【読みどころ・その1】p2~9
| 豊富な経験に裏打ちされた漢方治療。 |
【巻頭インタビュー】私のアトピー診療スタイル(牧野健司)
1970年以降,日本に現代中医学が導入されてから40~50年になろうとしている。現在の日本の臨床で中医学はどう活かされているのか。日本全国で中医学を実践する医師を『中医臨床』編集長が訪問して,「中医学との出合い」「中医学の魅力」「臨床応用の実際」などについてお話をうかがい,日本の中医学の実態に迫る企画。第15回は,熊本で牧野けんじ皮ふ科医院を開業し,皮膚疾患を中心に漢方治療を行っている牧野健司先生にお話をうかがう。牧野先生は,アトピーでは乾燥が主体になるため滋陰と補血が基本になり,古くなってシミが強くなれば駆瘀血剤として桂枝茯苓丸,補脾も大事なので補中益気湯など,清熱が必要なときは苦くない清熱薬として白虎湯(エキスなら白虎加人参湯)をよく使うという。
【読みどころ・その2】p56~62
| 汎用性のある方剤分類による方剤学。 |
【新・方剤学~方剤分類と方意~】解表剤〈5〉(加島雅之)
次代の漢方界を担う新進気鋭の医師・加島雅之先生が汎用性のある独自の方剤分類を提案する新しい「方剤学」の連載。今回は解表剤の続きで,陰暑の基本方剤であり,湿邪が中心の風寒湿邪の表証に用いる代表方剤である香需散(『和剤局方』),暑邪で内熱があるが,悪寒があり無汗の表証を呈している場合に使用する新加香薷飲(『温病条弁』),表証を治療する生薬が万遍なく配合されており,病態に応じて積極的な加減が求められる九味羗活湯(『此事難知』),温和な解表剤であるため,その他の解表剤のように厳密な適応がなく,幅広く使用することができる葱豉湯(『肘後備急方』)を取り上げる。
【読みどころ・その3】p130~137
| 針麻酔を振り返る。 |
【回顧 針麻酔】針麻酔による鎮痛効果の研究〈後篇〉(韓済生)
中国の著名な神経生理学者であり,中国科学院の院士でもある韓済生教授(現在,北京大学神経生物学部教授)が,「針麻酔」を振り返る論文の後篇。今号では,「針麻酔による鎮痛作用のメカニズムについての検討」の続きとして,①刺針療法とニューロモデュレーションとの共通点と差異,②電気針とTEAS設備の特性,③電気針の通電時間と頻度,④刺針効果の個人差,⑤対照グループを設定することの意味を取り上げるほか,針麻酔が補助療法の選択肢の一つとして有益であることを実例をあげて説明する。また針麻酔の長所と短所をあげたうえで,今後の展望についても言及し,針麻酔の意義と可能性を問う。
【読みどころ・その4】p146~150
| 現代中医鍼灸が日本鍼灸に寄与できるもの。 |
【近況雑感】第46回日本伝統鍼灸学会学術大会に参加して(浅川要)
日本鍼灸のアイデンティティを問うシンポジウムが,昨年11月に開催された第46回日本伝統鍼灸学会学術大会において行われた。そこでシンポジストの一人となったのが浅川要先生である。浅川先生は清末から民国時代,さらに承淡安の事績を振り返ったうえで,1950年代から60年代にかけて『黄帝内経』『難経』『鍼灸甲乙経』『千金要方』『銅人腧穴鍼灸図型』など歴代の鍼灸文献を総括し,系統的に分析して「臓腑・気血津液・経絡弁証」が創り出されたと述べる。浅川先生はその象徴として1964年に出版された程莘農著『中国針灸学』をあげる。そして,浅川先生は,「われわれが『内経医学』にもとづき日本の状況に合わせた新たな日本鍼灸医学,とりわけ鍼灸治療学を創り出そうとするならば,『黄帝内経』はじめ歴代の中国鍼灸書を踏まえて編み出された中国創成期のこの『弁証論治』を導入することが,最善の策ではないか」と結ぶ。
『中医臨床』通巻156号(Vol.40-No.1)はこちら