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屠呦呦教授 ノーベル生理医学賞受賞 ~中国伝統医学の快挙~

 10月5日,スウェーデンのカロリンスカ研究所は,2015年のノーベル生理学・医学賞を日本の大村智氏,米国のウィリアム・キャンベル氏,中国の屠呦呦氏に贈ると発表した。
 大村氏とキャンベル氏は寄生虫による熱帯病の,屠氏はマラリアの画期的な治療薬をそれぞれ開発した。本年の同賞は寄生虫による感染症治療の面で優れた貢献を果たした科学者に授与される形となった。また屠氏は中国籍の科学者で初めて自然科学系のノーベル賞を受賞した。


【屠呦呦(と・ゆうゆう)】
 女性,1930年12月30日生,薬学者,中国中医研究院終身研究員・首席研究員,青蒿素研究開発センター主任。1980年修士生指導教官,2001年博士生指導教官として招聘される。長期にわたり中薬と中西薬結合研究に従事し,画期的なマラリアの治療――アルテミシニン(artemisinin) とその誘導体(ジヒドロアルテミシニン)の開発で重要な貢献を果たした。2011年9月,ノーベル賞の登竜門と呼ばれるラスカー賞を獲得していた(http://www.chuui.co.jp/cnews/002164.php)。


 1969年,屠氏はマラリアの予防治療を研究するプロジェクト(523プロジェクト)チームのリーダーに任命され,中国伝統医籍と中医薬方の探索と整理の指揮を執り,2千種を超える中医薬方を収集して『抗瘧方薬集』を編纂。さらにその中から200種以上の中医薬方を選別し研究を行った。特に『肘後備急方』(巻三治寒熱諸瘧方第十六)中の瘧疾に対する青蒿の記載(「青蒿一握,以水二升浸,絞取汁,盡服之」)に着目して,通常の水煎や高温で抽出する方法では青蒿の有効成分を破壊すると考え,エーテルによる低温抽出方法を用いて抗マラリア作用がより高い青蒿の抽出物を得ることに成功した。しかしこの方法で得た抽出物には,毒性と副作用があったため今度は抗マラリア作用をもたない酸性部分を取り除き,毒性と低抗マラリア活性の作用が改善された中性部分を残した。そして1971年に行ったマラリア測定実験において,この中性の青蒿抽出物によるマラリア原虫抑制率は100%に達した。その後全国の研究チームとともに臨床研究を続け抗マラリア薬の新薬アルテミシニンを誕生させた。
(アルテミシニン研究開発の経緯についてはこちらhttp://www.chuui.co.jp/cnews/002165.phpの記事も参照)


 このたびの中国伝統医学の遺産と中西結合研究による成果は,中国伝統医学に多くの宝が秘められていることを改めて世界に知らしめることになったであろう。中国伝統医学界に勇気を与える快挙となった。(編集部)

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