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「国際標準システムにおける中医薬国際組織標準の位置づけと役割」世界中連秘書長 李振吉
2010年5月に西安で行われた「世界中連」(世界中医薬連合会)主催「2010中国(西安)中医薬国際フォーラム」において、世界中連副会長兼秘書長の李振吉教授が、現在中国が国を挙げて取り組んでいる中医学とISOの問題について発表した。その概要を以下に紹介する。
国際組織標準とは、三大国際標準化組織であるISO・IEC・ITU以外の国際組織によって制定された標準を指す。現在、世界には国際的なものや地域エリアのものを含めて、300あまりの規格や技術規定があるといわれている。経済のグローバルネットワーク化が進む昨今、国際標準と標準化へのニーズが高まっており、国際組織標準の発展に、大きな発展空間を提供している。
1.国際標準化組織と国際標準の分類
(1)国際標準化組織
①「国際標準化機構」(ISO):世界最大の国際標準化機構。1947年に設立される。本部はジュネーブにあり、非政府系の国際組織で、国連にも属さない。
②「国際電気標準委員会」(IEC):電気工学、電子工学、および関連技術を扱う非政府系の国際機構。1906年にイギリス・ロンドンで設立された。1947年にISOに併合されたが、1976年にふたたび独立した組織となり、ISOとは相互に補い合う関係となっている。
③「国際電気通信連盟」(ITU):本部はジュネーブ。国連に属し、国際政府間で電信事業を取り扱う国際組織。
④標準化に関係する国際組織:ISO、IET、ITU以外で、国際標準を制定する国際組織。土台がしっかりして、成熟した組織であれば、ISOが認可する。ISOのホームページですでに国際組織として認可されている組織は40近くある。具体的には、世界歯科連盟(FDI)・世界ドキュメンテーション連盟(FID)・国際酪農連盟(IDF)・世界保健機関(WHO)・世界気象機関(WMO)などがある。これ以外にISOの認可を受けていないものとして国際羊毛事務局(IWS)、国際溶接学会(IIW)などがある。
⑤地域の標準化機構:欧州標準化委員会(CEN)・太平洋地域標準会議(PASC)・アメリカ標準化委員会(COPANT)・アフリカ標準化機構(ARSO)などがある。
(2)国際標準の分類
①国際標準:大きく分けて2つに分類される。1つは、ISO・IEC・ITUが定めた標準によって制定されたもの。もう1つはISOが認定し、ISO標準目録の中で公表されている国際組織が制定したもの。
②国際組織の標準:こちらも大きく2つに分類される。1つは、ISOが認可した40あまりの国際組織が制定したが、まだISOの目録に登録されていない標準。もう1つはISOが認定していない200あまりの国際組織が制定した標準。
③地域標準:地域の標準化機構が制定した標準。
④国際標準には、さらに様々な分類法がある。標準となる対象の違いにより、その表現方法も標準・規範・技術報告などに分けられるし、専門分野の領域では、一般標準・基礎標準・科学標準・安全標準・衛生標準・環境標準などに分けられる。標準の執行方式では、強制的標準と推薦的標準に分類される。
2.中医薬国際組織の標準とISO、WHO標準との関係について
中医薬国際組織の標準は、中医薬国際組織が標準を制定する。中医薬の国際組織とは、各国の会員組織が共通の目標の下で結成された連合体であり、共同で標準制定に参加したものである。各構成員はこの標準を遵守しなければならない。この標準は、組織内の各構成員に適用されるものだが、この標準の基本的な特色は「統一」であり、各国の中医薬活動が最も秩序だったものになる一種の「取り決め」とされる。この「取り決め」が、地域や国を超えて、技術管理上でも権威的な関与を行うことで、中医薬の国際上の健全で秩序ある発展を保障する。
