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「中医学に強い広東省を」-会議での鄧鉄涛教授のコメント 

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 広州の大手夕刊紙、「羊城晩報」に「中医学に強い広東省建設のための会議」における鄧鉄涛教授のコメントが掲載されていた。鄧鉄涛教授は『中医臨床』98号でインタビューとして登場していただいている。今年で89歳を迎えられる鄧鉄涛教授は、中国における中医学を盛り上げるために、今でも中国全国を飛び回っておられる。
 今回の夕刊紙に掲載されたコメントでは、中医学に強い広東省を作るために、人材育成の必要性と研究の強化、そして「産業-教育-研究」の一体化を目指すべきだと主張している。
 
 新中国が建国される前の中国の人口は4.5億人であったが、その当時の中医師の数は30万人であった。現在、中国の人口は13億人であるのに対して、中医師の数は27万人で、その比率が大幅に減ったことがわかる。では、医師の数がへった一方で、そのレベルは上がったか?確かに医師のもつ「資格」は増えたが、レベルが上がったとは決していえない。さらに、西洋医学による侵食が著しく、中医病院の中には「中」の字をとってしまったものもある。やはり現在の中国でも、西洋医学重視で中医学軽視の風潮が否定できない。
 
 では、なにがそうさせたか?ある大学の教授が言うには、現在の研究生レベルの学生の中にでも、面接試験で20あまりの方剤の処方成分を暗誦させてもできない学生がいるという。方剤の中身を暗誦することは医師にとっては武器である。20あまりの武器さえなければ、これは中医といえるだろうか?
 たとえば感染症の患者をみたら、反射的に清熱解毒の生薬を処方する。高血圧とわかれば、有無をいわさず清肝関係の生薬を処方する。これには弁証のかけらも見られない。学生たちは、在学中に西洋医学を重点的に学習したあまり、中医学に対して自信が持てない証拠ではないだろうか?

 そして、さらに経済的問題に関しても考える必要がある。現在の西洋医学を中心として病院の管理法では、中医学に携わる医師は経済的にも苦しいという現実がある。たとえば感冒の患者に生薬を処方しても150円~200円程度にしかならず、西洋医学の600円~1000円程度と比較しても大きな差だ。経済的収入が、西洋医学と比較すると大きく劣るのも、中医学の発展の妨げになっている。
 
 人材育成に関して、鄧鉄涛教授をはじめとする専門家たちは広州でさまざまな試みを行っている。西洋医学になじんだ学生たちに、いかに中医学に関心を持ってもらうかが大きな課題だ。
 広東省中医院では、鄧鉄涛教授の協力で全国から15人の老中医とコンタクトをとり、優秀な医師を選抜して、老中医1人につき2人の医師をつけて経験を学習させている。たんに話を聞くだけでなく、実際に臨床に出て難病治療に中医学でもって挑戦するこの試みは、若い医師たちに大きな感動と影響を与えている。

 鄧鉄涛教授は自分の経験を語っておられる。最近、心臓内科のある患者は、重度の心臓病で、心臓の弁が脱落して中風を併発、さらに高熱が出て重篤な状態となり、患者の家族は治療を放棄しようとした。しかし、我々はあきらめず、中医学でもって治療をおこなったところ、熱も下がり、中風の症状も大きく改善した。学生たちはそういう実例を目のあたりにして、中医学に対しての自信と信頼を持つようになるのだ、と訴えている。机上の空論ではなく、臨床ありきの中医学なのである。

 こうやって勉強してきた医師たちの下には、以前よりも増して多くの患者が訪れるようになるのである。(写真は左が鄧鉄涛教授、右が広州中医薬大学校長の徐志偉教授)
  

出典:2005年9月27日 羊城晩報 中医特集号 より整理


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