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通巻144号◇【リポート】日本東方医学会 学術大会

2016年2月21日(日),東京国際フォーラムにて第33回日本東方医学会学術大会(後援:厚生労働省・日本医師会)が開催された。メインテーマは「東方医学の未来像~日本だからこそ可能なビジョン~」,会頭は長瀨眞彦氏(日本胎盤臨床医学会理事長・吉祥寺中医クリニック院長)が務めた。午前中は一般講演が行われ,午後からセレモニー・会頭講演・シンポジウムが開催された。


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 日本東方医学会は,1973年に「医師のための針灸セミナー」修了者を中心に発足した「医師東洋医学研究会」(MSA会・会長:間中喜雄氏)が母体で,中医学を学ぶために中国から老中医を招聘し研修を重ねたことに始まる。1983年,正しい中医学や漢方医学の普及を目的に,医師東洋医学研究会を母体として(一財)東方医療振興財団が設立されたのを期に,日本東方医学会と改名した。東方医療振興財団は中医学をベースに生薬・鍼灸療法だけでなく,気功・食養生・波動医学,その他の代替医療を正しく普及するために発足した厚生労働省認可団体である。学術大会は毎年1回開催されており,今回は33回目に当たる。


谷美智士先生追悼セレモニー
 昨年2月に逝去された日本東方医学会名誉会長であった谷美智士氏を追悼するセレモニーが行われた。会頭の長瀨眞彦氏(写真)が司会,山本竜隆氏(朝霧高原診療所院長)・山口トキコ氏(マリーゴールドクリニック院長)・高橋博樹氏(東銀座タカハシクリニック院長)がスピーカーを務め,各氏がそれぞれ谷氏との思い出や学んだことについて語り,氏を偲んだ。
 谷氏は1972年日本初となる針麻酔による帝王切開に成功したほか,日本への中医学導入の草創期から日中の医学交流を展開してきた。またルーマニアやタイで小児エイズボランティア活動を行ったほか,氏のクリニックではがん・リウマチ・膠原病・種々の難病の治療を積極的に進めてきた。近年は,氏の開発した生体活動性治療のBAT療法(Bio-Active Therapy)の有効性の検討や普及に努めていた。
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プラセンタ療法
 会頭講演では,長瀨氏がプラセンタ療法を概説した。プラセンタ療法とは胎盤を治療に使用する療法で,中国では古来より「紫河車」という生薬名で使用されてきたが,近年は経口で用いる健康食品(ブタやウマ由来)として一般に広がっている。しかし,1950年代にヒト胎盤抽出エキスからなる2種類のプラセンタ注射製剤が日本で開発され,メルスモン®は更年期症候群および乳汁分泌不全に,ラエンネック®は肝機能障害に保険適用があることはあまり知られていない。長瀨氏は,臨床経験上,これら以外にも気管支喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症等のアレルギー疾患・膠原病・精神神経疾患・整形外科疾患・がんのQOL改善など幅広く使用できると述べ,プラセンタ療法の正しい知識を広げたいと強調した。


教育臨床カンファレンス
 シンポジウムでは,鍼灸・中医学・日本漢方の3者の融和を図ることをねらいとしたカンファレンスが行われた。鍼灸から佐々木和郎氏(鈴鹿医療科学大学教授),中医学から田中耕一郎氏(東邦大学医療センター大森病院講師),日本漢方から頼建守氏(東京医科歯科大学准教授)が,それぞれ症例をあげながら各自の治療法のアプローチを紹介した後,ディスカッションを行い相互の治療法の考え方を出し合った。基調講演で,佐々木氏は西洋医学で治療困難であった症例として耳管狭窄症に耳鳴りを合併した一例を紹介。今後は漢方治療との併用にも積極的に取り組みたいと述べた。田中氏は自閉症患者の症例を紹介しながら中医学的な病態理解を詳しく解説したほか,「流派を極め,あらゆることを学び続けること」を強調。実際の東洋医学の臨床は,より柔軟で有機的なものだと述べ,他の治療者のロジックを自分のものにする学びの重要性を語った。頼氏は無月経の症例を紹介。同氏は日本漢方の腹診に,胸・腹部を走行する経絡診を合わせた腹診を行っている。これによって点であった腹診が線や面に広がり,より病態を捉えやすくなるという。
(文責:編集部)



中医臨床 通巻144号(Vol.37-No.1)特集/慢性腎炎の中医治療


『中医臨床』通巻144号(Vol.37-No.1)より転載



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