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中医薬の国際化に向けて着々と準備する世界中連――「世界中連」第2期第6回理事会リポート

 5月8,9日の2日間,中国西安の西安紅宝賓館で世界中医薬学会連合会(世界中連)理事会が開催された。参加者は理事と監事の40数名。外国人は10名未満で,大多数は海外で活躍する中国人であった。討論された内容は次のとおりで,それぞれ目を離せないホットなテーマである。
 1.国際標準システムにおける中医薬国際組織の標準の位置づけと役割(李振吉氏基調報告)
 2.EUにおける中医薬法規の審議経過と問題点
 3.世界中医診療所の設置と服務にかんする基準
 4.『中医基本名詞術語国際標準』
 5.中薬エキス製剤(単味と複方)の国際組織基準


「世界中連」第2期第6回理事会
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1.李振吉秘書長の基調報告

 「国際標準システムにおける中医薬国際組織の位置づけと役割」

 理事会冒頭に秘書長の李振吉教授が報告した。世界中連が中医薬の国際組織として独自の標準をもつことが合法的に認められること,そしてそれがやがて中医薬の国際標準の完成に向けた実験田的役割を果たすことを明らかにしたもので,世界中連の活動の意義を際立たせた。この認識を共通認識としたうえで,さまざまな標準案を次々と提起し,実行に移そうとしている。

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2.「EUにおける中医薬法規の審議経過と問題点」

 理事会では英国人2人が報告をしたが,同時通訳が機能せず,内容が通じなかったので,本リポートでは,英国で中医の今日の地位を築いてきた中心人物・梅万方氏の論文 「EUの中医薬法令の実施がもたらす危機と挑戦」の訳文をもって報告に代えたい。世界の中医の動向を知る上で重要な文献であるので,ぜひ目を通していただきたい。

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 かいつまんで説明すると,英国での中医薬に関する法改正が長年行われてきたが,7年振りに2011年4月に法改定が行われる。これが今後の世界における中医の帰趨を決する重要な内容を含んでいるため,世界中連の喫緊の重大議題となっているのである。この法規の中医側にとっての有利な点は,中草薬が過去欧米では食品または草薬原料として扱われてきたが,今回の法改正により,治療性薬物と正式に認定されることになることだ。英国で認められるとほぼ自動的にEUで認められ,それは引いては世界に広がるとみなされているだけに,同法規が発効すると,世界における中医薬の立場が一気に変わる可能性があり,非常に注目されるところである。
 もう一方の,不利な点は,中草薬製剤を承認申請するときに,30年の安全史とEUにおける15年の使用史を添付することが義務づけられている点である。EUでは草薬製剤は食品とみなされてきたのに,EUにおける医薬品としての使用史を出せというのは理不尽だとして,これの修正を強く求めている。また,同法規によって,中薬複方製剤は,構成生薬が3味以内と限定されたり,EUで医療活動を行う中医の資格規定では英語レベルが条件に加えられるなど,厳しい条件がつきつけられている。これらの条件をあとわずか数ヶ月で中医にとって有利な状況に変えうるのかどうか,大いに注目される。しかし,筆者の梅万方氏は,中国政府が乗り出して英国との政治交渉で決着するほかないとして,中国政府に強く要請をしている。梅氏が主張するのは,中医薬が西洋医薬と同等に治療効果を持つことを英国政府に認識させること,医療負担が大きくなっているEU諸国に対して中医薬治療の経済効率の高さを根拠に主張していくようだ。まるで漢方エキス製剤が日本で認可されたときの武見太郎氏と同じように政治決着で解決しようとしているかのようだ。


3.世界中医診療所の設置と服務にかんする基準

 世界各国に向けた中医診療所のモデル案を提示した。たいへん詳細で緻密な施設設置案とサービスの案である。討議では,各国の状況から見た修正案が数多く提出された。患者のプライバシーを守るにはどういう配慮が必要か,消毒をどのように徹底させるか,宣伝はどのように行うか,カルテの保存はどうするかなど,きわめて具体的だ。世界中連は独自の基準作りを着々と進めている。


4.『中医基本名詞術語国際標準』

  理事会では,中国語・スペイン語,中国語・フランス語の2つの標準作りの進行状況がそれぞれの代表から報告された。中国語・フランス語標準を作成中の朱勉生女史がフランスでの活動を報告したが,長年にわたるフランスでの地道な活動と彼女の人柄への信頼から多くの人々の支持を得て,順調に進行していることが報告された。彼女の運営する中医学院卒業者を中心に政府高官を含む広範囲の人々が協力を申し出,権威性のある辞典が完成したという。

 討論では,中医用語の表記をどう行うかが議論された。先のWHOの経穴名は数字とアルファベットの記号で表記されたが,これは失敗であった,長期的にはかならず中国語のピンインで表記しなくては効率が悪いという意見が大勢を占めた。そして,小柴胡湯の場合,Xiao Chai Hu Tangとされるが,フランスではXiao Chai hu Tangと柴胡が一用語であることを意味する表記法を採用したことが報告された。これからも,徹底的に伝統中医学で貫いてゆこうという硬い決意が見て取れる。


5.中薬エキス製剤(単味と複方)の国際組織基準

 世界中連は,中医薬の国際組織として独自の標準をもつことが認められており,設立当初から,中薬エキス製剤の標準化と世界への普及を目標の1つとして力を入れてきた。中国国内には中薬エキス製剤の製造工場は6つあるが,統一された基準がない。今回,国際化を視野に入れて,世界中連が独自の統一基準を提起した。

(K.Y)


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