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糖尿病の中医学アプローチ、瘀血との関係

 中国で年々増加している糖尿病患者について、中医学の世界でも様々なアプローチを行っている。ここでは、上海で著名な老中医で、中国全国名老中医である顔徳馨教授の考え方を少しご紹介したい。
 糖尿病は、一般的に中医内科学の教科書では、「消渇病」に属している。この病機は脾の健運作用がうまくいかないところに関係があると考えることが多い。例えば、脾気が不足し、津液が上昇できず、口が渇いたりするほか、逆に脾気の上昇不能が甚だしくなって、逆に陥落するようなことがあれば、水穀精微が尿とともに体外へ排出され、尿が増えたり、尿に甘いニオイが発生したりする。また、脾虚により、胃の津液を動かすことができなければ、胃火が強まり、「消穀善飢」と呼ばれる強烈な空腹感を感じることになる。さらに、脾は四肢肌肉を司るため、脾虚により体が痩せ、倦怠感が出てくる。

 西洋医学的には、糖尿病はインスリン作用の生成・分泌の障害、あるいはインスリン作用の不足がその大きな原因と考えてられているが、中医学の場合、膵臓が五臓六腑にないことからも、考え方が根本的に違うことが分かる。しかし、顔徳馨教授はこの西洋医学における膵臓の働きは、中医学の脾の病理的変化の中に含まれるべきだと主張している。これを『脾膵同源説』と呼んでいるが、これまでの研究でも、中医学の「益気健脾法」が、血糖値を下げたり、高インスリン血症を改善し、インスリン抵抗性の治療にも有効であることが証明されつつある。

 さらに、顔徳馨教授は、糖尿病の患者で特に罹患期間が長い場合、必然的に臓腑気血の働きに影響が生じ、気血陰陽のバランスが崩れ、血の循環がスムーズに行かず、瘀血が発生しやすくなるとしている。そのため、糖尿病患者で高脂血症や血液流動性に問題が生じるのだとしている。また、瘀血は糖尿病による細小血管が関わる併発症とも結びつきが強く、例えば瘀血が水津の分布に影響を与えれば、糖尿病腎症となるし、心脈の瘀血は、糖尿病性心筋症となる。瘀血の早期導入が行われるのもこのためだ。

 こうした研究は中国でも長く行われていて、瘀血をターゲットにした各種中成薬の導入も盛んだ。顔徳馨教授らのグループも、これら理論を導入して消渇清顆粒を開発、臨床で実践されている。(2008年10月記・新民晩報より 医学博士 医師(中医学)藤田 康介

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