【読みどころ・その1】p30~36
| いまなぜ日本中医学会なのか。 |
中医学の魅力(平馬直樹)
今夏,日本中医学会が設立される。いまなぜ日本中医学会なのか。
日本中医学会設立の背景には,弁証論治を中心とした治療や,中国伝統医学本来の身体観・病態観を専門的に研究する場がほしいという期待があった。
さらに同学会は中国の中医界との交流窓口としての役割も担う。そこでは中国のものをたんに持ち込むのではなく日本から中国に向けて発信していく姿勢も求められる。
これからの日本の漢方医学の発展に,さらに世界に向けて,この学会がどのように寄与することができるのか。平馬直樹先生に聞いた。
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【読みどころ・その2】 p46~48
| 現象の背後に隠された本質をついた興味深い症例。 |
寒熱錯雑の弁証論治――多汗症の症例(篠原明徳)
中医学において寒熱の弁別は,患者の病態を把握するうえで最も基本となるが,実際の臨床では,患者の自覚症状と舌脈などの他覚所見において寒熱の乖離がみられることも少なくない。
寒熱の問題には,真寒仮熱や真熱仮寒の病証だけでなく,1人の患者に寒熱の証候が錯綜している場合も多く,正確に弁別することは容易ではない。
今回,著者は自覚的には熱証が前面に現れている患者に対して,舌脈など他覚所見をふまえて炮附子による温陽を併施して改善をみた症例を経験した。現象の背後に隠された本質をついた症例といえ興味深い。
【読みどころ・その3】p54~58
| 経方理論から生まれた慢性腎不全の処方。 |
慢性腎不全に対する養腎降濁湯の効果(江部洋一郎)
養腎降濁湯は慢性腎不全に対して透析の前後いずれにも有効である。
基本となった処方は,『傷寒論』にある桂枝去桂加茯苓白朮湯と真武湯。
著者は,慢性腎不全は血中の濁が過剰となり濁毒と化して生体を傷つけるものと考えており,濁毒は主に湿→湿濁→濁毒という過程で産生されるという。
治療においてはこの濁毒を排出する降濁と,肝での解毒がポイントとなる。
本稿では,本方の組成・方意をはじめ,効果や問題点についても言及する。
【読みどころ・その4】p118~137
| 「日本的中医針灸」確立へ,教科書から臨床へのステップアップ。 |
[鍼灸特集]顔面痛の鍼灸治療
顔面痛は特発性三叉神経痛が主体となるが,症候性三叉神経痛や,そのほか三叉神経そのものの痛みでなくても,頭頸部の病変,すなわち眼科・耳鼻咽喉科,歯科疾患も原因に含まれ多岐にわたる。
西洋医学的治療で難渋する例も多く,鍼灸治療を求めて来院する患者も少なくない。
本特集では,三叉神経痛に対する日本人3名の臨床経験を紹介するほか,三叉神経痛に対して通絡に調神を組み合わせた「調神通絡法」を用いて高い効果を上げている中国の武連仲教授の経験も合わせて紹介する。