8月7日に衛生部および天津市政府主催で行われた,「現代中薬国際化産学研連盟始動および複方丹参滴丸のFDA(食品医薬品局)第Ⅱ相試験結果報告会」によると,天津天士力集団が生産している複方丹参滴丸が,中国で初めて米国FDAの第Ⅱ相試験を通過し,まもなく第Ⅲ相試験に入るという。これにより,同製品は中国で初めての米国市場進出を果たす中成薬となることが期待され,中薬の国際化に向け大きな一歩を踏み出したといえる。
衛生部副部長・国家中医薬管理局長である王国強氏は,同報告会の席上,「複方丹参滴丸がFDAの第Ⅱ相試験を通過したということは,中国の中成薬の安全性・有効性および品質標準のコントロールが初めて,全世界で最も厳格な医薬品管理機構の認可を受けたことを意味しており,さらにこれは,中国初の例である」と述べた。
臨床試験は,米国の15の地域の臨床センターにおいて,国際的に認められている医薬品臨床試験質量管理規範(GCP)にもとづいて厳格に進められ,今年初頭にすべての試験が終了した。その結果,複方丹参滴丸は,安全性・有効性・品質において十分にコントロールされていることが証明された。FDAは,複方丹参滴丸の第Ⅱ相試験の結果を認可し,第Ⅲ相試験を開始することに同意した。
新薬は,FDAの規定に従い3段階の臨床試験を行わなければならず,それを通過して初めて市場進出の許可が得られる。天士力集団は,1997年末にはすでに中薬の国際化に照準を合わせ,心臓・脳血管疾患の治療薬である複方丹参滴丸を,中国初のFDA臨床試験通過を目指す複方中薬製剤と定めていた。複方丹参滴丸のFDA第Ⅱ相試験は2007年に開始されたが,同薬品は,FDAがこの20年で初めて受け入れた心臓・脳血管疾患治療の新薬となった。
欧米の主要医薬市場において,中成薬が薬品として市場進出することは並大抵のことではなかった。天士力集団の閆希軍会長は,「デジタル化・標準化が進む今日において,中薬はこれまでの殻を突き破る必要があった。1つの基準を打ち立て,科学的に定量化をしなければならず,過去のあやふやな概念をデータ化して,科学的方法をもってこのデータを検証し,標準化を成し遂げなければならない」と話した。
また会長は,「中薬の国際化を実現するために,天士力集団は科学的方法を用いて,積極的に西洋の先進国家の法規・法律に触れ,中医薬の研究・審査に適した標準を研究してきた。さらに,有効的な方法学と標準化システムを構築し,中薬の国際化の道を探索してきた。これは,ある製品が成功するか否かという問題よりも,ずっと深遠な意義をもつ」と付け加えた。
さらに,中国工程院の張伯礼院士は,「複方丹参滴丸がFDA第Ⅲ相試験に入るということは,中薬が,国際化の鍵を握る一歩を踏み出し,研究開発・生産・臨床審査などにおいて,総合的に国際的な認可を受けたことを意味している。世界が徐々に伝統医薬を受け入れ始めていることも,中医薬の国際化を進めるうえで,私たちに大きな自信を与えてくれている」と考えている。
ここ数年間,中国政府はつねに中医薬産業の発展を重要視しており,『中薬現代化発展綱要』『中医薬開発発展計画綱要』など,一連の重大政策を立て続けに打ち出し,なかでも,中医薬の標準化・現代化・国際化に対し,展望性の高い政策指導および保障を提供した。中医薬産業はついに,飛躍的発展のチャンスを迎えたといえる。
天士力集団は,2年以内に全世界に50~70の臨床試験センターを設立し,第Ⅲ相試験を行うという。
(中国中医薬報[2010.8.9]より 平出由子訳)