【読みどころ・その1】p2~9
| ニッポンの中医臨床。 |
【巻頭インタビュー】伝統医学と西洋医学は両立に 謙虚さをもち,自己検証を(西本隆)
日本の中医臨床の実態に迫る企画の第9回。今回は自身のクリニックでの診療のほか,神戸大学医学部付属病院で漢方外来も担当する西本隆先生に話を聞く。西本先生は1984年から8年間,兵庫県立尼崎病院で臨床と研究に従事。同病院では中医学や一貫堂などそれぞれの持ち味が活かされており,そんな環境で最初の勉強を始めたという。西本先生自身は中医学,一貫堂のそれぞれのいいところを吸収し,状況に応じて使い分けているという。そのため中医学に限定せず,「私がやっているのは伝統医学」というスタンスだ。そして伝統医学は西洋医学を補完するものではなく両立させるものであるという。一方で,中医学でも日本漢方でもそれぞれの考え方や方法に対して謙虚さをもち自己検証を行うことも強調する。
【読みどころ・その2】p42~50
| 中国取材・国医大師に聞く。 |
視野は広く 内科を基礎にして他科に活かす(徐経世)
近代的でありながら伝統的要素をたくみに融合させて近年立て替えられた安徽省中医院。そのなかのに「大師工作室」の扁額が掲げられた国医大師・徐経世教授の伝承工作室を訪れた。徐経世教授は安徽省名老中医であるだけでなく,2014年に選出された第2回国医大師30名の1人である。徐家は曾祖父が科挙に合格した名家で,祖父・徐恕甫先生も科挙受験の準備をしていたが科挙制度が廃止されたため医学に転向し,安徽省の名医として名を馳せたという。徐経世教授はその祖父から医学を学んだ。このたび徐教授から徐氏内科の系譜やご自身の歩み,さらに臨床および学術思想についてお話をうかがった。徐教授は内科を修めることで婦人科等の他科にも応用できることを強調する。
【読みどころ・その3】p112~116
| 鍼薬同効から考えるコラボレーション。 |
腎虚に対するコラボレーション(関口善太)
鍼薬同効を特徴とする「李世珍の鍼」を日々の臨床で実践する著者が,鍼灸と漢方薬を組み合わせた総合的な治療を行うことを提案し,シリーズで鍼灸処方と漢方処方を比較しながら相互応用の方法を紹介していく。第3回では第2回に引き続き腎虚に対する鍼灸治療と漢方薬のコラボレーションについて取り上げる。まず前回の続きとして腎陰虚に用いる鍼灸処方と漢方方剤を取り上げて比較した後,さらに腰下肢の慢性痛や痿軟を主訴とする疾患,泌尿器疾患,それ以外の疾患の3つについて著者が行っている漢方製剤と鍼灸のコラボレーションについて紹介する。
【読みどころ・その4】p132~142
| 日本への中医学導入史。 |
【特別インタビュー】日本に中医学を普及・啓蒙したパイオニア(兵頭明)
兵頭明先生は1974年に中国へ渡り,1975年から1982年までの7年間,北京中医学院に留学して,当時の名だたる老中医たちと濃密に交流した経験もつ。帰国後は日中伝統医学交流の橋渡しとなり,さらに日本の鍼灸教育に中医学を滲透させるとともに,わが国への中医学の導入から普及・啓蒙活動を一貫して務めてきた。まさに日本の中医学を切り拓いたパイオニアである。今回,これまでほとんどインタビューに応えたことのない兵頭先生に,留学中の経験,当時の老中医の様子,導入期の日中伝統医学交流,鍼灸教育における中医学導入の経緯と総括などについてお話をうかがうことができたので,2回に分けて掲載する。
『中医臨床』通巻148号(Vol.38-No.1)はこちら