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手足口病と中医学
現在、中国では四川省で発生した大地震の影響で、手足口病関連の報道が減っているが、依然各地で症例が報告されており、散発的ながら死亡例も出ている。感染者のほとんどは6歳以下の子供で、死亡例の多くは肺炎や脳炎などの合併症によって命を落としている。これに対し、各地の中医病院では、中医学を使った治療を試みている。
最も死亡例が多く、早くから手足口病患者の報告があった安徽省阜陽市には、5月7日に中国国家中医薬管理局が、北京中医薬大学附属東方医院の周平安教授や北京地壇医院の王融冰教授、首都医科大学附属北京中医医院の鄭軍主任らを派遣して治療案などの指導にあたらせた。
こうしたなか、安徽省阜陽市人民医院と阜陽市中医院では、湖南省から応援に駆けつけた医師らとともに中医学的見地から討論を行い、病因病機については湿熱が中心で阻塞経脈し、口渇や少津・体のだるさ・煩躁などの症状がみられるとし、治療法として芳香化濁などの生薬を加えることを提案した。現場スタッフも、「中医学を応用することで、症状のコントロールに役立っている」と述べており、主には湯液と外用薬を併用した治療が行われているようだ。
安徽省衛生庁中医薬管理局も、中医学の専門家をあつめて、中医学による治療ガイドラインを定めている。
このなかでは、手足口病を「温病」と捉えており、病因は疫毒時邪・内傷湿熱蘊結・心火熾結で、病位は肺・脾・心の3つの臓が関係し、病機は、時邪疫毒に外感することで、衛表が妨げられて肺気が失宣し、その結果発熱・頭痛・体の痛み・咳などを生じるとしている。
もともと体内で湿熱がこもっているため、心経の火が盛んになり、体内・体外で拮抗し,その結果、心経の火が口や舌を侵し、脾胃の湿熱が四肢に及び疱疹ができる。また、毒邪が有効に排除されなければ、気・陰を損傷し、心悸や胸のつかえなどの症状を訴える。
予防法としては、西洋医学でもいわれている手洗いや水分補給・風通しをよくする・衛生管理に気をつける以外にも、金銀花・芦根・淡竹葉・生甘草など清熱解毒・生津化湿の生薬も有効だとしている。疱疹ができた患者に対しては、生薬の外用も薦めている。
一方で、広東省の広州でも手足口病による死者が出ており、「広東省手足口病中医薬防治方案」の検討が行われている。ここでも手足口病を温病ととらえ、患者が疫毒時邪を感受し、肺・脾・心の3つの臓が関係するとしている。初期の段階では、肺・脾の損傷が多く、庶民がよく服用する板藍根など清熱解毒の生薬は、脾・胃を逆に損傷しやすく、毒邪を感受しやすくなるため,大量に長期服用しないように呼びかけている。広東省で発生したSARSには、板藍根に一定の抑制力があったとされているが、今回の手足口病に関しては、まだこの効果は確認されていない。
広州中医薬大学第一附属医院の許華教授は、予防用の方剤として,金銀花6グラム、大青葉6グラム、錦茵陳15グラム、生薏苡仁10グラム、生甘草3グラムの処方を紹介している。生薬の量は3~6歳で上記の量、3歳未満の場合は減量し、6歳以上なら量を増やして服用する。そのほか、手足口病患者に対する食療方として、ニンジン1本、白茅根15グラム、竹蔗1節、生薏苡仁15グラムをお茶代わりに服用するなどの方法も紹介している。
広東省の中成薬を製造する製薬会社では、清熱解毒剤の売り上げが急増しており、特に広東省茂名市や仏山市では在庫が底をついているところもあるという(『羊城晩報』より)。
手足口病は毎年初夏前後に中国で流行し、2007年も全国で8.3万例(うち死者17例)発生している。今年はそれを上回るペースで患者数が増えているため、中国各地で対策が強化されている。(2008年5月記・山之内 淳)
関連情報:上海市衛生局が発表した『上海中医薬防治手足口病指南』
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