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中国全土の医療機関の6割近くが中医医療を提供

国家中医薬局が初の「中医基本現状調査」結果を報告
中医師40万人,中医の年間救急外来は延べ9億人

  国家中医薬管理局は9月14日,北京で記者会見を行い,2年を費やして調査・総括・分析を行った,「2009年中医基本現状調査」の結果を報告した。報告によると,中国全土の医療機関のうち,中医医療を提供できる病院は59.6%を占め,人口1万人当たりの中医師数は3.06人,中医の年間救急外来人数は延べ9億700万人に上るという。同調査は,新中国成立以来初の各クラス・各種医療機関に及ぶ全国規模の調査で,国家中医薬管理局の于文明副局長が結果報告を行った。


  同調査の内容は,中医の医療資源の状況・中医薬の提供状況・中医医療機関の運営状況・中医薬の特色や優位性がいかに発揮されているか・医療機関の中医薬従事人員の基本的状況・中医薬に対する医療機関の科学研究状況・中医薬の発展に向けた政策の実行状況などに及んでいる。
  中医の医療資源の状況は,全国73万9,600の医療機関のうち,44万700の医療機関が中医医療を提供しており,59.6%を占めている。さらにこのうち,中医の医療機関(中医・中西医結合・民族医を含む)は3万7,268軒あり,内訳は病院3,299,門診部1,228,診療所3万2,741で,中医医療を提供可能な医療機関の8.5%を占めている。また,農村の衛生院および村の衛生室は全体の82.6%,総合病院・地域衛生サービスセンターおよびサービスステーションやその他の医療機関は8.9%だった。
  一方,全国の中医薬人員は合計で51万7,400人,うち中医に従事する医師は40万8,600人で,医師総数の20.8%を占めており,人口1万人当たりの中医師数は3.06人となっている。また,各種医療機関の中医病床総数は52万600床で,総病床数の16.8%を占めており,人口1万人当たりの中医病床数は3.94床となっている。
  調査を行った各種医療機関(村の衛生室は含まない)のうち,2009年の中医救急外来の対応総件数は延べ6億7,100万人で,医療機関の救急外来全体の19.2%を占めている。また中医の外来診療のうち,62.4%は中医医療機関で行われている。このほか,村の衛生室の中医診療件数は延べ2億3,600万人となっている。また,同年の中医の総退院数は延べ1,357万人で,各種医療機関の総退院数の16.1%を占めている。さらに,中医の入院患者の89%は,中医医院が担っている。
  各種医療機関の,中薬の生薬処方は総処方件数の9.5%を,中成薬処方は17.4%を占めている。このうち,中医医療機関の中薬処方件数は,同類の医療機関の処方総件数の50%以上を占め,中医・民族医門診部の中薬処方率は80%以上となっている。院内の中薬製剤品種の数は,中医院では平均21.83種,中西医結合医院では28.9種,民族医門診部は63.06種,総合病院では35.92種,専門医院は11.04種である。針灸・推拿などの中医療法は,末端医療機関では全体的に広範囲で応用されており,地域衛生サービスセンターでは81.7%,農村の衛生院では65.6%で行われている。
  科学研究の分野では,2006~2009年の中医医院の中医薬に関する科学研究費用予算は累計で61億3,200万元(日本円で約75億円)に,総合病院および専門医院では,同じく累計で25億7,700万元(日本円で約31億円)に達している。さらに今後5年間の,各医療機関の中医薬人員に対する需要は,51万7,600人に達している。
  中医薬の行政管理および政策の実行状況は,全国の地方都市の衛生局のうち,17.8%が中医薬管理局という名称を新たに掲げているが,69.9%は中医処(科)を設けておらず,県クラスの衛生局に至っては78.4%が中医科(局)を設けていない。
中医薬関連の政策策定に関しては,地方都市の26.7%が都市農村職工医療保険の中医診療項目の補償比率を上げており,中成薬については24.5%が上げている。また,県(市・区)の44.6%が新型農村医療合作制度(新農合)の中医診療項目の補償比率を上げており,中医成薬については42.4%が上げている。さらに,地方都市の29.1%が都市住民医療保険の中医診療項目の補償比率を上げており,中成薬については23.3%が上げている。
  于文明副局長は,今回の調査により,中医薬の発展において存在する以下の困難や問題点が明らかになったと指摘している。
 ① 中医薬事業の発展レベルは,地区や省によって格差がある。
 ② 都市・農村の末端中医医療のネットワークは,まだ十分に健全であるといいきれない。
 ③ 中医医院の基本的条件と,中医独自のサービス能力には依然として格差が存在している。
 ④ 中医に対する救援措置は,地域によって大きな差があり,補償機制が構築されていなかったり改善がみられないケースが多く,中医の特色や優位性が発揮しにくい。
 ⑤ 中医の医療資源の配置・サービスの提供・行政の管理体制が整理されていない。


『中国中医薬報』(2011年9月15日)
翻訳:平出由子


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