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中国・衛生部,災害時の中医の医療救援活動を評価
衛生部はこのほど,北京大学公共衛生学院・北京大学衛生応急管理センターに委託し,昨年8月7日に舟曲県(甘粛省)で発生した土石流災害(*編集部注)に際して行われた中医の医療救援活動に対して外部評価を行った。評価報告では,被災者の救援において,中医薬は中医学の「因地制宜」という特徴を活かし,甘粛の地に適合する治療を施して,大いにその力を発揮したと評価。そして,今回得られた救急および感染予防に対する中医薬の応用経験は,今後広く普及させる価値があると指摘した。
舟曲県での緊急医療支援活動では,中医は次のような対応をとって重要な役割を果たした。(1)大蒜160.5トンを用いて感染症を予防,(2)花椒100キロを用いて下痢を予防,(3)黄花菜2トンを用いて心理的抑鬱を予防,(4)黄柏・蒼朮・苦参・滑石粉5トンおよび院内中薬製剤を用いて皮膚疾患を治療。
評価報告では,まず中医薬の「因地制宜」という考え方を高く評価し,参考に値する価値があると指摘。さらに今回の救援活動では,「中医薬は効果を発揮するまでに時間がかかり,作用も緩やかで,主に滋養や体質改善に用いる」という一般的なイメージを覆し,緊急の救急治療や感染予防にも効果を発揮することを再認識させた。このため報告では,今後は救急治療や感染予防に対する中医薬の研究・調査を進めて,応用する価値があると指摘している。さらに,関連部門は今後しばらく,中医薬への取り組みを強化し,治療効果に対する中医薬の科学的評価方法を積極的に模索し,中医薬が本来備えている力をさらに発揮させて,今後の災害医療救援活動において活用する方向である。
また評価報告では,今回の経験をふまえ,3級中医病院は救援活動に対応する能力を十分に備えていると評価。現場では,中医薬の「簡易性」「利便性」「効果的」という特徴が大いに活かされ,重篤な患者を救うことも可能だと報告している。甘粛省の衛生行政部門の幹部は,中医薬を非常に重要視しており,中医薬独自の作用を高く評価して,中医薬を提供できるよう体制を整えている。また医療救援活動に際して,著名な中医専門家が現場で指揮をとり,中医薬が確実に効果をあげられるようにしている。その他,中薬の効果および副作用の情報のフィードバック体制を確立し,専門家が患者の症候にもとづき方剤を調整しやすいようにして,さらに大勢の患者に使用した場合でも一定の治療効果をあげられるようにしている。
その一方,評価報告では,現在の緊急計画には,突発的災害が発生した際の救急治療において中医薬の立場や始動方法などが明記されておらず,そのため災害が発生した際の中医医療機関の対応の遅れを引き起こしていると指摘している。また現時点において,衛生部には突発的災害においてみられる疾患に対する中医の統一された対応原則や基準がない。このため,各レベルの衛生行政主管部門は,各種災害の緊急計画における中医薬の役割や,どのような場合に,どのように中医薬が参与するのかといった問題について明確な回答を出さなければならない。さらにそれと同時に,突発的災害が発生した際に医療救援活動に対応する中医業界独自の基準や,相応する各疾患の治療マニュアルを策定する必要がある。(『中国中医薬報』記者・王倩,鄭訪江)
[中国中医薬報2011.4.8 平出由子訳]
*編集部注: |
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| 2010年8月7日,甘粛省甘南チベット族自治州舟曲県の東北部山間地帯で,突然降り出した豪雨によって大規模な土石流が発生した。舟曲県中心部を含む幅約500メートル,長さ約5キロにわたる地域が土石流に飲み込まれた。この災害で2千人近い死者・行方不明者がでた。 |
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