中国の国家中医薬管理局と中国中医薬報社は2014年1月21日,共同で2013年の中医十大ニュースを発表した。
1.「中共中央全面的改革の進展に関する若干の重大問題決定」を発表,“中医薬事業発展政策と体制の改善が必要”
2013年11月に行われた党の第18回三中全会(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)を通過した「中共中央全面的改革の進展に関する若干の重大問題決定」では,中医薬事業の発展政策と体制改善の必要性を掲げた。このことは,中央政府が中医薬の全面的改革を進展の軌道に乗せ,中医薬改革の発展に対する明確な方向性を示したことを表している。
2.中医医療保健サービスを全面的に発展させ,国の健康サービス業発展の重要な要素とする
「国務院の健康サービス業促進に関する若干の意見」では,「中医薬医療保険サービスの全面的発展」を,八大主要任務の1つとして掲げ,中医薬健康サービス発展計画の実施を策定し,中医健康サービスの能力を向上させる。また,科学的規範に則った中医保健知識および製品をおしひろめ,優秀な中医薬機関の,海外における中医病院や付属診療所などの開設を奨励・助成し,国際的に著名な中医薬ブランドやサービス機関を養成する。
さらに甘粛省では,「中医薬産業の発展促進に関する意見」を発表し,5年間で,可能な限り完成された中医薬産業ネットワークを構築し,中医薬健康サービスを発展させるとしている。
3.中医薬の国家外交戦略における地位を向上させる
習近平主席が,8月に世界保健機関(WHO)の陳馮富珍代表と会見した際,海外における中西医結合および中医薬発展の促進を提議した。また習主席は,9月に行われた第13回上海合作組織メンバー国元首理事会会議での演説において,伝統医学は,各国が協力している新分野であり,中国は各メンバー国とともに中医医療機関を設立して,伝統医学資源を,メンバー国市民の健康サービスに十分に活用させることを望んでいる」と述べた。
また,「中華人民共和国国家中医薬管理局・キルギス共和国衛生部の中医薬分野における協力に関する了解備忘録」と,「中華人民共和国国家中医薬管理局・ウクライナ衛生部の中医薬分野における協力に関する了解備忘録」が,習近平主席が証人となって,それぞれ9月と12月に調印された。
4.成都老官山漢墓において貴重な医簡を発掘
成都市金牛区天回鎮の老官山漢墓調査隊が,前漢期の土坑木椁墓を発掘時に,920本の竹簡を発掘した。これらの竹簡は,初期段階において9部の医書であると分析されたが,『五色脈診』以外は書名がなく,暫定的に『敝昔医論』『脈死候』『六十病方』『尺簡』『病源』『経脈書』『諸病症候』『脈数』と名付けられた。この他,184本(不完全なものを含む)から成る『医馬書』や,白や赤で経絡線や経穴がはっきりと記された,完全な人体の経穴人形も発掘されている。
5.中医薬の医療改革深化への参与に新たな進展
中医薬の健康管理が初めて国家基本公衆衛生サービス項目に組み入れられ,カバー率30%という目標にしたがい,65歳以上の高齢者と月齢0~36カ月の児童に対する,中医薬健康管理サービスを行っている。
また,チベット・モンゴル・ウイグル族などの民族薬が,初めて『国家基本薬物目録』に組み入れられた。
さらに,国家発展改革委員会など5部門は,県レベルの公立病院の総合的改革試験的業務において,中医薬の特色および優位性を十分に発揮できるよう,中医医療サービス項目と価格の調整を行い,使用取り消し薬品を追加する際に,生薬と区別して対処するよう要請している。
その他,医療保健における中医薬使用の奨励などの措置を実施。
国家中医薬管理局と国家衛生・計画生育委員会も,中医薬技術を有する指導者を,農村医療・生育管理に組み入れることを決定。現在すでに,18省(区・市)において実施されている。
6.「中医薬服務百姓健康推進行動」が末端にまで浸透
「中医薬服務百姓健康推進行動」(大衆の健康維持における中医薬サービスの活用推進活動)は,中医薬業界が展開する,共産党の重要な大衆路線教育実践活動の1つ。地域医療における中医薬サービス能力向上プロジェクト・中医「治未病」健康プロジェクト・「中医・中薬を中国の農村・地域・家庭に取り入れる」プロジェクトという3項目が含まれている。各地方は,これらを主要要素とした新たなサービスモデルを構築し,中医薬総合サービス区の設立・中医予防保健サービスシステムの構築・中医薬文化の普及活動の展開などを通じ,中医薬をさらに末端まで浸透させて,大衆が恩恵をこうむるよう推進している。
7.中医薬伝承の博士研究員134人を初めて採用
全国の中医薬伝承の博士研究員134人が,12月に正式に採用された。期間は2年。今回,老中医薬専門家学術経験継承作業と,国の博士研究員制度を結合させたことにより,師伝教育の伝承および博士研究員教育のプラットホームの優位性を十分に活かした,中医薬を率先する人材養成の新たな方法となり,中医薬人材養成体制に新たな道が開けた。
8.中医薬標準体系の枠組を初期段階において構築
現時点において発表された中医薬の国家標準は27項目,業界および業界組織標準は470項目以上にのぼり,相当程度独立した中医薬標準体系の枠組が,初期段階において構築された。これにより,政府が主導し業界が参与する,責任分業制の全面的計画である中医薬標準化管理・運用体制が,初期段階において構築された。
また,世界中医薬学会連合会の李振吉副主席兼秘書長は,国家標準化管理委員会の,「2013年中国標準創新貢献賞」というすばらしい貢献賞を受賞した。
9.国家中医臨床研究基地建設に進展,中医薬科学技術が新成果を獲得
国家中医臨床研究基地建設が,中医薬発展規律の臨床科学研究の新モデルと合致し,14疾患に対する中医薬治療の多大な優位性が初期段階で検証され,基地建設機関の全体的な中医サービス能力向上を顕著に促進させた。
また,中医科学院・上海薬物研究所の果徳安教授が指導し完成させた,「中薬複雑体系の活性成分に対する系統的分析方法および品質標準における応用研究」が,国家自然科学二等賞を獲得した。さらに果教授は,2013年度の米国植物薬委員会の最高栄誉賞である,Norman Farnsworth卓越研究賞を獲得した。果教授は,アジアおよび華人で同賞を獲得した唯一の学者である。この他,雲南省薬物研究所で完成させた,「低緯度高原地区天然薬物資源野外調査および研究開発」プロジェクトが,国家科学技術進歩一等賞を獲得した。
10.中医薬がH7N9型鳥インフルエンザの対人感染対応に積極的に参与
H7N9型鳥インフルエンザの対人感染予防・治療計画において,中医薬は迅速に救命治療に参与し,時を逃さず中医診療計画を発表したり,感染状況に合わせてこれを修正したりした。専門家たちは,中医薬が参与したすべての症例を総合的に結論づけ,H7N9型鳥インフルエンザの対人感染に対する,中医薬の治療効果の適切で正確な共通認識を打ち立てた。
鳥インフルエンザの流行は,盲目的に板藍根顆粒剤を購買・服用するという現象を引き起こしたが,これは社会の中医薬に対する期待感を反映しており,中医薬知識の科学的な普及がさらに強く待たれている。
[中国中医薬報.2014.1.22]
翻訳:平出由子