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通巻108号(Vol.28 No.1)◇コラム



 80年代以降,中医学はドイツの国民の間で好印象をもたれている。いくつかの医科大学では,伝統医学課程が715時間も設定されている。そのうち針灸は161時間を占めている。中医学コース301時間のうちでも,中医処方が24時間であるのに比べ,針灸は166時間も占めており,ドイツでは針灸が絶対的に優勢である。90年代中頃になると38カ所の医学院で針灸課が開設され,10カ所では「中国医学」講座が設けられた。1992年,ケルン会議で針灸課の学習時間を160時間と定め,試験を行うことも決定した。

大学教育
1.ミュンヘン大学
 本学では,1977年から針灸巡回教育講座が始まった。1982~89年の間に,伝統医学の授業は715時間あり,そのなかで針灸は161時間でトップに立っている。  1983年,経験医学研究所が設立され,多くの中医経典,例えば『難経』『医学源流学』などの著作がドイツ語と英語に翻訳された。『中国古代医学思想史』『銀海経緯』なども出版され,教科書としても使用されている。『黄帝内経』の翻訳も準備段階である。
 医史研究所所長のP. U. Unschuld教授は,著名な医史学者・薬学者・漢学者であり,哲学・薬学・公衆衛生学の博士でもある。80年代から,東方医学史・中医学・針灸を研究し,『本草史』『中医倫理学』『中国医学思想史』『中医経典原著導読』『医学在中国』など多くの著作がある。また『難経』『医学源流学』などの専門書の中国語とドイツ語の対照本も出版した。また教授は,国際アジア伝統医学研究会の代表で,ドイツ中医学協会副会長でもあり,政府の中医問題に関する最高顧問も務めていた。1984年10月,日本で開催された第17回国際内科学シンポジウムでは,「現代医学における中医学の役割」というテーマで講演し,中医学を文化背景から深く理解して研究し,よく応用すべきことを強調した。
 Manfred Porkert教授は著名な漢学者で,本学の東亜研究所所長である。彼はドイツ語・英語・フランス語・ラテン語・中国語に精通しており,近年,中国中医科学院と共同で,『中医学規範辞典』『伝統針灸学教程』『中医学概論』を編集した。個人の研究成果によりも『中医学理論基礎』『中医診断学』『中医臨床薬理学』『中医方剤学』といった本に多く携わった。

2.ベルリン大学
 本学は,ドイツで最も早い1963年に中医学の授業を設けた。授業を受けもったのは,医学・哲学・漢学の学者であるF. Hubotter教授である。

社会教育
 この40年で,ドイツにはドイツ中医教育センターやドイツ針灸師研修センターといった中医薬や針灸を教育する組織が次々と設立された。そこでは学習班・研修班・座談会などの形で中医理論と臨床を教えながら,厳格な試験制度も作られている。さらに本場中国で中医学を学習することも実施している。

1.マスコミの効果
 とある映画製作会社がミュンヘン大学と共同で,中医薬のドキメンタリーを作り大きな反響を呼んだ。そして新たに中医総合療法をテーマとした映画を撮影し,中医学の科学研究と学校教育を促進しようとしている。

 ハンブルグにあるInatitut Zesain.Dufur traditionelle Chinesische Medizin Hamburg 杜中医研究所は,中国と連合して「20種類の常見病の簡明な針灸療法」という中国語とドイツ語のビデオを作成し,中医針灸の教育と宣伝に使っている。

 ドイツ最大のテレビ局であるZDFはKortzting中医医院を繰り返し報道し,中医薬の特集を組み,社会的に大きな反響を呼んでいる。

2.中国中医薬大学の進出
 Kortzting中医医院は,バイエルン州政府の支持を得て,北京中医薬大学が地元の実業家と合弁で作った学校である。この学校は2年制で,授業時間は192時間,定員20~30名で,学生は医師である。基礎教育以外に,ドイツの医師が臨床で遭遇した難治症例を取り上げ,中医学的な治療方法で解説し治療方法の提案をするため,すばらしい教育効果が得られている点が特徴的だ。ほかにも,南京中医薬大学,上海中医薬大学,広州中医薬大学,成都中医薬大学,黒龍江中医薬大学,浙江医科大学および中国中医科学院といった機関と,ドイツの医学界が協力し,教育と学術交流ならびに臨床治療の分野で中医学を展開している。

(海洋)



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