【読みどころ・その1】p2~9
| ニッポンの中医臨床。 |
中国医学でがん治療に挑む(小髙修司)
1970年代以降,日本に現代中医学が導入されてから40~50年になろうとしているが,日本の臨床にどの程度中医学は根付いているのだろうか。今号から日本全国で中医学を実践する医師を訪問して,「中医学との出合い」「中医学の魅力」「臨床応用の実際」などについてお話を伺い,臨床面における日本の中医の実態に迫る。
第1回は,80年代に都立豊島病院に新設された中医学の診療を中心とした東洋医学専門外来の初代医長を務め,90年代以降,中医学による専門医療を目的とするクリニックを開院し,日々中医臨床を実践する小髙修司氏(中醫クリニック・コタカ)にお話を伺う。小髙氏は特にがんの中医治療で豊富な経験を積んでおり,インタビューでは中医学によるがん治療の方法とポイントを中心に尋ね,「コタカ式」がん治療の一端をお示しいただいた。
【読みどころ・その2】p10~15
| FDA臨床試験進む。 |
肝線維化を抑制する中成薬「扶正化瘀片」(劉平)
2013年秋,上海中医薬大学が研究開発し,米国で臨床試験を行っていた中成薬「扶正化瘀片」がFDAの第2相臨床試験を終え,第3相臨床試験に進むというニュースが駆けめぐった。インターフェロン無効の難治な慢性C型肝炎の肝線維化患者に対して線維化の抑制効果が示されたというものである。
近年,心臓病の治療薬「複方丹参滴丸」など,FDAの第3相臨床試験まで進むような中成薬が現れ始めているが,この薬はこれまで西洋薬で対応できなかった分野をカバーするという意味で画期的だという。
本薬剤の研究開発者の一人,上海中医薬大学の劉平教授を訪ね,FDA臨床試験の概要,本研究の意義,「扶正化瘀片」開発経緯,本薬剤の作用,今後の展開などについて話を聞いた。
【読みどころ・その3】p114~120
| 難治性疾患に対する中医治療。 |
伏火外達を経て治癒した骨髄異形成の1例(木田正博)
伏火は,もともと温病の概念であるが,傷寒や温病のような外感病以外でも観察される。内傷雑病の場合でも,原因不明の微熱が続いたり突然の強い発熱が裏から生じたりする病態には,伏火が原因として関わっていることが多いという。筆者は,自己免疫病はその代表例で,その他の内傷雑病でも伏火外達はしばしばみられるという。
本稿で紹介するのは,気陰両虚に乗じて外感病が少陰腎に内陥して伏火となり,骨髄異形成を引き起こした症例である。その後,全身状態の改善とともに,外感を引き金としての伏火外達が可能となり,それを4回繰り返すことによって,この難病が治癒したと考えられるという。
骨髄異形成とは,異型血球が血液中に多数出現することにより死に至る疾患であり,白血病に移行する確率も高い。本例の場合は赤血球のみの異形成であり,発病後平均3年で死亡するタイプであったという。
【読みどころ・その4】p125~129
| 穴性論争へ一石。 |
薬性と穴性〈後篇〉(何金森)
近年,中国では「湯液治療と鍼灸治療の弁証論治は同一視できない」という論争が起こっている。そのなかで,「穴性は薬性をモデルにして作られた」として,「穴性と薬性には違いがあり同一視できない」といった主張も争点の1つだ。
前号(138号)に引き続き,上海中医薬大学の何金森氏が「薬性と穴性」をテーマに,両者の違いを明らかにしながら,穴性の意義について述べる。
何氏は,穴性を把握し,局所にとらわれずに病因病機の観点から全体をみて,穴性を規範として病症と経穴を一致させ,理論にもとづく配穴を行うことによって「理・法・方・穴・術」の一貫性が保たれ,十分な治療効果を得ることができるという。
そして,穴性の臨床応用はおもに配穴処方にあると強調し,合理的かつ精密に配穴する点にこそ穴性を把握する意義があるという。
『中医臨床』通巻139号(Vol.35-No.4)はこちら