【読みどころ・その1】p2~7
| [中国リポート]社区で活かされる中医学。 |
地域医療に浸透する中医学~社区篇~(編集部)
2009年に中国の中央政府が医療改革の方針を示して以来,中国の医療システムの大変革が起こっている。最近の中国の報道からは,社区住民の医療や健康維持のために,中医学が大きな役割を果たそうとしている現状が見えてくる。
日中両国では社会制度が異なるため一律に論じることはできないが,中国の社区医療政策は,大規模かつダイナミックに展開されており,参考になる部分は少なくないと思われる。そこでこのたび,北京市東城区にある天壇社区と永定門外社区の2つの衛生サービスセンターを訪問し,社区医療の実態を取材した。
取材を通して,地域医療においては「保健」への重点が増し,そのなかで「上工は未病を治す」という考えをもつ中医学に高い期待がかけられている様子がうかがえた。
【読みどころ・その2】p62~66
| 中医学的臓腑・経絡理論を活かした治療。
|
掌蹠膿疱症と潰瘍性大腸炎の相関性について(猪越恭也)
掌蹠膿疱症と潰瘍性大腸炎はともに難治性の自己免疫疾患である。ともに患部に炎症性の膿疱や潰瘍を発症するが,掌蹠膿疱症ではおもに手掌・足蹠・爪とその周辺の皮膚,潰瘍性大腸炎ではおもに大腸と,炎症部位が異なっている。
このように,発症する部位と症状の違いから,両疾患はまったく異なった病症だと考えられやすいが,猪越氏は中医学の臓腑・経絡理論にもとづくと,肺を中心とした腎・大腸・皮膚の間で,深い相関関係が認められると述べる。
そこで氏は,両疾患に共通して用いる本治の方剤として八仙丸を提案する。そして,炎症部位の違いから標治の方剤として,掌蹠膿疱症には三物黄芩湯,潰瘍性大腸炎には槐角丸をそれぞれ併用する。
本稿では,その理論的根拠を示すとともに,両疾患一例ずつ症例を報告する。
【読みどころ・その3】p120~130
| ツボの主治を考える。
|
ツボの主治症表記の標準化と鍼灸の弁証論治(黄龍祥)
現行の中医鍼灸書にあるツボの効能表記は比較的新しく,歴代文献に記述されてきたツボの効果に関する記載は,○○穴は△△症を主治するという主治症だけである。中国中医科学院の首席研究員である黄龍祥氏は,規則性のないまま増やされてきたこれらツボの主治症表記を標準化しようと試みている。
その試みのなかで,黄氏は中薬の効能を模倣した現行のツボの効能表記――いわゆる「穴性」に疑問を投げかける。穴性については,1990年代からツボは薬性化できないという見解が示されたが,黄氏の主張はさらに進んで,ツボの主治症を標準化することで鍼灸独自の弁証論治体系の土台にしようとしている点で注目される。
このたび,ツボの主治症表記の標準化研究と,現行の鍼灸の弁証論治の問題点についてインタビューした。黄氏の論文と合わせてご覧いただきたい。
【読みどころ・その4】p150~154
| 背部兪穴の刺鍼は直刺? それとも斜刺?
|
背部兪穴の刺鍼法(浅川要)
背兪穴への直刺と,(1)背兪穴から督脈への斜刺,(2)膀胱経2側線への斜刺,(3)膀胱経1側線への横刺には,その効果においてどのような違いがあるのだろうか?
浅川氏自身は,背部兪穴は基本的に直刺すべきものと考えているという(当然,その奥にある臓器への損傷を避けるため浅めの刺鍼になる)。ところが,現代中国から届く鍼灸書は押し並べて背部兪穴は斜刺である。しかし,歴史的にみると,必ずしも斜刺とは限らないという。
そこで本稿では,『鍼灸甲乙経』『千金方』『外台秘要』『鍼灸資生経』『鍼灸聚英』『鍼灸大成』『類経図翼』『医宗金鑑』,承淡安,『中国針灸学』(程莘農主編・1964年),『針灸学』(上海中医学院編・1974年),『針灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学+後藤学園編)を並べて,歴史的流れから,背部兪穴の刺鍼法を検討する。そこから見えてくることとは!?
『中医臨床』通巻135号(Vol.34-No.4)はこちら