―世界中医薬学会連合会副主席兼秘書長・李振吉教授が語る7つの特徴
世界中医薬学会連合会副主席兼秘書長である李振吉教授は,先日,本紙の取材を受け「現在,中医薬は国際進出の勢いが非常に盛んであり,中医薬の海外における発展には以下のような7つの特徴がある」と語った。
①海外の中国人中医薬従事者の数は絶えず増加の傾向
この数年間,海外における中医薬の発展に伴い,海外での中国人中医薬従事者も絶えず増え続けている。イギリスの中医薬従事者のうち,中国の中医薬大学の卒業生は,1993年の200人から昨年の1,000人と大幅な増加をみせた。李教授は「現在,海外における中国人中医薬従事者の数は,およそ30万~50万人にものぼるであろうと予測する人もいる」と語った。
②診療所の急速な普及
海外では,現在,中医の診療は基本的に診療所で行われており,入院施設を備えている病院での中医診療は非常に少ない。それではその診療所はどの程度まで普及しているのであろうか。人口約5,000万人のイギリスでは,現在,約3,000カ所の中医・針灸の診療所がある。李教授は「私もはじめはこの数字を信じられなかった。しかし,昨年カナダで1週間考察をした結果,人口100万人のバンクーバーだけでも,1,000人もの中医師・針灸師が働いていることがわかった。そのなかで中国の本科卒業生は250人いた」と語った。また,オーストラリアの人口は1,800~2,000万人であるが,現在2,000カ所以上の中医・針灸の診療所があるという。
さらに李教授は「考察の結果,ヨーロッパのフランス・ドイツ・スペイン・イタリア・オランダなどの国では,およそ1万5千人に1カ所の割合で中医・針灸の診療所がある計算になる。中医薬は海外ではヨーロッパでの発展がもっとも速い。非常に興味深いことは,中国では貧しく開発が遅れている地方ほど中医の「1本の針と一掴みの生薬」を求めるという傾向があるが,海外ではまったく反対で,豊かな国ほど中医の発展が速いという現象がみられる」とも語った。
③教育機関の急速な普及
1999~2003年まで,中国と海外の国々との共同事業項目のなかで,教育関係の項目は約38~40%を占めている。現在,海外における中医薬教育機関の発展も,非常に大きな伸びをみせている。
李教授は「私が知る限りでも,現在海外の7つの国立大学で中医学部または中医専門コースを設けている。この7つの大学とは,オーストラリアでは王立メルボルン工科大学・シドニー科学技術大学など4カ所,タイが2カ所とイギリスが1カ所。これらの大学の中医学部の学生募集は国家計画の1つであり,学生には卒業後に正規の資格が与えられている。また,国によっては私立の中医薬大学を設立しているところもある。例えば,オーストリアの時珍中医大学は国の教育庁が認可した正式な教育機関であり,200人の学生を擁している。さらに教育普及養成班もあり,ここには600人の学生が在学している。ヨーロッパでは,例えば中医・針灸の診療所に5つの診察室があれば,患者の診察に使用するのはそのうちの2つのみで,その他3室は中医薬学生の養成のために使われている。養成班は週末クラス・夜間クラスなどに分かれている」と語った。
④科学技術協力に良好な兆がみられる
中医の海外での普及の行程は,大まかに3段階に分けられる。第1段階は,まず中医の医療方法を海外で用いる。海外において針灸や中薬を用い疾患を治癒させることで,海外の人たちははじめて中医薬を信用するようになる。第2段階は,海外の人たちが針灸師や中医師の収入が高いことを知り,彼らも中医薬を勉強するようになる。第3段階としては,海外で長期にわたり中医薬を臨床応用するようになると,その治療効果やメカニズムを研究するようになるということである。実際,中医薬の科学研究というのは,中医薬の海外普及の第3段階に当たる。
現在,海外での中医薬の科学研究の分野では,すでに非常に良好な兆しがみえてきている。中国と海外の中医薬科学研究分野の共同研究項目は非常に多い。この傾向は,特にアメリカにおいて顕著である。なぜなら,アメリカのハーバード大学を含む中医薬研究人員のなかには,中国大陸から渡った中医薬大学卒業の本科生・大学院生や,中国内において中医薬科学研究を行っている大学教授が非常にたくさんいるからである。
⑤製品の海外での販売量も安定した増加傾向にある
この数年間で,中国の中医薬製品の発展は非常に速く,さらに販売量も安定した伸びをみせている。まだ中国において中医薬の現代化が進んでいなかった90年代初頭では,中医薬製品の総販売額は200億元程度であったが,2004年には1,200億元にまで上った。販売される製品には中薬の内服液・錠剤・顆粒・丸剤などの中成薬や保健薬が含まれ,化粧品や添加剤は含まれていない。中薬製品の輸出額は,数年前までは4億~5億ドル前後を行き来していたが,昨年は8.3億ドルに達した。
⑥WHOの注目と支持を得る
WHOが中医薬に注目し支持をしていることの表れとして,2つの象徴的な出来事がある。1つ目は,2001年にWHO西太平洋地区事務所が打ち立てた地区クラスの伝統医薬発展計画は,草案を起こす段階でわが国が参与したものであるということ。2つ目は,2003年にジュネーブで行われたWHO総本部会議の席上においても,伝統医学計画が制定されたということである。この数年間WHOは常に中医薬に強い関心を示しており,積極的に発展を促してきた。そしてさらに中医薬の標準化の確立を非常に重視している。
⑦各国政府も中医薬を重視し始める
これまで,各国政府は特に中医薬の存在を重視していたわけではなかった。しかし,多くの国の政府は,この数年間に自国で中医薬が発展し始めたことや,その発展が医療保険の大きな負担を解決してくれるため,国民からも広く受け入れられ,中医薬の発展が結果として中医薬従事者人員を毎年少しずつ増やすことになっている事実を目の当たりにした。このため各国政府は,中医薬はすでに管理しなければならない段階に入ったと感じ,これに注目し始めたのである。
李教授は「この点に関して,私は2つの非常にはっきりとした事実が存在していると考えている。1つは,わが国の衛生部が他国の衛生部と取り交わした衛生協議のうち,70以上の国との協議内容が中医薬に及んでおり,これ以外にも二十数カ国の政府が,直接わが国の中医薬管理局との中医薬共同協議に調印しているということである。もう1つは,現在多くの国において,すでに中医薬に対する法令の制定が進められ,厳しく管理し始めたということである。政府が国内の中医薬事業を法により管理し,合法的な地位を与えるということは,その国の中医薬の発展を促進することにつながる」と語った。
出典:『中国中医薬報』