イギリスの中医教育
101号の本欄で,「イギリスにおける中医の立場」と題してイギリスにおける中医法制化の状況を紹介した。イギリスではこの数年来,中医診療所・薬局が急増しており中医教育も活発化している。今回は,イギリスの中医教育の状況を紹介したい。アメリカの事情と異なり,イギリスでは多くの場合,北京中医薬大学と共同で学院を作り,イギリス政府の許可も受けている。
●Middlesex University
ロンドン北部にあるMiddlesex Universityは,19世紀に作られた国立大学である。本大学の衛生生物環境科学学院(School of health, Biological and Environmental Sciences)が,ヨーロッパではじめて中医薬の5年教育課程を設置することを提案し,北京中医薬大学と契約し,1997年10月に正式に開校した。教育内容は,北京中医薬大学の5年課程とほぼ同じで,北京から招いた講師と地元の専門家らによって行われている。さらに5年目の5カ月間は北京中医薬大学附属病院で臨床実習を行っている。卒業すると中英両校から卒業証書と学位証書を授与される。
2001年1月,本大学に中医臨床センター(Asante Academy of Chinese Medicine, Affiliated Teaching and Research of Chinese Medicine for Middlesex University)が設立された。理事長にはイギリス中医界の功労者が就任し,臨床指導教官はみな中国国内の中医薬院校の卒業生であり,イギリスで臨床経験のある中医師である。本センターはイギリスにおける中医教育・研究・臨床の中核となっている。
●ロンドン中医学院(Chinese Medical Institute and Register :CMIR)
医療分野を中心とする商社亜美迪医薬集団(AcuMedic.ltd)が,1993年に北京中医薬大学と契約し,「英国中医注冊学会」に登録される,ヨーロッパで最初の中医学院を設立した。本学院の教育は,英国医学継続教育局に承認されており,さらに英国医学針灸学会の承認も得ると同時に多くの医薬保健機構に認められている。本学院の学生のほとんどは医学界に影響力をもつ医師である。
学生はPGEA単位を取得することができ,取得すれば政府の援助を得られる。1998年までに6期400名の卒業生が送り出されている。
1864年に設立したイギリス「全国草薬医生委員会」は,1925年に「国立草薬医生研究所」に変わり,さらに1990年,「本草療法学院」と名称が変更された。本学院は,全日制の4年制で,欧米の多くの本草治療医を育てた。そのほか,ロンドンのWestminstet Universityは,1996年に3年制の中医学部を設置した。現在,政府の予算も得ている。そのほかにも多くの大学・医院・研究院で中医薬に対して興味を示し,研究に着手している。(海洋)