【読みどころ・その1】p2~14
| 中医を取り巻く最近の動向をピックアップ! |
巻頭企画◇文化としての中医学
近年,中国ではソフト・パワーの源泉として,中国の伝統文化が重要視され,とりわけ中医学は中国の伝統文化を代表する1つと位置づけられている。
国家戦略として,文化産業を振興して,国内で自国文化を発揚するのはもちろん,積極的に対外進出をはかり,中国伝統文化の世界進出を展開している。中医復興をはかる中医学従事者と国の戦略とが一致し,同じ方向に歯車が噛み合い推進力は倍加している。
本企画では,背景となる国家戦略の動きを押さえながら,具体化している事例を紹介する。さらに中医文化学科の創設者である張其成教授(北京中医薬大学管理学院院長)にインタビューを行い,中医学における伝統文化の位置づけについてお話を伺う。
【読みどころ・その2】 p40~44
| 臨床実践にマッチした中医弁証とは。 |
病機を核心にした弁証論治の新体系(周仲瑛ほか)
「数十年来,多くの医学者たちが証候を中心とした弁証論治の研究を進めてきたが,今に至るまで特筆すべき進展がみられない」
そう指摘するのは,中医診断学の旗手であり,南京中医薬大学の老中医・周仲瑛先生である。
症状・所見から証を弁別し,それを各類型に分類するというのが中医弁証の伝統的なパターンであるが,症状・所見は各人の体質や病歴などによって複雑に変化するうえ,証候分類が多すぎて統一できず,ややもすると機械化・硬直化しやすいため,柔軟に弁証するという中医学本来の特色や利点をうまく発揮できていないという。
そのため,周先生は病機を審らかに観察することが弁証論治の鍵であるとしたうえで,「病機証素」という概念を使って,病機を中心とした弁証論治の新体系を提案する。
【読みどころ・その3】p88~91
| 『傷寒論』にまつわる疑問。 |
宋板の陽明篇って何だろう(別府正志)
陽明病の病態理解として,「胃家実」というのが一般的な認識であるが,果たして宋板傷寒論にもそう書いてあるのだろうか? 目からウロコの「傷寒論講座」の第6回はそんな投げかけから始まる。
宋板を見ると,確かに「胃家実」とあるが,これにたいする注釈として小字注が付されており「一作寒」(あるいは寒に作る)とあって,他のテキストでは「寒」と書いてあるものがあることを示している。「実」ではなく,なぜ「寒」なのか,本稿では『太平聖恵方』を使って検証する。さらに,著者は「胃中寒」から「胃家実」になった要因や,この疑問が宋以降ほとんど言及されてこなかった理由についても説き明かす。
【読みどころ・その4】p140~144
| 日本の臨床に適合した穴性構築に向けて。 |
穴性論[第1穴] 合谷(金子朝彦ほか)
針灸の弁証論治は,「理・法・方・穴・術」の一貫性をもった治療システムであるといわれる。なかでも穴性(ツボの作用)は,弁証結果を治療に結びつけるうえで極めて重要な概念である。しかし,その穴性はいまだ統一されたものになっていない。
本企画の目的は次の2点。①穴性を整理再編して臨床で使いやすいものにすること。②中国での経験集積である従来の穴性論を日本の臨床にあった使い勝手のよいものにすることである。
第1穴は合谷を取り上げる。まず合谷の穴性を集約的に論じ1つのチャート図にまとめる。さらに他のツボとのコンビネーションによる作用の広がり,主治症から合谷の守備範囲を規定する試み,現代の研究文献からの考察,治験例の紹介といった各テーマについて5人の臨床家が説く。
『中医臨床』通巻128号(Vol.33-No.1)はこちら