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通巻139号◇【リポート】再始動! TCMN

 8月3日(日),東京衛生学園専門学校(東京都大田区)で「TCMN2014」が開催された。
 TCMN(中医学ネットワーク)は1997年に結成され,毎年夏に全国の鍼灸学校の学生100~150人が集って合宿形式で交流と学習を行ってきた組織だ。中医学を日本における伝統医学の共通言語と捉え,これを身につけることで伝統医学の交流の機会を増やしたい,そんな目的を実現するために15年にわたって活動が続けられてきた。
 2年前の夏,15周年記念大会を機に学生を対象としたこれまでの形式をいったん終了することになったが,再開を望む声に押されるようにして2014年夏,再び始動することになった。

編集部


新生TCMNのねらい


 大会前にTCMN2014実行委員会の齋藤隆裕先生と鎌田剛先生(ともに東京衛生学園)に,TCMN再開のねらいについて話を聞いた。齋藤先生は「『とにかく中医学を知ってほしい』という学生への啓蒙を目的としたTCMNは一区切りつきました。中医学はすでに一般用語になっていて,『中医学って,なにそれ?』という人はたぶんいないでしょう。これからのTCMNは臨床につながる中医学を継続的に勉強できる場にしていきたいですし,ここへ来れば中医学の臨床が学べるという場所にしていきたい」と,新生TCMNのねらいを語った。鎌田先生は「再始動にあたっては周囲の要望に押されたという面もあります」と述べ,「TCMNで講師を務めていただいていたある先生から,TCMNが学生たちのその後の卒後研修や専攻科への進学という面で動機付けの場所になっていたので,TCMNとともにそれがなくなるのはもったいないと指摘されましたし,かつてTCMNで学び現在は教員をしている先生からも,『学生を参加させたいのですが,今年はTCMNをしないのですか?』という声が寄せられたりしました」という。そして「今後は規模を小さくして,これまでのように単発のテーマで行うのではなく,臨床をテーマに講座を固定して継続的に参加することによって,学校では学べない実地の力がついていくような場にしていきたい」と抱負を語った。


大会の内容と参加者の声


 今大会には盲学校・教員養成課程・卒業生を含む18校から約120名が参加した。大会は朝9時半から夕方16時半までで,全4コマを履修する形になっており,2~4限は選択制で,参加者は興味とレベルに応じて講義を選べるようになっていた。症例討論・道具作り・座学・実技と,非常に盛りだくさんの内容で,特に1限目にケースカンファレンスをもってくるなど,学生たちに「臨床」を意識させようという強い意志が伝わってくる。


 1限目: ケースカンファレンス
 2限目: (選択)棒灸カバーを作ろう!/生薬入りの湿布を作ろう!/鍉鍼を作ろう!
 3限目: (選択)基礎学/診断学/処方学/弁証論治
 4限目: (選択)李世珍補瀉法/頭皮針/刮痧療法/推拿療法


再始動! TCMN ケースカンファレンス
ケースカンファレンス(写真をクリックすると拡大できます)


再始動! TCMN 棒灸カバーを作ろう
棒灸カバーを作ろう(写真をクリックすると拡大できます)


再始動! TCMN 李世珍の補瀉法を体験
李世珍の補瀉法を体験(写真をクリックすると拡大できます)


 大会に参加した専門学校3年の女性は,ケースカンファレンスについて「普段,他校の症例発表を見ることはないですし,今年の秋に在学している学校の発表を控えていることもあって,とても貴重な機会でした。また,質疑応答のときに他校の方がされる質問も面白く,こういう視点もあるのかと感心しました。私の在学している学校は中医学を取り扱わないので,中医学の視点のアプローチも新鮮で参加できてよかったです」と話す。ただ「座学は基礎学に参加しましたが,事前に問い合わせた内容と実際が一致していなかったのです」と,課題も指摘。実技では補瀉法に参加し,「過去の経験と情報から中国鍼は痛いというイメージがありましたが,とても優しい鍼で,手技も独特で新鮮でした」と,満足度は高かったようだ。
 教育専攻科卒業生の男性は,「さまざまな先生が色々なタイプの患者さんの症例を持ち寄り,非常に現実味のある貴重なカンファレンスだった」とする一方で,「時間が押し気味で一番聞きたいところが省略されてしまうなどの場面があったのが残念でした」と指摘した。座学は弁証論治を受講して「非常に複雑な症例に対して,どう効率よく情報を集め,どれを取捨選択していくかという臨床で欠かせない技術を学ぶことができました」と喜びを表した。
 登録販売者を目指しているという卒業生の男性は,カンファレンスについて「中医の基礎を中心とした弁証ですから生理観の理解を深めるのに役立ちました」といい,湿布作りに参加して「自家製の軟膏作りに興味をもっていたので,すごくヒントになりました。薬理を理解し実践として軟膏作りの研究をしていきます」と,意欲を高められたようだ。また推拿の実技に参加して「気を実感させていただきました。中医学は気の医学ともいわれますが(自分は)テクニックに走っていることに気づいたので,今後は気について勉強する機会を増やしていきます」と話した。
 専門学校2年の男性は,カンファレンスについて「現在の自分のレベルではわからないことも多かったですが,授業用に作られた模擬患者とは違い,実際の患者さんで実際に施術した鍼灸師のカンファレンスを聞けたことはとてもよかったです」と述べ,実技では補瀉法に参加し「学校では習っていない手技をいつもとは違う先生に教えていただき新鮮な感じでした。改めて鍼灸には色々な手技があり色々な考え方があるのだと思いました」と新たな気づきもあったようだ。そして会全体を総括して「講義や実技が選択式だったのでどれにしようか悩みましたが,より自分の興味があるものを探せてよかった。今回のような全国の鍼灸学校を対象としたセミナーでは他校の人と話す機会ができ,自分と同じものを目指している人がどれだけ大勢いて,どれだけ真剣なのかが感じられよい刺激になりました」と話した。



 今年は準備期間も短く,告知も十分にはできなかったという。来年以降,新生TCMNが臨床につながる中医学を継続的に勉強できる場所となることを期待したい。


TCMNのホームページ ☞http://tcmn.net

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