中医学の東洋学術出版社：中国最新情報

　2009年春も、中国各地で子供に猛威を振るっている手足口病に関して、中国国家中医薬管理局が各地の現状をふまえて、中医学による治療法のガイドラインを発表した。
　すでに中国衛生部から2008年版が出されているが、それを元に一部改良が加えられている。以下に整理してみた。

１．治療方案
　手足口病は中医学では温病に属し、湿熱の疫毒が口・鼻から侵入する。手足に疱疹ができ、口・喉を上熏し、皮膚に外透する。さらに、倦怠感や悪心、便秘などの症状がみられる。もし、邪毒が内陥すると、発熱やふるえ、四肢に力が入らなくなり、甚だしい場合は喘証・脱証となって生命に危険が及ぶ。
　特に、乳幼児は稚陰稚陽の体質であるから、疫毒を感受したあと、病症の変化が迅速である。早期発見と早期治療が求められ、変証を防がなくてはならない。
（１）普通型
　　症状：発熱・口腔粘膜に疱疹ができる。手足やお尻にも斑丘疹・疱疹が見られ、疱疹周囲には赤暈ができる場合もある。喉の痛み・涎・倦怠感・食欲不振・便秘なども伴う。舌淡紅もしくは紅・苔膩・脈数・指紋赤紫。
治法：清熱解毒・化湿透邪
参考処方：金銀花・野菊花・黄連・生石膏（先下）・知母・紫草・白茅根・青蒿・藿香・生甘草（生薬量は年齢・体重・症状によって加減）
服用方法：煎じて1日3～4回服用。もしくは、灌腸や直腸点滴も可。
加減：①高熱・ふるえ・易驚する場合、羚羊角粉を頓服。
　　　②便秘　大黄
　　　③喉の痛み　元参・板藍根
　　　④咳　　杏仁・炙枇杷
中成薬：藍芩口服液・小児豉翹顆粒・清開霊口服液・黄梔花口服液・金蓮泡騰片など。炎琥寧注射液・痰熱清注射液なども使える。

（２）重症型
①症状：高熱が下がらず汗をかかない。疱疹の発生が中途半端で眠たく驚きやすい。嘔吐や筋肉がピクピク動く。四肢がだるく無力。昏睡状態になることもある。舌紅・苔厚膩・脈細数・指紋は暗い紫。
治法：清熱去風
参考処方：生石膏・生大黄・梔子・滑石（包）・寒水石・桂枝・生竜骨・生牡蠣・赤石脂・広地竜・全蝎・羚羊角粉（頓服）　（生薬量は年齢・体重・症状によって加減）
服用方法：煎じて1日3～4回服用。もしくは、灌腸や直腸滴注も可。
中成薬：紫雪丹もしくは新雪丹。炎琥寧注射液・痰熱清注射液なども使える。

②症状：発熱・喘ぎ呼吸・顔面蒼白晦暗・チアノーゼ・四肢が厥逆し、冷や汗が出る。白色もしくはピンク色、血性泡状痰。舌質紫暗・脈細数もしくは遅緩、脈微欲絶。
参考処方：人参　炮附子・山萸肉・煅竜骨・煅牡蠣（生薬量は年齢・体重・症状によって加減）
用法：濃煎し、直腸適注もしくは鼻腔栄養法。
重症患者に関しては、様態の変動が早いので、十分に経過観察し、西洋医学も併用した治療法で対処療法に力を入れる。
（２）外用法
　咽部位の疱疹：西瓜霜・双料喉風散・氷硼散などを蜂蜜などで溶いて塗る。

２．予防と注意点
（１）予防
　手足口病が流行している間は、手洗いに気をつけ、人が集る場所には行かないようにする。部屋の風通しをよくして、衣類や布団を干すようにする。また、保護者自身の衛生管理にも注意する。
　予防処方
１．白菊花6グラム　生甘草3グラム　生山査10グラム　　
　　以上を200ミリリットルの沸騰水に浸けたあと、氷砂糖を加えて飲む。内熱がある子供に適している。
２．生米仁　10グラム　扁豆　10グラム
　氷砂糖を適量加えて、粥とともに煮つめる。脾胃が弱い子供に適している。
　以上の2種類の処方は、3～5歳の子供に適していて、医師の指導の下で服用する。
（２）注意点
　あっさりした食事を心がけ、なし・リンゴ・西瓜・クロクワイなどの汁を飲む。一方で、刺激の強い食べ物は避ける。（2009年4月記　『中医薬防治手足口病臨床技術指南（2009年版）』　藤田　康介　記）