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▼『中医臨床』プラス
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通巻126号(Vol.32 No.3)◇読みどころ
【読みどころ・その1】p42~44
| 中医学で難病に挑む。 |
化痰排膿法を主治としたCOPDの症例(木田正博)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は,喫煙などの有害物質の吸入に起因する炎症によって気道系や肺実質系に病変が形成され,それらが複合的に作用することで閉塞性換気障害を呈する疾患として知られる。わが国では数百万人の患者がいるといわれ,患者数の多さからも注目されている疾患である。
この報告は,酸素吸入が常時必要であった肺気腫患者に対し,化痰排膿法を主とした治療を行った結果,すみやかな改善がみられ,その後5年間にわたって健常人と変わらない生活を送ることができた症例である。
治療は先瀉後補で,まず化痰排膿を主とした治療を行い,邪実がほぼ取れた後,益気養陰・補腎納気を中心とした補法の治療に切り変えている。ただし,補法時にも化痰排膿・化瘀を補助的に加えている。COPDでは化膿が完全に消えることがないからだという。
【読みどころ・その2】 p88~91
| 『傷寒論』にまつわる疑問。 |
『宋板傷寒論』の特徴って何だろう(別府正志)
『傷寒論』は「宋板」こそ最善本であるとされている。しかし「宋板」が出た頃,当時の医師らが仰天するような内容のヘンテコ本だったとしたらどうでしょう。
『傷寒論』にまつわる疑問を解き明かす連載の第4回目は,こんな刺激的なコメントで始まる。
筆者は,「宋板」とは,隋唐代を生き延びてきた古代中国医学を,校正医書局のエリート医師たちがかき集め,彼らが信じる「良き姿」に大幅に書き直した書であるが,特に手を入れたのが六経篇であると指摘する。
一例として,筆者は六経篇の条文数の偏りを指摘する。
とりわけ太陽病篇のボリュームの大きさが目を引くが,各篇の始めにある一字低格下条文を除くと,太陽病篇178条,陽明病篇84条,少陽病篇10条,太陰病篇8条,少陰病篇45条,厥陰病篇56条である。
本稿では,なぜこのような不自然な編集が行われたのかを解明する。
【読みどころ・その3】p118~131
| 「日本的中医針灸」確立へ,教科書から臨床へのステップアップ。 |
鍼灸特集 不眠の鍼灸治療
睡眠障害を抱える現代人は増えており,日本人の5人に1人は寝つきが悪い・途中で目が覚めるといった何らかの不眠症状に悩まされているという。
その原因は,①身体的要因・②生理的要因・③薬理的要因・④心理的要因・⑤精神疾患の5つにまとめられることが多い。治療においては,睡眠衛生指導が第一選択であり,薬物療法はあくまでも補助的に,必要最小限に併用されるべきだとされる。
中医学では,不眠には虚実それぞれのタイプがあり,虚証には心腎不交・心脾両虚・心肝血虚によるもの,実証には胃腑不和・肝鬱化火によるものがある。治療は,虚証には扶正を主にし,実証では清熱瀉下・清熱化痰によって邪気を取り除くことになる。
本特集では,交通事故による頸椎捻挫に伴う不眠の症例,主訴である子宮筋腫を治療する過程で持病の不眠が改善した例,術後疼痛を主訴とした患者の不眠の治療例を紹介する。
【読みどころ・その4】p132~135
| 私の鍼灸補瀉手技 |
隣接補瀉論(金子朝彦)
弁証論治はシステマチックにできた診断治療システムであるが,弁証の結果を治療に結びつけるうえで,不可欠かつ重要な補瀉の技法はきわめて曖昧である。
わが国の中医鍼灸の臨床現場では,いったいどのように補瀉法が実践されているのだろう。それを探るため,毎号ベテランの臨床家に登場していただき,自らの補瀉手技を披露していただくリレー連載の第2回。
今回ご登場いただくのは,使用する鍼をすべて「寸3・0番」に統一し,わずかなタッチの差を手に入れて,独自の補瀉法を確立し実践する金子朝彦氏。金子氏の認識する独特の経絡論と,それに応じた補瀉論について紹介する。
金子氏は,経絡を体表から浅い順に,①浅部絡脈・②経脈・③深部絡脈の三層構造として認識しており,技法とともに,どの層の経絡に対して補瀉するのかがきわめて重要であると強調する。
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