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「国際標準システムの構築―中医薬,世界進出への道―」李 振吉

 中医薬国際組織による標準の制定・発布を短期戦略目標とし,国際標準化機構(ISO)を足がかりとする中医薬の世界進出を中長期戦略目標とする。


世界中医薬学会連合会   李 振吉



 国際標準化機構(ISO)が国際経済モデルの指導的役割を担うようになったことで,世界経済のグローバル化がますます促進され,全世界が最新ツールを手にすることができるようになった。ISOは,中医薬の国際標準化のために不可欠な国際組織であり,国際標準システムの構築は,中医薬が世界進出を果たすために避けては通れない道である。

 ISOを足がかりとして中医薬の世界進出を果たすことが中長期戦略目標

 中医薬の国際標準化を図るための戦略には,2段階ある。つまり中長期戦略と短期戦略である。中長期戦略としては,まずISO中国駐在事務所(国家標準委員会国際協力局)と共同で,ISOに中医薬技術委員会を設立するよう申請するとともに,その秘書局の任務を獲得し,中医薬標準をそのまま国際標準へとスライドさせるための組織的基礎を固めることである。各方面の協力により,そのための貴重な一歩を,我が国はすでに踏み出している。2010年6月,ISO中医薬技術委員会(仮称)の第1回全体大会が北京において開幕し,中医薬の国際標準制定問題についてのシンポジュウムが開催される。
 ただし,ISOを足がかりに中医薬を世界に進出させるという計画はあくまでも中長期戦略目標であることを,われわれは冷静に認識しておかなければならない。なぜならば,ISO国際標準を制定し発布するためには,厳格な法定手続きを経なければならないからである。企画,提案,立案,申請の開示,論証の起草,草案の本文の確定,段取りの批准,発布出版と,7段階の手順が必要である。特に批准段階では,各国の投票による表決を経なければならない。ところでISOを通じて中医薬国際標準を制定することの意味は,ISOが「世界最大の標準開発者」として世界貿易機構(WTO)に認められていることであり,そしてWTOは,構成国の紛争を調停する非常に権威ある国際的法人組織である。その紛争には,貨物貿易・サービス貿易・知的所有権などの問題が含まれ,したがってISOによって制定・発布された標準は,権威とともに汎用性を獲得することになる。一方ISO標準の弱点は,制定に時間がかかることと,柔軟性がないことであり,短時間で中医薬標準を普及させる確立は高いとは言えない。


 注目される国際企業連盟標準

 2008年『国際標準化動態』第4巻によれば,電子・コンピューター・通信分野においては,標準化による技術普及は企業発展のための重要な戦略手段であるという。市場を開拓し市場競争力を強化するために,市場利害の一致する企業が企業連盟を結成し,共同で制定したものが,企業連盟標準である。企業連盟標準は,企業の組織を一新し,現代企業として国際競争力を強化するための重要な手段である。
 連盟標準は,通常複数の企業あるいは科学研究機構によって編成された,企業からの締め付けの緩い団体によって制定される。通常その組織構成は,連盟の最高権力機構として各企業の代表者からなる代表者大会あるいは理事会があり,その下に技術委員会などの専門部門がある。連盟標準であれば,正式の標準のように企画・制定に時間がかかるということがない。制定速度も速く,市場の要求に即応でき,知的所有権政策に対しても柔軟であり,普及効率も高い連盟標準は,正式な標準をアシストする形で,国家経済および市場システムのなかでますます重要度を増しており,市場における標準制定の動きをおおいに促進している。
 ISOも連盟標準を受け入れ始めている。当初は戦略として注目していたのだが,アメリカが連盟標準を世界的な標準システムにリンクさせる形で利用していることは,多様性を許容する度量の広さを示している。連盟やフォーラムなどの形式に代表される柔軟な新標準プランは,標準のグローバル化にとって不可欠である。IEC(国際電気標準委員会)は,市場の要求に応えるために,現在協議の末一致を見たIEC国際標準のほかに,自ら運営する作業部会を設置し,連盟やフォーラムに対して効率的なサービスを提供することで,短期間の協議による快速プログラムの促進を計画している。また同時にそのデータは,ICE標準の制定プログラムを通過させることで,正式な標準とすることもできる。
 ISOも標準制定のための快速プログラムを開発している。またISOとIECは,技術革新の速い情報分野の標準を制定するための快速プログラムを開発して,情報技術委員会を設置している。標準を制定するということは,経済の効率化,制定時間の短縮,そして市場原理に基づく商習慣が要求されるということである。また快速プログラムを採用すれば,市場に浸透している標準が1年足らずで国際標準になっているということもあり得る。


