【読みどころ・その1】p2~9
| エキス剤をより上手く活用するために。 |
【巻頭インタビュー】西洋医学と漢方医学の架け橋に(渡邊善一郎)
1970年代以降,日本に現代中医学が導入されてから40~50年になろうとしている。現在の日本の臨床で中医学はどう活かされているのか。日本全国で中医学を実践する医師を『中医臨床』編集長が訪問して,「中医学との出合い」「中医学の魅力」「臨床応用の実際」などについて話をうかがい,日本の中医学の実態に迫る企画。第17回は,山梨で富士ニコニコクリニックを開業し,中医学に軸足を置いた漢方診療を行っている渡邊善一郎先生にお話をうかがう。渡邊先生は,「すべての疾患に漢方薬は有効で,漢方を積極的に取り入れた診療が望まれる」と語り,最近では西洋医学との架け橋となるよう,煎じ薬の代用ができる使いやすい漢方エキス剤の組み合わせの効果を再確認しているという。
【読みどころ・その2】p52~58
| 中国の地域流派探訪・旴江医学。 |
【旴江医学リポート】江西中医薬大学・何暁暉教授 旴江医学を語る(何暁暉)
今年4月に現地取材した江西省の地域流派・旴江(くこう)医学のリポートの第3弾。旴江医学に詳しい何暁暉教授に,旴江医学の概要や特徴についてお話をうかがった。「旴江医学」という名称自体,日本ではほとんど知られていないが,江戸期には旴江出身の医家・龔廷賢が著した『万病回春』がベストセラーになり,日本では知らず知らずのうちに旴江医学の影響を受けている。旴江医学は日本との縁も深い。旴江医学は,名医を多く輩出し,著作の幅・量ともに豊富で,連綿と継続する伝統性があり,鍼灸・方書に優れ,新しい方法論と名方を生み出してきた。紙幅の都合で,そのすべてを紹介することはできないが,代表的なものをいくつかピックアップして紹介する。
【読みどころ・その3】p74~83
| 緻密な条文比較によって目からウロコの結論を導く。 |
【杏林春秋】宋以前『傷寒論』考:還魂湯と三拗湯と麻黄湯(岡田研吉)
『金匱要略』の還魂湯(麻黄・杏仁・甘草)は,『和剤局方』の三拗湯(麻黄・杏仁・甘草・生姜)に受け継がれ,外感病や咳嗽処方に仕上がっている。ここに桂枝を加えれば『宋板傷寒論』の麻黄湯(麻黄・杏仁・甘草・桂枝)に一致する。そこで筆者は,麻黄湯の来源は還魂湯と仮定して諸資料の整理を試みた。筆者は「純麻黄剤に,時代が下って桂枝が出合って麻黄湯が成立した」と推定し,交雑する前の純系処方である『肘後方』の張仲景諸要方への回帰が三拗湯であると述べる。また論文のなかでは,麻黄の使用部位(去根節か去節か)の検討から,「太医局vs校正医書局」の構図を浮かび上がらせており興味深い。
【読みどころ・その4】p144~148
| 興味深い鍼灸症例。 |
【鍼灸症例】重度の腰椎椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療の一例(遠藤美穂)
椎間板ヘルニアは,鍼灸院では馴染み深い疾患である。医療機関の治療では疼痛コントロールが不十分で,疼痛除去を目標に鍼灸治療が奏効するケースも多い。本症例(20代男性)は,疼痛の軽減はもちろん,MRI検査においても画像上で腰部椎間板ヘルニアの消退が認められたものである。筆者は,熱化した瘀血を取り除き,気血を通じさせることによって鎮痛を目指し,さらに線維輪の断裂部より突出した髄核を,湿邪の性質を有する病的な物質として認識して化湿の方法を用いて治療した。筆者は,治療の難易度が高いとされる病態で完治を目指すには,医療における異職種間の協働や時宜に合わせた細やかな見きわめが必要不可欠であり,最も重要なのは患者の惜しみない協力であると強調する。本症例はそれらの条件が満たされた例であった。
『中医臨床』通巻158号(Vol.40-No.3)はこちら