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強皮症の中医学的治療について

 南京研修旅行中にお1人の先生から、強皮症の患者さんに漢方エキス剤3剤(啓脾湯・当帰芍薬散・十全大補湯)を組み合わせて処方したところ,すごく効果があったとのお話を伺いました。
その患者さんは3カ月前から漢方薬を飲み始めて以来,次のような改善がみられたそうです。
・顔色がよくなり,人からもそう指摘されるようになった
・手指の潰瘍がはじめは穴が開いていたのが,いまはほとんど痂皮に覆われてきた
・指の曲がりが少しずつ取れてきた
・背中に手がまわせるようになった
・体をかがめて爪を切ることができるようになった
・お腹の皮膚が柔らかくなり,二段腹になって横皺ができ,皮膚色が白くなってきた
・食道の蠕動運動の低下により,寝ると胃液が逆流して苦しく,毎晩タケプロンを飲まなければならなかったのが,週に1回に減った
 
 ですが,じつはこの患者さんが先日再診されたところ,皮膚の硬化が悪化してしまったそうです。
患者さんの話によると,いつも寒くなると症状が悪化するとのこと。
先生は「今後の経過をみて変方するつもりですが,重症の患者さんはやはり難しいものです」とおっしゃっていました。

 東亜医学協会の『漢方の臨床』誌第52巻第5号に,風間洋一先生が発症から3年半が経過した,皮膚および関節症状のある進行性の全身性強皮症の症例報告をされています。
先生は「補気活血・袪風湿・温陽散寒」を治法として,補中益気湯の加減方(補中益気湯−甘草+茯苓・紅花・川芎・牛膝・独活・羗活・薏苡仁・防已・秦艽・木瓜・附子)を処方されていますが,その処方は強皮症治療の基準処方として取り入れ,加減して試してみる価値のあるものかもしれません。

 風間先生は「治療は理屈じゃ説明できない世界だけど…」と前置きしながらも,「強皮症の病因としては,「風・寒・湿」の3つの邪の存在を考えたほうがいい」とおっしゃいます。
先生の用薬の原則は,次の通り。
1,補虚として:
  ①脾肺虧虚に対して,補中益気湯
  ②脾腎虧損に対して,六味丸
  ただし黄耆を加える。量も大量(10〜20g)が必要。
2,袪風湿として:独活・羗活・木瓜・秦艽・防已・薏苡仁など
3,活血化瘀として:当帰・紅花・川芎・牛膝など
4,温補・回陽・鎮痛として:附子

「補腎健脾養肺・活血散結」を原則として治療すると効果的であり,その際,特に黄耆と附子を臨機応変に量を変えて使用することが大事とのご意見でした。

 難病情報センターのHPにある強皮症の解説を参考に見てみました。
ひとことで「強皮症」といっても,軽度の限局性・非進行性のものから,重度の全身性・進行性のものまで,患者さんによってさまざまなステージがあるようです。
進行性の場合には内臓の硬化をもたらすなど,西洋医学的に強皮症の治療は難しく,ハイリスクな難治性疾患といえます。
そんななかで,中医学的治療によって,病気の進行を抑え,患者さんのQOLを上げることができるのはすごいことです。

 強皮症の患者さんの治療に取り組まれている先生方に,これからもっと治療経験交流を深めていただきたいです。
 もしこのブログを見て治療に活かせたら,コメントにぜひお書入れくださいね。

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2005年12月05日 23:40に投稿されたエントリーのページです。

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