【読みどころ・その1】p2~11
| ニッポンの中医臨床。 |
【インタビュー】八綱弁証の再考を(吉冨誠)
日本の中医臨床の実態に迫る企画の第8回。今回は中医学だけでなく,韓国ソウルへの留学経験をもち韓国医学の造詣も深い吉冨誠先生に話を聞く。吉冨先生は医学生時代から医食農のつながりを大切にし,環境や自然に対し問題意識をもった人たちを引きつけた公立菊池養生園診療所の活動にかかわるようになり,のちに同所で勤め,診療部長も務めた。1年間の韓国留学では鮮于基先生のもとで学び,中医基礎理論のなかで曖昧だった部分をはっきりさせ,「中医学の学習方法と土台を作ってもらった」と語る。現代中医学は,基本概念である八綱弁証,特に陰陽と虚実に問題を抱えていると強調する。八綱弁証はどうあるべきか,吉冨先生自身の私案を提起する。
【読みどころ・その2】p78~85
| 医療用漢方エキス剤の中医学的理解とその運用。 |
柴胡剤を比較する(渡邊善一郎)
142号から始まった,医療用漢方エキス剤を中医学的視点から解説していく連載の第5回目。病名投与(処方単位)ではなく病態投与(生薬単位)できる力を身に付けることが本連載の目標である。今回は柴胡剤を比較する。少陽病の症状は人体の境界の部位に出現しやすいが,胸部と腹部の境界には膈があり,臓と腑の境界が半表半裏であり,半表半裏の病(少陽病)では膈の失調によって胸脇苦満が認められる。それに対してよく用いられるのが柴胡剤である。本稿では小柴胡湯を始め,その関連方剤である小柴胡湯加桔梗石膏・柴朴湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・柴胡桂枝乾姜湯・四逆散・大柴胡湯・大柴胡湯去大黄・柴陥湯などを取り上げる。
【読みどころ・その3】p100~108
| まんがで学ぶ中薬学。 |
加熱炮製と薬性(石井尊子)
まんがでやさしく学べる中薬学――「乾くんの中医学手帳・教えて!中薬学」の第6回。今回は中薬の薬性を把握するうえで欠かせない加熱炮製について取り上げる。たとえば地黄には収穫したままの鮮地黄,鮮地黄を乾かした生地黄,生地黄を蒸して加熱した熟地黄があるが,加熱によって甘苦味の生地黄の苦みが薄れ,甘味だけが残ることで,清熱薬から補血薬に変化する。姜にも炮製の違いによって新鮮な生姜,蒸し焼きにした煨姜,天日に干した乾姜の3種類があるが,熱を加えることで微温性の生姜が温裏薬に変化する。炮製によって中薬の薬性や作用を変化させることを遣薬とよぶが,これは経方や時方といった古典方剤をさらに個々の患者の病態に適合させる作業といえ,先人の智恵の結晶である。
【読みどころ・その4】p130~134
| 鍼薬同効から考えるコラボレーション。 |
漢方薬と鍼灸治療のコラボ(関口善太)
鍼薬同効を特徴とする「李世珍の鍼」を日々の臨床で実践する著者が,鍼灸と漢方薬を組み合わせた総合的な治療を行うことを提案し,シリーズで鍼灸処方と漢方処方を比較しながら相互応用の方法を紹介していく。第1回は鍼灸と漢方薬をコラボレーションする意義について述べる。著者はその意義を,①漢方処方の調整と,②費用負担の軽減にあると強調する。日本で使用できる漢方製剤は限定されており,それだけで患者の病態にぴったりと合わせることは難しいが,鍼薬同効の知識を用いて漢方製剤に鍼灸治療を組み合わせれば,それが可能となるという。また両者を組み合わせることで,漢方薬の服用回数を減らしたり,鍼灸治療の回数を減らしたりすることが可能となり,それが患者の費用負担の軽減につながると説く。
『中医臨床』通巻146号(Vol.37-No.3)はこちら