中医学の東洋学術出版社：中国最新情報

　第１期国医大師で，南通市中医院主任医師・教授の朱良春先生が，2015年12月14日，南通中医院で逝世された。享年98。

　朱良春先生は，1917年江蘇省鎮江生まれ。1935年武進の孟河御医の家系である馬恵卿氏に師事し中医を学ぶ。1936年蘇州国医専科学校で学び，日中戦争の影響で1937年上海中国医学院に転入。章次公氏の臨床に就いて実習し，1938年卒業。1939年から南通に診療所を開設して医業を始める。1945～1948年診療以外にも南通中医専科学校を創設。1952年中西医聯合会診所を創設，所長となる。後に聯合中医院と改め院長を務める。1956年病院のすべての設備を無償で政府に寄贈し，市レベル中医院を創設，院長となる。1990年国より第1期全国継承老中医薬専家学術経験導師に認定。2009年第1期国医大師に指定された。

　朱良春先生は現代中国を代表する著名な老中医の1人で，特に内科難病の診断治療で豊富な経験をもつ。基本的に内科・婦人科・皮膚科等の疾病に対して中薬のみで治療し，風湿病・がん・脾胃病・肝疾患・腎疾患・呼吸器疾患・心脳血管疾患・不妊症・痤瘡・牛皮癬等の難病に対しても優れた治療効果をあげた。特に風湿病に関しては全国をリードしてきた。また「益腎蠲痹丸」「復肝丸」「痛風沖剤」等の中薬新薬を研究開発。主な著作に『虫類薬的応用』『章次公医案』『医学微言』『朱良春用薬経験集』『中国百年百名中医臨床家叢書・朱良春』『現代中医臨床新選』など多数ある。

　虫類薬を巧みに使う老中医としても知られ，『中医臨床』でもたびたび朱良春先生の臨床を紹介する文章を紹介してきた。