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伝承される澳門の涼茶文化


 ポルトガルから中国に返還された澳門では、今でも涼茶文化が庶民の間で伝承されてきている。広東省や澳門、香港ではその特有の暑いジメジメした亜熱帯の気候のため、生薬をベースに作った涼茶が広く飲用されている。主な効能は清熱解毒・生津止渇などで、昨今では健康飲料としても注目を集めてきた。味は生薬の苦さがほどよく残るものの、全体的には甘いものが多く飲みやすい。
 1958年に編纂された『澳門年鑑』では、「生薬涼茶」という項目があり、ここでは老舗の涼茶店28店舗が紹介されている。そのほかにも、露店商なども100あまりあったようだ。澳門の中で有名な涼茶店として、「大有益涼茶」の看板を掲げる「顕記涼茶店」がある。雅な内装と、ラジオ放送を流してみたり、新聞・雑誌を無料で読ませるなど、その当時としては珍しいサービスが行われていた。

 露店でも涼茶は提供されている。大きな涼茶用のお椀にガラスのフタをして陳列していた。ガラスのフタが結露していれば、その涼茶は新鮮であることを示していた。今では見られなくなった風物詩でもある。

 澳門博物館に行くと、今でも当時の涼茶業の伝統が復元され、リヤカーに商売道具を乗せて街中を行商した様子が再現されている。

 澳門の涼茶は数百年の歴史を持っている。代表的な処方だけでも30種類はあると見られており、今でもそのうち20種類は巷で売られている。主要な効能は、苦寒去火除湿・甘涼清熱除鬱・甘涼清熱潤燥の3種に分類される。単味の生薬もあれば、複合方剤もある。

 医療における生薬の処方と同じで、多ければよいというものではない。一般に使われる生薬は8種類~10種類ほどで、価格は3~30マカオドル。異なった季節や体調で使われる生薬は異なっており、澳門人の多くは常識として知っていることが多い。

 涼茶は中国政府も保護の方向で動き出していて、2006年5月25日には、中国で初めての国家クラスの無形文化遺産に指定された。そして、華南エリアでは一大産業にまで発展している。

 今では、涼茶の工場生産化も行われ、殺菌消毒システムを導入した近代的な施設が投入されている。海外でも売られるようになり、特に華僑の多い東南アジアなどで人気を呼んでいる。(2007年8月記 中国中医薬報山之内 淳

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