 企業連盟標準は中医薬国際標準化のモデル

 企業連盟標準の意義は,伝統的な標準化プログラムを採用するわれわれの国際標準化活動に対し,より開放的かつ実務的・効率的で,柔軟かつ迅速で,多様性を許容するという,標準化の方向性を示したことであり,その点をISOは注目している。市場の要求に応え,組織と標準化システムを刷新することは,産業の国際競争力を強化するための重要なプロセスである。したがって中医薬の国際標準化も,市場のニーズを道しるべとし,中医薬の特異性と方向性を考慮したうえで,さらに効率的で柔軟で実務的な国際標準システムを積極的に推進していかなければならない。
 企業連盟標準はすでに市場で取り入れられている標準を基にしており,それを快速プログラムに乗せることで,国際標準に転化させることができる。この事実は,中医薬の国際標準システム実現の大きな可能性を示すものである。世界中医薬学会連合会は,実質的には中医薬の国際連盟組織である。私たちは中医薬国際組織標準を制定・発布することで,中医薬の国際標準システム作りを推進することができるだろう。これが短期的戦略である。
 広義の国際標準は,制定する主体がどこかによって,狭義の国際標準・国際組織標準・地域標準に分類される。狭義の国際標準とは,国際標準化機構(ISO)・国際電気標準委員会(IEC)・国際電信連盟(ITU)の制定した標準を指す。国際組織標準とは,国際組織が制定した標準であり,全世界で300余の国際組織が制定した標準がある。そのうち世界歯科連合会・世界保健機構(WHO)など40の組織の定めた標準がISOのリストに選定されたものが世界標準となる。そしてそれ以外のものが,国際組織標準である。地域標準は,地域組織が制定した標準である。
 世界中医薬学会連合会が制定・発布した国際組織標準は,企業連盟標準に似ている。この標準は,現時点の国際市場における中医の医療・保健・教育・貿易が必要とする標準に即応するものであり,中医のISO国際標準を制定するための基盤となるものであり,これが,ISOを足がかりとする中医薬の世界進出を実現させるための中長期戦略目標である。


 関連項目

 中医薬の標準規格を制定することは,国家の科学技術発展のための重要な戦略となっている。呉儀副総理は,2004年全国中医薬工作会議での談話で,中医薬の標準化・規格化研究を強化し,国家標準と業界標準の制定に努力し,標準化による現代化を促進しなければならないと述べた。
 20世紀80年代から,我が国の中医薬標準化事業が始まった。初期の統計によれば,現在関連部門により,医療・教育・科学研究・中薬・管理など各方面について,296項目の中医薬標準が頒布されている。例えば『経穴部位』・『耳穴名称と部位』・『中医病症診断療効標準』・『中医臨床診療述語』・『中医病証分類とコード』・『中薬分類とコード』など多くの国家・業界標準が制定され,さらには『経穴部位』・『耳穴名称と部位』などに関する国際標準制定に参加している。このように中医薬標準と規格を制定したことによって,中医薬業管理の規格化が進み,学術レベルが向上し,中医薬の現代化と世界進出を促進している。


『中国中医薬報』(2010年6月9日)


原題:国際標準体系建設鋪就中医薬走向世界之路

翻訳:柴崎瑛子


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