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通巻138号(Vol.35-No.3)◇読みどころ



【読みどころ・その1】p36~43
読みどころ日中経方サロン」コーナー開設。
 日本漢方と中医学の思考法(黄煌)
 日中の方証相対の異同(加島雅之)



中国における経方研究のリーダーの一人,南京中医薬大学の黄煌氏を交え,日本の中医・漢方専門家とともに,「経方」を主題に意見を述べあう「日中経方サロン」コーナーを開設した。様々な角度からの「論考」や「コメント」を掲載し,日中伝統医学交流の糸口を探る考えだ。今号では,黄煌氏と加島雅之氏(熊本赤十字病院)の2人の論考を掲載した。
黄煌氏は日中双方の伝統医学の多様性を解きながら,経方研究の重要性を強調している。一方,加島氏は日本の吉益東洞の方証相対と,中国の柯琴や徐大椿の方証相対の違いについて,思想的背景から迫ってその相違を際立たせている。
加島氏は,中国の方証相対は「代替的方法としての方証相対」であり,柯琴や徐大椿の著作からは原理の発見を行おうとする試みが認められる一方,日本の方証相対は,吉益東洞の時代に流行した荻生徂徠の復古儒学の思想の影響を受けて,症候と薬物の関係のみを抽出して薬物の応用性を高めようとした「積極的な方証相対」であると指摘する。



  【読みどころ・その2】p72~78
読みどころ脈学の新展開。
 系統弁証脈学の特徴と価値(呉慧慧・斉向華)
 伝統脈学と系統弁証脈学(呉暁迪・勝晶)



「系統弁証脈学」とは,システム論(部分や要素に還元されず,逆にそれらを決定する全体性を対象とする分析・研究の方法論)の基本原理・法則にのっとり,中医学・認知心理学・現代情報学・物理学の基本原理を応用して創新されて脈学体系である。
提唱者は,山東中医薬大学の斉向華氏である。
斉氏は,一貫して神経内科の臨床に従事しながら,これまで中医睡眠医学と中医脈象の研究で多くの成果をあげてきた。
氏が提唱する系統弁証脈学は,複雑な脈象を25対の脈象要素に分類し客観化し,さらに臨床応用の方法論を構築した点に特徴がある。
今回からこの新しい脈学「系統弁証脈学」について4回に分けて掲載する。



  【読みどころ・その3】p114~120
読みどころ現代中医鍼灸の足跡をたどる。
 現代中医鍼灸の復興に力を尽くした陸瘦燕(陸焱垚)


民国時代,民間療法となっていた鍼灸学の復興と教育啓蒙に力を尽くした人たちがいた。南京の承淡安はその代表であるが,上海の陸痩燕も鍼灸の手法を発掘・整理し,現代中医鍼灸の基礎を固めた一人である。
鍼灸学の整理再編に南京が大きな役割を果たしたことは,その後の統一教材が南京を中心にまとめられたことからも明白であるが,私たちは,現代鍼灸の土台を作った拠点の1つとして上海にも注目している。特に鍼灸の補瀉手法を発掘整理した陸痩燕について深く掘り下げたいと考えてきた。今回,上海の龍華医院を訪れ,陸痩燕の娘である陸焱垚先生に会って,陸痩燕が現代鍼灸に果たした役割や陸氏鍼灸の特徴,さらにこの鍼の継承について話を伺った。




  【読みどころ・その4】p122~126
読みどころ経絡学の大家が実践する鍼灸臨床とは。
 李鼎教授の経絡弁証施治の特色(陳瑞瑩ほか)


鍼灸の文献研究で知られる著名な鍼灸学家である上海中医薬大学の李鼎氏は,「湯液治療と鍼灸治療の弁証論治は同一視できない」と説く。(インタビュー・鍼灸教材の変遷と弁証論治の鍼.中医臨床137号:120~127頁)
それでは,李鼎氏はどのような鍼灸臨床を行っているのだろうか。
本稿では,氏が強調する経絡弁証の方法と運用を明らかにする。
氏は経絡学説にもとづく経絡弁証を重視しているが,弁証の特徴は「分部」と「分経」からのアプローチである。分部とは部位のことで,病変が頭部に発生したのか,四肢,体幹に発生したのかを明らかにすることで,分経とは経絡の循行位置と照らし合わせて三陰三陽や奇経八脈に分類することである。 そして治療においては「調気」と「治神」によって経絡の運行を常態に戻すことを目指し,局所・近位・遠隔の3方向から治療穴を選択する。


中医臨床 通巻138号(Vol.35-No.3)特集/鍼薬併用

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