引く」という一種の新しい動きが起こってきている。
徒弟制度は中医伝承のもっとも伝統的な方式であった。しかしながら、近年の中医教育の中で師匠につくという形式が減り、一部の若者たちは中医研鑽に対してあまり興味をもたなくなっている。今回、曙光医院が中医古典研修クラスを成立させたのは,そういった若い医師たちに「一対一」で師匠につくための機会を提供するためである。24名の学生の学習カリキュラムは大変特別なものになっている。それぞれの学生は『黄帝内経』『傷寒論』『金匱要略』「温病学」などの四大著作以外にも、さらに自分の専門に関連する1、2冊、多いところでは3〜4冊の古典医学書を精読する。
ここで24名の学歴レベルを見てみると驚きを禁じえない。75%の学生が修士以上で、その中でも主任・副主任クラスの中〜青年医師らが中核となっている。聞くところによると、医科大学の本科教育の中でも四大経典は重要な科目のひとつになっているというが,その一方でこのようにすでに豊富な臨床経験をもつ医者が再び古典を読むことに意義はあるのだろうか? 学生の1人である張婷婷主任医師は,「長い間臨床を続けていると、古い文献に対する記憶が曖昧になっている部分もある。古典を復習することで臨床上の難題を解決したいと強く思う」と説明する。張婷婷が弟子入りした師匠である、名中医・王慶其教授はこう語る。「本科教育の中での古典の精読は、ただ概念上だけに限られている。しかし臨床経験のある学生はまさしく温故知新で、古典の中からまったく新しい理解を得ることができ、古典のもつ力を現代医学の中で発揮させることができる」
中医の古典を伝承し、中医文化を回帰させることは目下の上海中医界での大きな課題のひとつとなっている。上海中医薬大学付属竜華医院の顔徳馨、裘沛然らを含む8名の「重量級」の中医専門家たちが,院外名誉教授として招聘されている。名誉教授は毎月青年医師とグループミーティングを開いており,また病棟回診や「抄方(処方を写し取る)」による指導を行う以外にも、自身で描いた書画を鑑賞させにたびたび学生たちを連れて行くなどして、中医文化に対する愛着をもてなくなっている青年たちの素養を養っている。それと同時に、いくつかの大きな中医医院内では有名老中医研究室・伝統中医診療センターなどが開設され、老中医たちにより多くの能力を発揮してもらう場を与えるとともに、上海派中医に「一脈相承( 同じ流れを受け継ぐ)」させることを目指している。
(2007.9.28 中国中医薬報)
11月の研修で指導していただく予定になっている先生の中にも,この研修班で研鑽されている先生がいらっしゃるかもしれません。
すさまじい勢いで現代化が進む現在の中医界,力のある老中医が本当に少なく,かつ高齢になっている中で,やはり古典や伝統を重視しなければ中医学が存続しえないという事に気づき,大きな危機感が生まれているようです。
記事の翻訳文を,以下に掲載します。
古典を精読して理論面を強化――上海の名中医が若者の手を引く
上海中医薬大学付属曙光医院が9月26日に発表した情報によると、伝統的な中医の人材を育成するため、同医院は中医古典研修班を発足させた。最初の24名の学生がそれぞれ有名な師匠のもとに弟子入りするとともに、『黄帝内経』などの四大経典の精読に取り組み、伝統的な中医理論の素養の強化を目指す。中医を「原汁原味(元の風味そのまま)」に回帰させるため、いま上海市内のいくつかの大きな中医医院で「名中医が若者(年が若くてキャリアが少ない人たち)の手を引く」という一種の新しい動きが起こってきている。
徒弟制度は中医伝承のもっとも伝統的な方式であった。しかしながら、近年の中医教育の中で師匠につくという形式が減り、一部の若者たちは中医研鑽に対してあまり興味をもたなくなっている。今回、曙光医院が中医古典研修クラスを成立させたのは,そういった若い医師たちに「一対一」で師匠につくための機会を提供するためである。24名の学生の学習カリキュラムは大変特別なものになっている。それぞれの学生は『黄帝内経』『傷寒論』『金匱要略』「温病学」などの四大著作以外にも、さらに自分の専門に関連する1、2冊、多いところでは3〜4冊の古典医学書を精読する。
ここで24名の学歴レベルを見てみると驚きを禁じえない。75%の学生が修士以上で、その中でも主任・副主任クラスの中〜青年医師らが中核となっている。聞くところによると、医科大学の本科教育の中でも四大経典は重要な科目のひとつになっているというが,その一方でこのようにすでに豊富な臨床経験をもつ医者が再び古典を読むことに意義はあるのだろうか? 学生の1人である張婷婷主任医師は,「長い間臨床を続けていると、古い文献に対する記憶が曖昧になっている部分もある。古典を復習することで臨床上の難題を解決したいと強く思う」と説明する。張婷婷が弟子入りした師匠である、名中医・王慶其教授はこう語る。「本科教育の中での古典の精読は、ただ概念上だけに限られている。しかし臨床経験のある学生はまさしく温故知新で、古典の中からまったく新しい理解を得ることができ、古典のもつ力を現代医学の中で発揮させることができる」
中医の古典を伝承し、中医文化を回帰させることは目下の上海中医界での大きな課題のひとつとなっている。上海中医薬大学付属竜華医院の顔徳馨、裘沛然らを含む8名の「重量級」の中医専門家たちが,院外名誉教授として招聘されている。名誉教授は毎月青年医師とグループミーティングを開いており,また病棟回診や「抄方(処方を写し取る)」による指導を行う以外にも、自身で描いた書画を鑑賞させにたびたび学生たちを連れて行くなどして、中医文化に対する愛着をもてなくなっている青年たちの素養を養っている。それと同時に、いくつかの大きな中医医院内では有名老中医研究室・伝統中医診療センターなどが開設され、老中医たちにより多くの能力を発揮してもらう場を与えるとともに、上海派中医に「一脈相承( 同じ流れを受け継ぐ)」させることを目指している。
(2007.9.28 中国中医薬報)