【読みどころ・その1】p38~43
| 経方理論で読み解く興味深い考察。
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麻黄升麻湯・乾姜黄芩黄連人参湯・升麻鱉甲湯について〈前篇〉(江部洋一郎)
一般に,麻黄升麻湯と乾姜黄芩黄連人参湯はそれぞれ上熱下寒の一形態,また升麻鱉甲湯証は疫毒によるものと説明されているが,一定の見解がない。
そこで,経方理論にもとづき再考察を試みたのが本稿である。
麻黄升麻湯については,傷寒六七日をキーワードに病態を明らかにし,経方医学的に処方の組み替えを試みる。
乾姜黄芩黄連人参湯については,太陽陽明合病における葛根湯・葛根加半夏湯証や,葛根黄芩黄連湯証を参考にしながら,瀉心湯類・黄連湯との比較から,心下における気と飲の関係と黄連の作用についても考察する。(升麻鱉甲湯については次号掲載)
【読みどころ・その2】p96~100
| 『傷寒論』のドラマチックな変遷。
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宋本『傷寒論』台湾故宮本簡考〈前篇〉(銭超塵)
現代に宋版の旧態を最もよく伝える『傷寒論』は趙開美本だといわれている。現在,趙開美本は,台湾故宮博物院,北京中国中医科学院,上海図書館,上海中医薬大学,瀋陽中国医科大学に,それぞれ1部ずつ,計5部が収蔵されている。
このうち最善のテキストといわれている,台湾故宮本について考察したのが本稿である。
台湾故宮本が清代以降にたどった伝播過程は次のようであったという。
姜問岐(医師)→魏子敏(書商)→徐坊(蔵書家)→北平図書館(北京)→アメリカ議会図書館(日中戦争時期)→台湾中央図書館(1965年)→台湾故宮博物院図書館(1985年)。
今号では清末の蔵書家・徐坊が趙開美本を所蔵していたときの顛末を描く。
【読みどころ・その3】p126~129
| 現代中医鍼灸の大家・石学敏院士に学ぶ。
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刺鍼による高血圧治療の理論と実際(石学敏)
脳血管障害に対する画期的な治療法である醒脳開竅法の開発者として,わが国でもよく知られている石学敏院士(中国工程院)が,刺鍼による高血圧治療について,その理論と方法を明らかにしている。
ベースになるのは「気海理論」である。
高血圧の病理の核心は「気」と「血」であり,治療においては,標治として調気を,本治として理血を行うという。具体的には,人迎・合谷・太衝・曲池・足三里を選穴する。
気血双方に配慮して,標本同治することにより,人体の自己調節機能の正常化をはかり,陰陽のバランスを整えることによって高血圧病患者に対する降圧効果を維持させる。
【読みどころ・その4】p120~124
| 経穴研究の第一線で活躍する趙京生先生に聞く。
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穴の研究は鍼灸の特性にもとづいて
現代中医鍼灸の基礎を築いたのは南京中医学院だといわれる。同校出身で,50年代に鍼灸学統一教材の作成に大きくかかわった楊長森教授に師事したという趙京生先生に,穴性問題をどう捉えているのか聞いた。
趙先生は現在,中国の鍼灸研究の総本山といえる中国中医科学院針灸研究所で,おもに鍼灸の概念や用語といった基礎研究に熱心に取り組んでいる。
趙先生は,穴性は民国時代にはじめて提起されたときから,概念も定義も曖昧だったと指摘したうえで,薬性を置き換えた穴性にはっきりと反対の立場を示す。先生は,穴の研究は鍼灸が本来もつ特性にもとづいて行われなければならないと強調する。
『中医臨床』通巻134号(Vol.34-No.3)はこちら