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通巻154号(Vol.39-No.3)◇読みどころ


 
【読みどころ・その1】p2~7
読みどころ伝統医学の分類が「国際疾病分類」に加わる。
【時流を読む】ICD-11と伝統医学の病証(東郷俊宏)

去る6月18日,世界保健機関(WHO)より国際疾病分類第11版(ICD-11)が公表された。28年ぶりの改定となる今回の改定では,死因統計および各種健康情報の統計の集計を目的に使用される「国際疾病分類」に,伝統医学の疾病分類が導入された点が注目される。正式承認は,来年5月のWHO総会で決定されるが,今回のリリースに合わせて,この問題に詳しい東郷俊宏先生に今回の公表に至ったプロセスを紹介していただくとともに,ICDに伝統医学の分類を導入する意義や問題点について自身の考えを記していただいた。 今回,伝統医学が国際分類に導入されるということで,主体となる日本・中国・韓国は団結したものの,各国で行われる伝統医学の内容に違いがあるほか,医療環境も異なるため,それぞれ譲れないものがあり,標準化の作業は困難をきわめたようである。 日本の臨床家が今回の改定のメリットを実感することは難しいかもしれないが,これを契機に国内で伝統医学の病証分類はどうあるべきか,議論が進められることが期待される。



  【読みどころ・その2】p62~70
読みどころ難治性疾患の弁証論治。
【中医診察ナビゲーション】虚労タイプの多汗症の治療(丁元慶)

診察風景を再現し,医者の思考過程を丁寧に解説する連載。今回は盗汗を訴える78歳の高齢女性が診察にやって来た。丁医師は,夜間の盗汗・飲食量の減少・短期間での顕著な体重減少・精神不振・睡眠障害などから,この患者を汗証・虚労と診断した。 高齢であることから正虚をベースにしながら,飲食量の減少によって営衛の生化不足を来し衛外不固・精気不充の状態となり,さらに多汗によって陰虧も招いたものである。それに対し丁医師は,補益中焦・益気固摂で治療する方針をたて,人参・黄耆・炙甘草の3薬で大補元気・益気健脾・建中培元を行い,さらに麦門冬・熟地黄を用いて益陰塡精・養血安神を行った。また酸棗仁・当帰を用いて養血補虚・養心安神とし,さらに陳皮・蘇梗・砂仁で和胃理気を行うことで食欲を増進させることも忘れない。 病因病機の解説だけでなく,方薬の解説も丁寧に行っているのでぜひ参考にしてもらいたい。



  【読みどころ・その3】p72~77
読みどころ近代中医史に波紋。
【杏林春秋】『中国医学源流論』本当の著者は誰か?(祖述憲)

『中国医学源流論』という本をご存じだろうか。1935年,上海で出版された中国医学史の記念碑的著作である。著者は謝観。謝観(1880-1950)は,孟河医派の流れを汲む近代の代表的な中医であるとともに,中医教育者・医史研究者・中医文献研究者でもあった。上海の商務印書館で地理・医学書の編纂にもあたっており,謝観の主編した『中国医学大辞典』(1921年刊)が医学界に与えた影響はきわめて大きい。『中国医学源流論』も謝観の代表的著書の一冊である。 この『中国医学源流論』とほとんど同じ内容の本がすでに存在していた――。その本とは歴史学者・呂思勉が書いた『医籍知津』である。それに気づいたのが本稿の著者・祖述憲氏であり,彼は両書の内容を丹念に比較してその問題を指摘した。 ここに書かれていることが事実であれば,剽窃の謗りは免れないように思われる。しかし,もし『中国医学源流論』が『医籍知津』として世に出ていれば,果たして「中国医学史の記念碑的著作」といえる影響力をもったであろうか。



  【読みどころ・その4】p152~159
読みどころなぜ禁鍼穴が設けられたのか?
【近況雑感】禁鍼穴(浅川要)

歴代の鍼灸書には禁鍼穴とされるツボが明記されている。著者自身は,刺鍼法に工夫が必要なツボはあるものの十四経穴のなかでは神闕と乳中以外に絶対的禁鍼穴はないと考えているという。それではなぜ歴代の鍼灸書では禁鍼穴が設けられたのであろうか? 本稿では,まず『鍼灸甲乙経』『銅人腧穴鍼灸図経』のほか,明代の禁鍼穴歌,そして現代中医鍼灸における禁鍼穴を振り返り,最後になぜ禁鍼穴が設けられたのかについて著者自身の見解を示す。そして,いたずらに禁鍼穴を設けることは,そのツボのもつ効能効果の可能性を狭めることにつながるのではないかと指摘する。もちろん,ツボの解剖学的状況や治療効果に見合った浅刺・斜刺・平刺といった刺鍼法があるので,それを無視して刺鍼することは厳に慎まなければならない。各出典の一覧は資料としても役立つ。


中医臨床 通巻154号(Vol.39-No.3)特集/傷寒と温病の統一 ~紹派傷寒~

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