【読みどころ・その1】p32~37
| 煎じ薬 取り巻く環境は厳しいがやはり欠かせない。 |
中医学の魅力(平馬直樹)
エキス剤と煎じ薬は,日本で中医学を運用するための両輪である。
エキス剤は近年,多くの西洋医に認知され運用機会が増えてきているが,エキス剤で解決しない難病などに遭遇したときには,きめ細やかな弁証を的確に処方に反映させられる煎じ薬は必須である。
しかしその使用状況を俯瞰してみると,相対的に縮小傾向にあるように見える。
煎じ薬を取り巻く環境とともに,煎じ薬の運用方法について実際の症例を提示しながら解説していただいた。
【読みどころ・その2】 p88~90
| 現代医学に挑む中成薬・通心絡カプセル。 |
現代医学に対する伝統中医薬の挑戦
先頃,中成薬・
複方丹参滴丸がFDAにおいて第2相試験を通過したが,
絡病理論にもとづき研究開発された通心絡カプセルも熱い視線が注がれている中成薬の1つだ。
昨年,米国の生理学雑誌『American Journal of Physiology Heart and Circulatory Physiology』に通心絡カプセルのプラーク安定化作用に関する研究報告が掲載された。
今回紹介する文章は,この研究報告を題材にして,中医薬が現代医学に導入されるためにはどういった問題をクリアしなければならないのかを指摘していて興味深い。
この研究報告は,今後,中成薬が世界の医学に打って出るための試金石になるものと思われる。
【読みどころ・その3】p114~132
| 「日本的中医針灸」確立へ,教科書から臨床へのステップアップ。 |
鍼灸特集 痹証の鍼灸治療
現代医学において痹証は,頸肩腕痛・肩関節痛・上肢痛・腰下肢痛・膝痛といった症候を呈し,リウマチ熱・リウマチ性関節炎・関節リウマチ・関節周囲炎・結合組織炎・痛風・坐骨神経痛などの疾患名を包括している。現代医学に照らし合わせると痹証に相当する疾患概念は広範囲に及ぶ。
本特集では,頸椎症が原因の放散痛に対して痹証の観点から治療した症例,肩関節周囲炎を肩痹と捉えて治療した症例,関節リウマチに督脈通陽法を用いて軽快した症例,慢性化し活動性の高い難治の関節リウマチに対して寒熱挟雑時期が効果的な治療のタイミングであることを示した報告などを紹介する。
【読みどころ・その4】p140~145
| 肩こりさえも弁証鑑別が必要。 |
肩こりに対する弁証の必要性とその弁証傾向(石川家明ほか)
肩こりは日常よく遭遇する症状である。しかし,患者個々の体質や同時に存在している全身の問題と肩こりを関連づけた分析は,現代医療の場では行われていない。
そこで著者らは,4年にわたり整形外科付属鍼灸院に来院した肩こり患者121症例を集め解析を行った。その結果,興味深い弁証傾向が現れたという。
筆者らは肩こりの成因は一様でなく,個々のライフスタイルや体質によって病因病機も異なるので,臨床上適切な治療・生活指導を行うためにも,証を的確に弁別することが必要だと強調する。