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『金匱要略』の「風引湯」が手足口病の治療に有効か

 中国では昨今、安徽省などの農村エリアを中心に手足口病が発生し、2009年1月にも安徽省で子どもが1人死亡している。そんな中、『金匱要略』の中風歴節病編に記載されている「風引湯」が手足口病と中枢神経感染症を合併したケースにおいて、病気経過期間を短縮するだけでなく、発熱期間の短縮やステロイド使用量の減少などに有効であることが北京地壇医院の研究で分かった。

 北京地壇医院では、2008年5月~12月にかけて、あわせて722例の手足口病の子どもを収容したが、このうち128例に関しては中枢神経感染がみられた。そこで、病院では北京市中医薬管理局手足口病専門家グループの指導の下、128例のうち93例は中医学と西洋医学の併用による治療、35例は西洋医学のみの治療とで比較してみた。使われた生薬は「風引湯」を基本とした加減で、2~3歳児に関しては1日2回、1回30mlを服用させた。なお、腸閉塞を合併している場合は、「厚朴三物湯(厚朴 大黄 枳実)」を服用させ、口内炎がひどい患者に関しては、中成薬となる「開喉剣(八爪金竜・山豆根・蝉脱・薄荷脳)」を使った。

 今回、手足口病の患者は脳髄膜炎の症状以外にも広く神経系統感染の症状もみられ、筋肉痙攣や睡眠障害、嗜眠などの発生率が高まった。また、発疹の範囲も広く便秘気味で食欲がなく、舌質が赤い患者が多く見られた。発症した経過期間は2~6日間となっている。また、脳髄膜炎をおこした患者の場合、相対的に体温が高く、経過期間も長引く傾向にあった。そこで中医学と西洋医学の併用による治療を比較したところ、中西医併用のグループは、解熱時間の短縮と脳炎症状の軽減、さらにステロイド使用量の減少に成功したという。

 研究グループによると手足口病の邪気は「熱毒挟湿」で、気分の証が多いと見られている。病位は心・脾・肝になり、証の特徴として熱・癱・癇などが挙げられる。

 ちなみに『金匱要略』の「風引湯」は大黄・乾姜・竜骨・桂枝・甘草・牡蠣・寒水石・滑石・赤石脂・白石脂・紫石英・石膏で構成されている。主な効能は去熱瀉火・平肝熄火・鎮静安神。特にこの処方では、鉱物類の生薬が多用されていて、「潜陽」を重視している一方で、さらに乾姜や桂枝などの温系と大黄など寒系の生薬を加えている。参考までに、この系列の処方では後世の『医学哀中参西録』にある類中風に使われる鎮肝熄風湯(懐牛膝・生赭石・生竜骨・生牡蠣・生亀版・生杭芍・元参・天冬・川楝子・生麦芽・茵陳・甘草)とも関係があると言われている。(2009年1月記・1月23日の中国中医薬報に加筆・医学博士 医師 藤田 康介)

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