【読みどころ・その1】p2~9
| 古方と中医学をともに活かして。 |
【巻頭インタビュー】患者さんに寄り添う漢方(峯尚志)
今回は,大阪茨木市で漢方を専門にして診療する峯尚志先生にお話をうかがう。峯先生は最初,関西を代表する漢方家の一人,三谷和合先生に師事して日本漢方を学んだ。その後,中国の上海中医薬大学の短期留学を経て,西日本各地で漢方専門外来を担当し,2004年から茨木市で漢方診療を専門にしたクリニックを開設し現在に至る。インタビューでは前半に師・三谷和合先生とのエピソードについて,後半では峯先生が最近取り組んでいるという「一味の生薬から処方を考える」ことについてお話をうかがった。とりわけ,三谷和合先生の残された言葉が印象に残った。たとえば患者さんに対しては「病気は自分で治すもんや」と言って命の自立を求めたといわれる。また「漢方を使うから漢方医なんやないで,その病人さんに一番大事なもんを選べるのがほんまもんの漢方医や」「漢方使いになるな,漢方医になれ」など,その一言一言が心にささる。
【読みどころ・その2】p98~107
| 日本の漢方薬局を訪ねる。 |
【インタビュー】漢方・子宝相談のすすめ方(岡理絵・猪越英明)
埼玉県深谷市で大正2年に創業し,地域に密着して薬局を営んできた大慶堂。一般薬の販売や処方箋業務に加え,在宅サービスや漢方薬局をメインとする相談業務など,グループとしてその役割を発展させてきた。そんなグループ内で漢方を専門に2011年にリニューアルしたのが大慶堂漢方薬局。そこで「子宝相談」に力を入れ不妊カウンセラーとして評判を呼んでいるのが岡理絵先生である。今回も東西薬局グループ代表・猪越英明先生が岡先生のもとを訪れ,不妊を中心にお話をうかがった。不妊の漢方治療では補血薬・補腎薬・活血薬をベースに,さらに安神薬や理気薬を組み合わせることになるが,これらを各人の状況に合わせて出し入れしていくことがポイントになる。また岡先生は,妊娠力をアップする身体づくりの重要性を強調し,さらに料理を手作りすることで自分の体調を見つめる時間を作って欲しいと述べる。
【読みどころ・その3】p114~123
| 乾くんシリーズ,新連載・スタート! |
乾くんの教えて!望・聞・問・切診(石井尊子)
あの「乾くん」が『中医臨床』に帰ってきた。前作は中薬学をテーマに,中薬の性能・炮製技術・産地と採集などの事柄から中薬学の面白さを再発見していこうとしたものだったが,今度は中医診断学の四診をテーマにしたストーリー。しかも,一般的な漫画と同様にすべてコマ割りしてストーリー性をもたせた作品になっている。明代の架空の医家・姜景楽がタイムスリップして現代に降り立ち,主人公の姜乾と出会い,弟子として迎え入れて四診を教えることになるというのが大きな流れ。前作に引き続きお父さんやお母さん,桂肉造らが登場するほか,新しいキャラクターも登場して,面白おかしく四診を学んでいく。
【読みどころ・その4】p140~145
| 日本版経脈病証学説の確立を。 |
【特別インタビュー】経絡経穴の認識と臨床への応用(後篇)(篠原昭二)
経絡経穴学を専門にしながら中医学にも造詣が深く,また第二次日本経穴委員会副委員長としてWHO(WPRO)による国際標準経穴学の編集作業にも取り組んでこられた篠原昭二先生へのインタビューの後篇。今号では,篠原先生が最近取り組んでいる経脈病証を整理する試みをはじめ,経絡経穴の今後の教育についてうかがった内容を掲載する。病はおよそ臓腑病・経脈病・経筋病の3つに分けられるが,実際にはそれらを厳密に区別することは難しい。経脈の異常でも時間の経過とともに臓腑病に波及するし,臓腑病も経脈・経筋の病に発展するからである。そこで,篠原先生は経脈の病証の考え方をメインに据えて,それが臓腑に波及した場合,経脈に留まった場合,経筋病であった場合に起こる症状群や四診情報について整理し,『霊枢』経脈篇の是動病・所生病を越えた日本版経脈病証学説の確立を目指す。
『中医臨床』通巻153号(Vol.39-No.2)はこちら