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膵臓がんと戦って11年、中西医併用療法でがんと共存

 西洋医学の世界でも、治療が非常に難しいとされている膵臓がん。末期となると平均の生存期間は3~6カ月といわれる。上海は中国でも膵臓がんの発生率が高いエリアの1つだ。ちなみに40年前の上海の膵臓がん発生率は1.86/10万人であったが、現在では8/10万人にまで増えている。
 そんななか、上海市のがん研究の総合病院の1つである上海市腫瘤医院では、がんとの共存という考えの元、中西医併用療法で一定の成果を上げている。この病院には末期膵臓がん患者が11年も生存しているという記録もあり、現在も更新中だ。
 上海市腫瘤医院によると、この3年間で観察した134例の膵臓がん患者のうち、1年生存率は17.5%、2年生存率は8.7%、3年生存率は7.2%になるという。
 11年間生存しているという浙江省杭州の患者は、97年に膵臓がんと診断され、当時すでに腹腔各処への転移がみられていた。手術をしたものの痛みがとれず、59歳のときに治療を放棄せざるをえなくなった。そこで、上海市腫瘤医院では中医科が中心となり、抗がん剤・放射線を使わない治療と中医弁証の併用を実行した。当時患者が主に服用した処方は「清熱化積方」で、服用後7日目で効果が出てきたという。1年後のCT検査では、がんの病巣は落ち着きをみせ、5年後からは薬の服用をほぼ停止した。11年目の現在では、1年に2~3回の定期検診を行いながら普通の日常生活を行っているという。

 膵臓がんは比較的症状が出にくく、さらに抗がん剤・放射線治療ともに効果が思わしくないことが多く、手術で切り取ることも難しいことが多い。このため中国での5年生存率は5%という状況だ。一方で、年間5~6万人の患者が発生し,最近急増しているがんの1つでもある。
そこで、上海市腫瘤医院中医科の劉魯明教授らのグループは、がんと共存しながら生存率を高める治療法の模索を行ってきた。がん患者特有の出血・痛み・咳などの症状を緩和し、病巣の縮小とがん細胞の拡散を防ぎ、病状を安定させることを目標にし,患者自身の免疫力によって、がん細胞の活動を静止させたり、長期間休止させることに一定の成果をあげている。

 中医学では、膵臓がんの患者の多くは湿・熱などの邪気が形成され、その結果気機が不調となり、脾湿困郁し、湿熱毒邪が体内に滞ることが病因であると考えられている。劉教授らのグループはこれにもとづき,清熱化積方を考え出したという。今後、アメリカの国立癌研究所などと共同研究をおこなって、膵臓がん治療へさらなる研究を続けていくようだ。(2008年8月記 医学博士・医師(中医学) 藤田 康介整理)

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