ISOは、世界で最も権威ある標準化機構であり、ここで制定された標準は、国際的にも最高クラスのものである。すでにISO中医技術委員会が設立され、中医薬をISO標準に入れるための基礎はできた。しかし、レベルが高ければ高いほど、難易度は増し、制定するための時間もますます長くなる。したがって、国際組織の標準の果たす役割はそれなりに重要になる。例えば、中国の「国家標準」は、「業界標準」に置き換えることができないように(訳者注:中国では「中華人民共和国標準化法」によりGBという全国で統一された標準があるが,このほかに業界標準、地方標準、企業標準があり,全部で4つのランクがある)。
また、一部の国際組織の標準は、ISO標準導入までの試験的役割(「試行期」または「実験田」的役割)をはたす。国際組織の標準が発表されて、後々成熟してきた頃に、ISO技術として再度その履行プロセスを踏み、ISO規定に組み入れられることもある。
WHOは政府組織であって,ISOが認可したものであり,標準化と関係ある国際組織である。WHOが制定した標準は、ISOの目録に登録された後、国際標準として扱われる。国際組織の標準の制定については,ISOとWHOの2つの組織がそれぞれ分担して、「試行期」または「実験田」の段階を経過した後に,ISO標準またはWHO標準として採用される。
また、ある国際組織によって制定された標準が、その時代の科学技術の発展レベルを代表し、厳格な科学的実験と検証を経て、各界の意見も吸収して各分野の要求を満たすなら、条件が成熟したときに、国際標準化と関係のある国際組織となりうる。
3.中医薬国際組織の標準と各国の法律、法規、標準との関係
(1)市場経済において、市場はその主体と客体とに分類される。このうち主体は法人と自然人(natural person)、客体とは商品を指す。法律・法規は人を管理するので、市場行為の主体を管理していることになる。市場行為の客体は商品であるので、これは主に品質基準によって規範化されている。よって国際組織の標準と各国の法律・法規とは、その対象が異なるため、各国の法律・法規の施行に影響を受けないことになる。
(2)中医薬は、すでに120あまりの国や地域に広がっており、文化的背景や普及の程度、中医薬に携わる人のレベルの違いに大きな差が出ており、各国の基準にも違いがある。標準の制定には、「話し合いで一致する」という基本原則があり、制定された基準に対しては、大部分の国が認可した「基本的に評価された原則」にのっとらなくてはならない。そのため、ある国の標準は、国際標準よりもレベルが高いこともある。これは、その国にとって名誉あることであり、独自の特色とブランドを発揮することができる。またある国の標準のレベルが低い場合もある。この場合は、努力してレベルをあげる必要がある。時間の経過とともに、標準は進歩し、全体のレベルも引き上げられる。さらに、国際組織の標準の多くは、推薦的標準であり、各国の標準とは矛盾することはない。
4.国際組織の標準を推進する内在的動力は市場のメカニズム
市場のメカニズムが、国際標準を促進する内在的動力となる。どのような組織・機構・個人も、市場競争のなかでシェアを獲得したいとするのなら、まずは自身のサービスや商品を規定の標準にまでもっていかなければならない。標準に合致して、信用を得ることができれば、誰でもその市場を獲得することができ、市場から利益を受けることができる。
国際標準を推進する主な方法は、「合格の評定」という形をとる。
5.世界中連は中医薬の国際的学術組織であり、中医薬国際組織としての標準を制定するための主な作業は以下のとおりである。
(1)世界中連は秘書処を中国におく中医薬国際学術組織であり、会員数は30万人、世界57の国と地域に分布し、195カ所の会員組織が加入している。
(2)世界中連は設立以来、中医薬国際組織としての標準化作業の制定・公布・推進を自分の歴史的使命としてきた。
(3)これまで、3つの国際組織としての標準を制定した。
①世界中連の規範制定と公布作業の規範
②中医薬基本用語の中国語・英語対照基準
③世界中医学部教育(CMD前)教育基準
(4)現在、中医薬基本用語の対照標準作業によって中国語とフランス語、中国語とスペイン語、中国語とポルトガル語の起草作業が行われている。
原題:「中医薬国際組織標準在国際標準体系中的定位与作用」
訳者:藤田康介
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