« 2005年12月 | メイン | 2006年02月 »

2006年01月 アーカイブ

2006年01月04日

乾燥総合症の治療について ―劉永年先生の治療法

あけましておめでとうございます。
貴重なお正月休みにも関わらず,どうしてもぼーっとできずに中医学の勉強をされてしまった先生も多いでしょうか!?
2006年もみなさんにとって良い年になるように,お祈り申し上げます。

さて,お年玉は差し上げらないのですが,かわりに興味深い論文がありましたので,ご紹介したいと思います。

「劉永年教授による乾燥総合症の治療経験」
 江蘇中医薬2005年第26巻第11期

南京市中医院で国家級老中医・劉永年先生に3年に渡り指導を受けている駱天炯氏が,劉先生の乾燥総合症の治療経験を要約して報告していました。
先日の病院研修で劉先生の臨床を実際にそばで見せていただきましたが,劉先生の治療に対する考え方はたいへん参考になるものです。
以下に,論文のポイントを抜粋しました。

1 本病の原因は燥毒であり,津傷液燥が病理基礎にある
 劉先生は,本病でみられる燥は,通常の内燥と比較してもっと進んだ「邪毒」の性質をもつと認識している。
燥毒が生じる背景には,「先天の稟膩不足」と「後天の邪毒の侵襲」が密接に関与している。
 また本病の病理基礎としては津液不足が存在し,津液の正常な生成・分布・転化のサイクルが障害されている。
津液不足には,「陰津の欠損」と「津液の分布障害」の2つの側面がある。
前者は先天および後天による津液不足,後者は気虚と血瘀が主な原因となっている。

2 肝・腎・脾の三臓が主要な病位である
 本病では,人体のあらゆる臓腑・経絡・器官に燥の病変がみられるが,臨床経験から本病の燥証の根源は肝・腎・脾の三蔵にあるといえる。
眼は肝の竅であり,陰血が不足すると容易に化熱・化燥・燻灼上炎して眼部が乾燥する。
 また,口は脾の竅であり,口中の津液は脾の化生の働きにより作られ,腎は精を蔵し五液を主っており,先天の本である。
したがって脾腎の病変は,陰津の化源不足や精血陰津の欠損を招き,その結果燥火が上炎する。
 さらに本病の症状は,しばしば関節や筋肉・皮膚に現れるが,それらは「痺証」の範疇に含まれるものである。
ただし,本病では寒象・湿象のタイプの痺証はみられず,多くは乾燥象である。
そのほとんどは気鬱化熱・素体陽盛あるいは内蘊積熱によって陰液が傷つき,血燥生風・陰傷血滞不通となっているところに,風邪が関節・筋・骨を侵すことによって痺証を発症する。

3 滋陰潤燥が治療の原則
本病の治療の基本は,滋陰潤燥にある。
しかし,その際に注意しなければならないのは,「陰の不足を急激に補うと,効果が現れない」ということである。
猛剤・重剤で滋塡すれば,かえって膩滞を引き起こしてしまうので,忍耐強く養柔するのである。
小雨がじわじわと沁みこむように,時間をかけて滋陰してはじめて効果を得ることができる。

 基本的な方薬は,玄参・生熟地・天門冬・生山薬・楓斗・玉竹・黄精・亀板・白芍・烏梅などを用いる。
もし燥火内熱を兼ねていれば,知母・黄柏・牡丹皮を加え,微熱があれば,地骨皮・白薇・銀柴胡・青蒿などを加える。
 そのほかにも,血虚があれば生地黄・阿膠・赤白芍・当帰・丹参を用い,燥毒熾盛であれば清熱解毒の水牛角(犀角の代わり)・土茯苓・大黒豆・黄芩・連翹・貫衆などと,泄熱降火の生石膏・知母・牡丹皮・生地黄・夏枯草などを用いる。
 また気虚の場合には,党参・黄耆・太子参・白朮・葛根・薏苡仁・炙甘草・荷葉などを,虚寒がはなはだしい場合には桂枝・仙茅・巴戟天・兎絲子・仙霊脾などを,四肢厥冷の場合には桂枝・細辛・当帰・鶏血藤などを用いる。
 ただし,脾虚陽弱がみられないときは,むやみに温熱薬を与えてはいけない。
補脾しても壅滞させないように,益気しても温燥に偏ることのないように,壮陽しても温潤であるように,潤燥しても陰膩にならないように,全体を考えて弁証にもとづいた選方用薬をすることが大切である。


内容は,いかがでしたか?
「個々の患者さんの病態にあわせて,処方全体のバランスを上手にとりながら最大の治療効果を引き出す処方が出せること」
それは経験豊富な老中医だからこそなせる業であり,私たちの目指す目標ですね。

2006年01月24日

中国でも肥満と高血圧が欧米並の社会問題に

ここ数年来,中国でも国民の食事や生活様式の変化のため,高血圧や肥満症の発症率が明らかに上昇傾向にあるようです。

中国衛生省は近く,《高血圧の予防・治療に関する宣伝・教育のための知識要綱》を発布するとのこと。高血圧発症率は1991年の調査結果と比較して,2002年には31%上昇し,患者数は約7000万人超の増加。成人の高血圧の発症率は18.8%,つまり全国におよそ1億6000万人の高血圧の患者がおり,成人の5人に1人は高血圧であるとみられます。

また中国の成人のうち,太り気味の人および肥満症の人の率は,それぞれ22.8%と7.1%で,その数はそれぞれ2億人,および6000万人超。さらに,きわめて重度の肥満者は3.01%おり,その数は3900万人を上回るそうです。1992年の調査結果と比較すると,成人のうち,太りぎみの人の率は39%,肥満症の人の率は97%上昇という結果です。

「これから30年間で肥満人口は現在の4倍に達する」との見解を述べている医師もおり,中国でも肥満対策が急務となってきているようです。

中医学を活かした治療法の研究も,今後より活発に行われていくかもしれませんね。

About 2006年01月

2006年01月にブログ「中国研修旅行ブログ」に投稿されたすべてのエントリーです。新しい順に並んでいます。

前のアーカイブは2005年12月です。

次のアーカイブは2006年02月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type