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通巻125号(Vol.32 No.2)◇読みどころ



 

【読みどころ・その1】p32~36

読みどころ 剤量こそが方薬の神髄。

 「大黄」の大量応用(仝小林)

用薬における大剤量の妙味を紹介する第2回目は,「大黄」について取り上げる。
大黄の性質は峻烈で下泄を得意とするが,じつは用量しだいで「攻法」にも「補法」にも作用するため,その応用範囲はきわめて広いという。小剤量であれば「補法」が中心になり,大剤量であれば「攻法」が中心になる。
仝氏は,小剤量(3g以下)であれば,健胃して消化を助ける作用がある。中程度の剤量(1~2gの大黄粉を冲服するか6~12gを煎じて服用する)であれば,潤下・逐瘀作用がある。大剤量(15~30g)であれば,通瀉攻逐作用はきわめて強いと述べる。近年では重篤な急性疾患に大剤量の大黄(通常30g,多ければ100~200g,なかには500gという症例もある)で治療して著効を得るとともに,目立った副作用もないという報告が多く見受けられるという。




 

【読みどころ・その2】 p56~57

読みどころ 難病・奇病に挑む 杜雨茂教授の臨床

 食亦(しょくえき)

陝西省の名老中医・杜雨茂教授は代々続く中医家系に生まれ,幼少より家訓を受けて黄帝・岐伯の術に研鑽を重ね,特に張仲景の学問に精通している。医学と教育に携わり50余年,その確かな臨床弁証と融通無碍な投薬法によって,数々の難病・奇病を治療してきた。その診察に陪席した教え子が杜教授の臨床風景を綴る。
第1回は食亦。ある時「突然食べても満腹感を覚えなくなり,毎日4,5回食べても飢餓感があるので,毎晩夜中に起き出して食事を摂らなければならない。一昼夜で摂る主食の量は従来は500gだったのが2kgまで増えたが,乾燥した便しか出ず,体重はむしろ次第に減少していった」と訴える患者が訪れた。奇病と思われるこの症状,じつは『素問』気厥論篇に「食亦」と述べられている病症にピタリと一致している。『内経』理論と自らの臨床経験を照らし合わせて,この疾患の主要病機を捉え治療に挑む。




 

【読みどころ・その3】p152~159

読みどころ 東日本大震災 中医学では何ができるのか

 鍼灸マッサージボランティア/被曝への対応

3月11日に発生した東日本大震災は甚大な被害をもたらした。多くの尊い人命が失われ,今なお不自由な生活を強いられている被災者も数多い。また3カ月以上を過ぎても福島の原発は予断を許さない状況が続いている。
医療面において震災発生以来,多くの医療スタッフが支援にかけつけ,またボランティア活動の輪も広がった。鍼灸マッサージボランティアもそうした活動の一つだ。今号では東京の鍼灸師・三輪正敬氏(いやしの道協会)の呼びかけに応じ,宮城県塩竃市・浦戸諸島で活動を行った藤井正道氏(結(ゆい)針灸院)に被災地における活動をリポートしてもらった。
今回の震災では原発事故による健康被害の問題も深刻である。とりわけ長期経過に関しては不明な点が多く,人々の不安をより大きなものにしている。このたび白川徳仁氏(呼泉堂針灸院)から,被曝の予防として中医学の智恵を活かせないかと考えた文章が寄せられた。これまでに経験のない事態であるがゆえに推論の域を出ないものの,よりよい予防法づくりのきっかけとしてほしいという思いが詰まっている。




 


【読みどころ・その4】p134~139

読みどころ 私の鍼灸補瀉手技

 石学敏の手技量学にもとづく補瀉法(河原保裕)

虚実を弁証した結果を,鍼灸の治療に反映させるためには補瀉法はきわめて重要な概念であり手段である。しかし,弁証の結果を治療に結びつけるために不可欠なこの方法がじつに曖昧だ。補瀉手技にはさまざまな方法があるうえ,各方法にも諸説あり,さらにいずれの補瀉法を採用するかは個々の考えにゆだねられている。
わが国の中医鍼灸の臨床現場では,いったいどのように補瀉法が実践されているのだろうか。それを探るため,毎号中医鍼灸を実践するベテランの臨床家に登場していただき,自らの補瀉手技を披露していただくコーナーが始まった。
第1回目は,中国・天津中医薬大学の石学敏氏の手法にもとづき,実践をとおして自分なりの補瀉の感覚を習得してきたという河原保裕氏の補瀉の考えと手法について紹介する。「再現性のある治療を行うことが何より大事」と述べる氏の言葉どおり,その文章はきわめて具体性に富んでいる。




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