【読みどころ・その1】p130~139
| 日本では経絡経穴をどのように教育してきたのか。 |
経絡経穴の教育の現状と未来(形井秀一)
鍼灸学校で使用されている「経絡経穴」の教科書には,なぜ「主治」の記載が欠けているのか。常々考えてきた疑問であった。主治を欠けば学生は習った経穴をなにに用いるのかがわからないまま,単に解剖学的位置を暗記するだけになってしまうからだ。また教科書には経脈の流注は記載されているものの,絡脈や経別が省かれているため,学生は経絡流注の全貌を知ることができない。そこで,日本の経穴委員会の代表として,経絡・経穴分野をリードしてこられた形井秀一氏に,日本の鍼灸教育では,なぜ経絡経穴はこのように教えられてきたのか,さらに今後どう教育されていくべきとお考えなのかをうかがった。そこからは,明治以降,時代背景の影響を受けながら日本の鍼灸教育が行われてきた姿が浮かんできた。
【読みどころ・その2】p151~159
| 各経脈はどのようにつながっているのか。
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十二経の接続(浅川要)
手の太陰肺経から始まり身体を3巡している十二経脈の接続には,およそ①陰経と陽経の接続,②陰経と陰経の接続,③陽経と陽経の接続の3つのパターンがある。本稿ではそれぞれのパターンの接続において,いくつかの疑問を呈しつつ,筆者の見解を述べてゆく。
たとえば,①のパターンでは,太陰経と陽明経,厥陰経と少陽経は手足とも分支が本経に接続する形になっているが,少陰経と太陽経は本経が本経に接続する形になっているのはなぜか? ②のパターンでは,手の三陰経と足の三陰経はすべて胸部で接続するが,日本の鍼灸学校の教科書『新編 経絡経穴概論』では「肝から分かれた支脈は,横隔膜を貫いて肺を通って,中焦に至り,手の太陰肺経とつながる」となっているのはなぜか? などでえある。その背景には滑寿の『十四経発揮』の影響が見えてくる。
【読みどころ・その3】p98~105
| ニッポンの漢方薬局を訪ねる。 |
堀江薬局:子宝相談で評判の漢方薬局
なにが人を引きつけるのか。(堀江昭佳・猪越英明)
日本全国で中医学をベースにした特色溢れる薬局を紹介する企画。ナビゲーターは東京都内で漢方薬局を展開する東西薬局グループ代表の猪越英明氏。今回は,出雲大社の表参道で,大正13年から続く堀江薬局を訪問。同薬局は現在,出雲市と松江市で3店舗を展開する。2012年にリニューアルされた本店の「艸楽(そうらく)」は,和風モダンな外観だけでなく,漢方薬が陳列されていない様子から,いわゆる「漢方薬局」の雰囲気は感じられず,とにかくオシャレ。店内にはオリジナルの薬膳茶や地元雑貨が並び,出雲大社を訪れる観光客が引きも切らず詰めかける。オーナーの堀江昭佳氏は,子宝相談で評判の婦人科専門の漢方薬剤師。「新規の相談は断っている」というほどの人気で,好評を博す漢方薬局の秘密を探った。
【読みどころ・その4】p38~44
| 中国取材・新安程氏医派の継承者。 |
新安程氏医派の系譜とその学術思想(程剣峰)
新安とは現在の安徽省南端で,江西省や浙江省との境界に位置する地域名であり,歙県(きゅうけん)・休寧・黟県(いけん)・績渓・祁門・婺源(ぶげん)の6つの県からなる。その1つ,婺源(現在の江西省婺源県)に300年以上続く「新安程氏医派」と呼ばれる医学流派がある。近代の名医で,上海中医学院(現在の上海中医薬大学)の初代院長を務めた程門雪を輩出した流派である。
このたび,新安6県の1つである休寧県(安徽省黄山市)で,新安程氏医派を継承する人物がいることを知り取材した。継承するのは薬舗「沛隆堂」の程剣峰氏である。彼はいわゆる大学教育を経ていない,家伝の医学を基礎に置く民間中医。新安程氏医派の歴史や学術の特徴をはじめ,現代中医学の草創期の重要人物・程門雪のこと,そしてご自身がこの学術をどのように継承し臨床を行っているのかを尋ねた。
『中医臨床』通巻151号(Vol.38-No.4)はこちら