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英国における中医法制化12年の歩み(4)
英国中医薬学会(ATCM)会長 沈恵軍
項目
(1) 背景
(2) 【2000~05年】初期の草薬・鍼灸の立法経過
(3) 【2005~06年】立法過程における中医の平等な地位確定
☞(4) 【2006~08年】連合立法WGおよびその報告と保健省の第2回一般諮問
(5) 【2010~12年】この1年の進展と今後の見通し
(6) 英国の中医界が直面する問題
■4■ 【2006~08年】連合立法WGおよびその報告(2006年6月~08年6月)と,保健省の第2回一般諮問(2008年8~11月)
保健省は,HPCプランを踏まえ,2006年3月28日に「鍼灸・草薬・中医従事者立法業務の通知」を公表した。同通知には,保健大臣らはすでに鍼灸・草薬・中医従事者の立法業務を進め,連合立法WG(Steering Group on the Statutory Regulation of Practitioners of Acupuncture, Herbal Medicine, Traditional Chinese Medicine and Other Traditional Medicine Systems Practiced in the UK)の設立に同意したと記されていた。連合立法WGは,12人の専門メンバーで構成されており,鍼灸(伝統鍼灸および医学鍼灸を含む),草薬(すべての伝統草薬を含む),中医薬の代表がいた。連合立法WGの主旨は,3つの業種が,HPCの法的登録に組み入れられるための様式と過程を保健大臣に提出し,これと同時に,3業種の各専門団体が基準に適合しているかを審査することであった。これにより,HPCへの推薦が容易となり,さらに基準に適合する団体は祖父条項(既得権者除外条項)の優遇措置を受けられるようになって,方式を全面的に転換した立法登録を進めることができる。連合立法WGの主席は,スコットランド・ロバートゴードン大学の校長である,Michael Pittilo教授が務めた。Pittilo教授は,もともと草薬立法準備WGの主席であり,代替医療立法およびCAM管理委員会の青写真作成に多大なる貢献をしていた。連合立法WGの下には,草薬・鍼灸・中医の3つの業種のWGが置かれた。
このWG業務の基本的構想は,2002-2003年の草薬WGの業務およびその報告を踏まえており,業務方向は保健省が定めるHPCを手本にしていた。すべての立法準備文書は,必ずHPC現有の業種標準文書を基準としており,そのなかには,業種教育標準・就業標準・行為標準・処罰標準・言語標準などが含まれている。
ここで重視すべきは,ATCMはその他の中医団体に比べ,連合立法業務において重要な貢献をしてきたという点である。これは,ATCMが常に英国専門団体の標準を踏まえ,厳格かつ民主的で正当な管理を行い,正規の管理文書を有していることによる。2006年6月22日に第一次会議を開催して以来,中医WGは,鍼灸および草薬WGに比べて非常に切迫した状況に直面していた。3年前に成立した草薬および鍼灸WGは,それぞれ1年余りの時間を費やして「医療従事準則」「教学大綱」など立法に必要な文書を取り揃えてきたが,中医WGは,3カ月以内でゼロからこれらの文書を完成させなければならなかった。それでも幸いなことに,ATCMは当初草薬WGに参与していたころ,すでに中医部分の準備を始めていた。2003年には,中医教学標準に関する討論と策定を開始しており,2004年には中医教育認証委員会を設立して,「中医教育核心課程設置」や,「中医師就業準則」「中医専門行為規範」を策定した。ATCMのこれらの文書と条例は,その後中医WGの名目で連合立法WGの手に渡された。またこれら文書と条例は,ATCMですでに何年にも渡って実施されており,ATCMの自発的自己管理(Voluntary Self Regulation)の基礎となっている。さらに現在では,中医立法に対し大きな貢献をしている。
WGは,1年余りの業務を経て,2007年9月28日に最終会議を行った。この会議では,各団体の文書資料に対し,最終的な再議を行って,「祖父条項」標準に適合する専門団体リストを決定した。ATCMは,唯一標準に適合する中国人を中心とした中医団体として認定されたが,これと同時に,会員の英語レベルが標準に達していないという問題が浮上した。2008年4月25日,Pittilo教授がATCM宛てに公式書簡を送り,2007年9月28日のWGの決定を確認し,WGはATCMを標準に適合する中医団体とみなして,中医を1つの医療システムとした立法登録に参与することをHPCに正式に推薦すると報告してきたが,これと同時に,英語の重要性も強調してきた。
中医が,1つの医療システムとして法において平等な地位を獲得した後は,同じく法においていかに中医師個人の利益を保護するかという問題が,大きく浮かび上がってきた。これについては,祖父条項における英語の基準が,どのように策定されるかが最も注目される点であった。連合立法WGは,2008年5月に正式に報告を公表したが,これに遅れること1年余りの2009年8月3日には,英国保健省が,中医師・草薬師・鍼灸師の立法管理に対する,3カ月間の第2回一般諮問を発表した(※13)。ATCMはこの諮問期間に,保健省の諮問文書を深く掘り下げて研究し,会員全体に諮問に対して積極的な回答をするよう働きかけた。さらに英国の華人社団に対しても,政府諮問に積極的に回答を提出し,中医立法を支持するように呼びかけた。またATCMはこれと同時に,再度DLA Piperに依頼し,保健省の官僚,議会議員,反対党(保守党)の影の内閣メンバー,HPCの主席執行官Seale氏などと,積極的に交流や談話の場を設けた。さらにわれわれ会員も,選挙区の議会議員と連絡を密に取り,彼らに中医の立法管理を支持してくれるよう手厚く促した。
(つづく)
[参考文献]
11)Report to Ministers from the Department of Health Steering Group on the Statutory Regulation of practitioners of acupuncture, herbal medicine, Traditional Chinese medicine and other traditional medicine systems practiced in the UK. May 2008 http://www.ehtpa.eu/pdf/steeringgroup/steering group report 16june08.pdf
12)Extending professional and occupational regulation: the report of the Working Group on Extending Professional regulation: july 2009 http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_102824
13)A joint consultation on the Report to Ministers from the DH Steering Group on the Statutory Regulation of Practitioners of Acupuncture, Herbal Medicine, Traditional Chinese Medicine and other Traditional Medicine Systems Practised in the UK. August 2009 http://www.dh.gov.uk/en/Consultations/Liveconsultations/DH 103567
出典:英国中医立法12年的歴程和結局.世界中医薬学会連合会首届中医全球化与人類健康高峰論壇 論文匯編
翻訳:平出由子
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