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通巻131号(Vol.33 No.4)◇読みどころ


 

【読みどころ・その1】p42~47

読みどころ熱の病態理解なくして漢方医学を把握できず。

 論考 さまよえる「熱」の変遷 ~陰虚内熱は古代からあったのか~(加島雅之)


熱の病態理解は,漢方医学の根幹となる論点であり,この理解なくして漢方医学を把握することはできない。とくに虚実と寒熱の関係性を認識することが重要である。
『内経』以降,宋以前まで,虚実と寒熱はおおむね「虚→寒」「実→熱」という公式によって理解されてきた。しかし,金元~明代にかけて「陰虚→熱」へと大きくシフトしてゆく。その背景に迫るのが本論の主題である。
現在,腎の第一病態は腎陰虚,第二病態は腎陽虚と理解され,腎陰虚の六味地黄丸が基本となり,腎陽虚の八味地黄丸がその加味方のように位置づけられている。しかし,八味地黄丸は『金匱要略』を出典としており,六味地黄丸は八味地黄丸から数百年遅れる北宋代になってようやく登場する。この矛盾を解く鍵こそが,熱の病態理解の変遷だという。
「熱」の変遷に迫る興味深い論考の第一弾。




 

【読みどころ・その2】p48~53

読みどころ 中西医を交流した唐容川の思考に学ぼう。

 『血証論』にみる気血水の理解(田中耕一郎)


十九世紀,中国に西洋医学が流入したことによって,中国伝統医学には,さまざまな変化が生じた。そのうち,西洋医学の概念を伝統医学に積極的に取り入れた人たちを「中西医匯通派」と呼ぶ。唐容川はその代表的人物の一人である。
とりわけ,血証の病理・治療法について詳細に論じた『血証論』は,前人の経験をはるかに凌駕する名著である。
本稿では,その名著から,陰陽・気・血・津液による身体観に,「火」の概念を加えた唐容川のユニークな見解にスポットを当てる。
唐容川は,気・血・水・火が互いに転化するという概念は,西洋医学にない中国伝統医学最大の特色であると考えていたという。伝統的な生理観に現代生理をいかに結びつけるのか,本稿のハイライトである。




 

【読みどころ・その3】p94~97

読みどころ 『宋板傷寒論』はいかに書き換えられたのか。

宋板の少陰篇って何だろう(別府正志)


宋改を経ていない文献資料と対照しながら,『宋板傷寒論』がそれ以前の『傷寒論』からいかに書き換えられたのかを明らかにする講座の第9回。今回は,少陰篇がどう改変されたのかに迫る。
隋唐代まで,少陰病には,『素問』熱論篇の陰病(吐)下の原則にしたがって下剤を使うのが一般的であった。傷寒が裏に入って熱毒に変わったという理解であったという。
しかし唐代末に,熱病ではあるものの,津液の不足や虚熱による症状,つまり陰虚の説がクローズアップされてくる。熱症の理解の大きな転換である。
そして,宋代になって,『傷寒論』には驚くべき書き換えが行われる。目からウロコの結末に唖然。




 

【読みどころ・その4】p140~144

読みどころ 認知症に対する鍼治療の効果と課題。

 認知症に対する鍼治療の効果(武田伸一)


超高齢社会に突入したわが国では,2012年現在,認知症患者は305万人とされ,15年には345万人,20年には410万人に達するといわれている。認知症の周辺症状に一定の効果をもつ薬物はあるが,決定的な治療法やケアモデルは確立されていない。
そんななか,社団法人老人病研究会では,認知症Gold-QPD育成講座を立ち上げ,認知症に特化した専門鍼灸師育成を行っている。
この報告は,第1回の育成講座に参加した氏が,およそ1年半にわたって,アルツハイマー型認知症患者に1週間に1回の割合で鍼治療を行った記録である。
氏は,その経験から,一般に用いられる評価指標のMMSEでは評価しきれない事項で改善効果が認められた,という興味深い指摘をしている。接遇面など,本疾患特有の課題もあぶり出されており,鍼灸師のみならず,医師,介護士などケアにかかわるすべての方に目を通していただきたい報告である。


中医臨床 通巻131号(Vol.33-No.4)特別連載/耳鼻咽喉科疾患


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