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上海の中医病院が抱える問題
上海市政府の人民大会が、いかに中医学を発展させるかをテーマに、上海市内8カ所の中医大型総合病院の医院長を集めて討論会を行った。この中には、上海中医薬大学附属竜華医院、曙光医院、岳陽医院の医院長も含まれ、活発な意見交換が行われた。
第十5カ年計画以来、上海市では中医学の発展に対して一定の財政的援助を行ってきたが、それでも中医医院の抱える問題は少なくない。まず、曙光病院の沈遠東医院長は、中医医院は生薬や中成薬のように医薬品の使用が多い一方で、医療設備が少ないため、収益を上げることが難しいとしている。とくに、価格の安い煎じ薬が多いのも特徴の一つであるが、薬の原価に加算できる割合は、規定により一般医薬品で15%、煎じ薬で25%を超えてはならないことになっており、最近ではこの割合を医療費削減のために減少させる傾向にある。そのため、中薬で収益を得ていた病院は、経営が苦しくなるという悪循環に陥るところも出てきている。さらに、中医学でも行われる手術などにかかる診療報酬も、西洋医学の基準で決められているため、西洋医学の病院よりも診療報酬が安いのが現状だ。
一方で、上海市政府の中医学へ投入する予算が中国の他省にくらべてまだ少ないと訴える。上海市中医医院の虞堅尓医院長によると、上海市が中医学に投入した予算は、北京の5分の1、中国で最も中医学が盛んな省の一つである広東省の30分の1程度に過ぎないと指摘した。
また、上海市政府も中医薬を管理する専門の部署を設立する必要があるとしている。現在、市・省クラスで中医薬を管理する部門がないのは、上海を含めて5カ所だけのようだ。全国的には、こうした部門が中医医院の管理をおこない、中医学の発展に貢献している。
最近、中国では中医薬大学を卒業した優秀な人材が、海外留学を終えて帰国してきている。そうした人材が活躍できる基盤を早急に作り上げる必要性も指摘されている。また西洋医学の発展が著しい中国の医療現場では、政府の本格的な協力なしに中医学の地位を維持していくことは難しいのも現実なのだ。(2008年6月記・上海中医薬報より・山之内 淳整理)
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