「国民経済と社会発展に関する十二次五カ年計画綱要」において初めて「中医薬事業発展の支持」を単独で掲げる
中国中医薬報記者:黄心
新華社は3月16日,「国民経済と社会発展に関する十二次五カ年計画綱要」(以下「綱要」)を発表した。そのなかで,中医学に関して「中医薬事業発展の支持」という項目が単独で掲げられた。(☞「綱要」の全文)
「綱要」は全16篇62章からなる。第8篇「人民の生活の改善 整った基本公共サービス体制の確立」の,第34章「基本医療衛生制度の完備」は6項に分かれており,このうちの1項で,「中医学と西洋医学の双方をともに重視する姿勢を維持し,中医医療および予防保健サービスを発展させ,中医薬の継承と開発を推進し,民族医薬の発展を重視する。中医薬教育を発展させ,中医医療機関と中医薬人材チームの構築を促進する。中薬資源の保護・研究・開発および合理的な利用を推し進め,品質の保証と標準の確立を推進する。医療保障および基本薬物政策によって,中医薬による医療の提供と使用を奨励する」としている。
「綱要」では,「医療体制」を「医療衛生に関する重点工程」のなかに組み入れ,末端医療を担う衛生機関の標準化を推進し,県レベルの病院(中医院を含む)の医療水準を向上させて,省レベルの婦人科・小児科専門医院や,遠隔地域の市レベルの総合病院・県レベルの中医医院を拡充するとしている。またその他の4項目の重点工程では,①基本医療保障体制,②公共衛生体制,③総合医の養成拠点,④医薬衛生の情報化を掲げている。
「綱要」では,基本保障,末端の強化,体制の構築という課題に照らして,財政の投入を増強するとしている。これによって医薬衛生の体制改革を進展させ,整った基本医療衛生制度を確立して,医療衛生事業の発展を加速し,優先的に基本医療衛生に対する国民のニーズに応えることを示している。基本医療衛生制度の完備に向けた,その他の5項目の内容は以下の通り。
1.公共衛生体制の確立を促進し,重大疾患の予防など専門の公共衛生ネットワークを完備する。
1人あたりの基本公共衛生費の基準を徐々に高めていき,国の定める基本公共衛生項目を拡大して,重大公共衛生サービスの専門プロジェクトを実施する。これによって,重大な伝染病や慢性疾患,職業病,地域性疾患,精神疾患などを積極的に予防し,突発的に発生する重大な医療事故に対処する能力を向上させる。また,農村医療の救急ネットワークを徐々に構築し,健康教育を普及させ,国民の健康行動計画を実施する。公共の場における禁煙を全面的に実施する。都市や農村に居住する70%以上の者の電子健康カルテを作成する。妊産婦の死亡率を10万分の22人に,乳幼児の死亡率を12%以下に低下させる。
2.都市や農村の医療衛生体制を強化する。
県レベルの病院を筆頭とし,農村の衛生院や村の衛生室を基礎とする農村の3級医療衛生サービスのネットワークの構築を促進する。これによって,居住区の衛生サービスを基礎とする新型の都市医療衛生体制を完備し,医療衛生資源増加の重点を,農村や都市の居住区へと移行させる。末端の医療衛生機関の総合的な改革を大幅に推進し,様々なルートによる補償の仕組みを構築して,新たな運用機構を形成する。総合医に重点をおいた,末端医療衛生チームの構築を強化し,総合医が長期にわたって末端医療を担うことを奨励する政策を整えて,1万人に対し総合医2人という目標を達成する。レベル別診療や双方向の転院制度の推進を加速し,各種都市医院や末端医療機関の分業協力体制を形成する。地域の衛生計画を完備し,医療機関へ社会資本の導入を奨励して,社会資本や外資の医療機関への参入の認可を緩和し,医療従事者の多元化を形成する。
3.整った医療保障体制を構築する。
都市や農村住民の基本医療保障体制を整え,都市や農村部の職工や,住民の基本医療保険,新型の農村合作医療と都市や農村の医療救急制度の完備に向けてさらに進めていく。都市や農村住民の医療保険と新しい農村合作医療制度の1人あたりの料金の徴収基準や保証レベルの格差是正を促進する。都市や農村の職工および住民の医療保険や,新しい農村合作医療制度における最高支給限度額と入院費用支給額の比率を向上させ,外来総合計画を全面的に推し進める。各項目間の制度がスムーズにつながるようにして経営資源を調整し,徐々に各段階を統一する手順を高めていく。これによって,医療保険関係の変更や引き継ぎ,居住地以外でかかった医療費の精算などができるようにしていく。さらに,基本医療費の即時精算を全面的に推進し,費用の支払い方法を改革する。積極的に民営の健康保険を促進し,医療保険制度を補強しより完全なものとしていく。
4.薬品の供給保証体制を完備する。
国家基本薬物制度を基礎とした,薬品の供給保証体制を確立する。末端の医療衛生機関において国家基本薬物制度を全面的に実施し,その他の医療衛生機関においても,基本薬物を完備し,基本薬物の優先的使用を徐々に実現させていく。基本薬物目録の動態調整の体制を構築し,価格形成および動態調整の体制を完備する。基本薬物の実際的な収支レベルを向上させる。薬品の生産管理を強化し,流通体制を整え,薬品の一括買い付けや医療機関における合理的な薬品使用を規範化する。
5.公立病院の改革を積極的かつ確実に推進する。
公立病院の公益性を維持し,政務分離,官営分離,医薬分業,営利性・非営利性の分離など,有効的な方法を積極的に模索する。近代的な病院管理制度を推進し,科学的・合理的な雇用体制と配置制度を構築する。公立病院の補償体制を改革し,支給方式の改革を積極的に推進する。また,病院はあくまでも患者を主体とし,公立病院の内部管理を大幅に改善して,診療過程の優良化・診療行為の規範化・医師と患者の関係の改善をはかり,国民が診療を受けやすくする。登録医師の就職を推進し,入院担当医師の規範化養成制度を構築する。さらに,医療従事者の積極性を引きだすことに重点を置く。
(中国中医薬報[2011.3.17]より 平出由子訳)