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新型インフルエンザ治療で、中西医併用治療の有効性を再認識

 中国の感染症治療のトップを行く北京地壇医院と首都医科大学付属佑安医院では、これまで30例近い新型インフルエンザ患者を収容してきたが、初期段階から中医学と西洋医学の併用治療を行って、成果を挙げているという。
 これをうけて、6月10日、北京市中医管理局・衛生局・薬監局・科学委員会など4つの部署が合同で、「首都中医薬防控甲感(新型インフルエンザ)高層(高級)専家研討会」が開催され、第一線で治療・研究にあたっている中医学・西洋医学の専門家が参加して討論が行われた。
 この中で、北京地壇医院中西医結合科の王玉光副主任は、今回の新型インフルエンザの特徴について、発熱が主な症状であり、併せて咳や黄色の痰の症状がみられると報告している。ただし、発熱は4日間を越えることはないようだ。また、30歳以下の患者では症状が重くなる傾向にあり、45歳以上では比較的軽くすむという。中医学的見地からすると、悪熱が重いが、悪寒は比較的軽いという。ただ、総じて症状は軽めで、重篤患者や消化器系の症状はほとんどみられなかった。北京市中医管理局の『甲型H1N1流感(新型インフルエンザ)中医薬防治方案(2009年版)補充方案』では、辛涼平剤の桑菊飲や、辛涼重剤の麻杏石甘湯と柴葛解肌湯による治療が、特に解熱や咳止め、便秘の解消に有効であるとしている。
 首都医科大学付属佑安医院感染三科の汪暁軍博士によると、新型インフルエンザと確定された9例のうち、6例で発熱がみられ、さらに咽の痛みや痒み、乾燥、大便の不調などを訴えているという。中医学の弁証では、肺の気陰不足の素地の上に、風熱襲表した結果、肺気不宣・衛外不固・粛降失常となり、邪毒が体内に滞ったとみる。弁証においては、気・陰をしっかりと守り、腑気を通じて降下させることが必要だとしている。桑菊飲を投与すると、3~4日で症状がなくなり、リンパ節の腫れも3~5日で回復する。観察経過期間は最長で7日間で、いずれの患者も中薬の服用が有効であったと報告している。
 中国工程院の王永炎院士は、新型インフルエンザ治療においては、弁証論治が前提ではあるが、汗法を正しく応用することの重要性を特にを強調した。中医学で「正汗」と呼ばれる全身にじわりとかく汗が大切で、これが継続すれば今回の新型インフルエンザによる高熱などの中毒症状はまもなく消失し、治療期間を短縮できるという。王永炎院士は、国家中医薬管理局が結成した新型インフルエンザの中医薬予防・治療チームの座長であり、新型インフルエンザが発生した後、各地の症例を集め、観察と分析を行ってきた。これらの分析をもとに、治療方案を考案し、それら方案の治療効果の分析を行ったうえ、臨床観察シートを作っている。
 中国工程院の李連達院士は、軽症であればできる限り中医学を優先し、中医学の治療のあとに西洋医学の治療を検討すべきであり、重症であれば中西医結合を考え、中医学と西洋医学の併用した治療法を行うべきだと主張した。
 中国中医科学院の劉保延副院長は、今後の方針として、新型インフルエンザの中医学を使った治療の研究を進め、まずは小規模範囲でもダブルブラインド方式でタミフルとの比較検討を行い、国際的にも認められる研究成果を残す必要があると述べている。また、予防薬に関しても、使用生薬の選別をすすめ、エキス剤や飲片(刻み生薬)の開発を検討すべきだと提案している。
 中医学を使った新型インフルエンザの治療・研究も、中国で症例数を重ねることにより、新しい段階に入ってきたように見受けられる。(2009年6月記 )中国中医薬報6月12日付より編集  藤田 康介)

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