【読みどころ・その1】p2~13
| 『医学衷中参西録』の魅力と活かし方。 |
【巻頭インタビュー】『医学衷中参西録』を読む(池尻研治)
清末民国代の名医・張錫純の『医学衷中参西録』の全訳(西洋薬の解説を除く)を終え,先頃,
全3冊シリーズを上梓し終えた池尻研治先生にお話をうかがった。池尻先生は「『医学衷中参西録』の魅力は,古代から使われてきた有名な方剤を考察し,これを加減してその根拠を述べ,たとえ古典の記載でもすべてを信用するなと戒めている張錫純の臨床家としての姿勢です。特に症例が豊富で,どれもが空論ではなく具体的に記された症例の裏付けがあり,張錫純が医師として考え悩み為したことが生き生きと記されています」と語る。また張錫純が創製した処方は数多く,『医学衷中参西録』において各処方について懇切丁寧な解説がなされているが,インタビューではそうした張錫純の処方を池尻先生自らが用いた症例も交えながらお話いただいた。
【読みどころ・その2】p48~53
| 銀座煎じ研究会・症例カンファレンス。 |
顔面皮膚炎および易感冒・易疲労(田中耕一郎ほか)
現在の日本では漢方エキス製剤が臨床現場の主役を占めているが,「東洋医学そのものの専門性の継承,研鑽は必要で,最も力量の差が出るのが,煎じの処方である」と,著者らは言う。煎じの処方では,生薬の組み合わせは無数に存在し,その技術は標準化されているわけではなく,実際には「師匠」から学ぶことが多いため,生薬の組み合わせ方は各施設によってそれぞれ特徴が現れる。そこで,このたび,異なる施設に所属するメンバーが集い,各施設の症例を持ち寄りカンファレンスを行うことになった。誌面ではその活動の一端を示す。カンファレンスの目的は,各施設で出されている処方の特徴を互いに学び,率直な議論を交えることで,より洗練された処方の組み立てを習得していくことにあるという。第1回は顔面皮膚炎と易感冒・易疲労の2症例を取り上げる。
【読みどころ・その3】p128~134
| 【特別インタビュー】経絡とは,経穴とは。 |
経絡経穴の認識と臨床への応用(前篇)(篠原昭二)
前号(151号)では日本の経穴委員会の代表として経絡経穴分野をリードしてこられた形井秀一先生(筑波技術大学)に,経絡経穴の教育の現状と未来についてお話をうかがったインタビューを掲載した。今号では,経絡経穴学を専門にしながら中医学にも造詣が深く,また第二次日本経穴委員会副委員長としてWHO(WPRO)による国際標準経穴学の編集作業にも取り組んでこられた篠原昭二先生に,経絡経穴の認識や教育の現状,さらに最近の取り組みについてお話をうかがった。篠原先生の経絡経穴の認識は,ご自身の経筋研究における発見と軌を一にして深まってゆく。また教育面においては経脈と臓腑とのかかわりの理解を深めていけば面白い授業が展開できるのではないかと話す。前後2回に分けて紹介する。
【読みどころ・その4】p136~142
| 中国取材・浙江省に息づく家伝の鍼灸流派。 |
阮氏鍼灸の学術思想の特徴とその継承(阮少南・阮歩青)
浙江省の省都であり中国八大古都の一つである杭州。南宋時代,この地に首都(臨安)が置かれ,13世紀には世界最大の都市と称されるまでに発展した。ここに浙江省を代表する鍼灸流派の一つがあることを知り,取材を申し込んだ。「阮氏鍼灸」と呼ばれる家伝の鍼灸流派で,すでに9代に渡って継承されており,その継承人は北京・紹興・杭州など各地に広がるという。今回,お話をうかがうことができたのは,7代目の阮少南先生(86歳)と8代目の阮歩青先生(63歳)親子である。阮少南先生は,伝統的な中医学と現代医学とを結び付けた中西医結合の弁証論治を提唱し,さらに鍼・薬をともに用いることを強調して,刺鍼における刺法と補瀉を重視する。承淡安から啓発を受け,家伝の鍼灸に中西医結合という新しい方法論を組み合わせて「創新」を果たした阮少南先生。その鍼灸は息子からさらに孫へと引き継がれてゆく。
『中医臨床』通巻152号(Vol.39-No.1)はこちら