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通巻112号(Vol.29 No.1)◇コラム



●アルゼンチンでは針灸が中心
 アルゼンチンの針灸は,19世紀フランスから伝えられた。普及に最も力を入れたのはレバイルト医師で,1954年首都ブエノスアイレスにアルゼンチン針灸協会を設立した。現会長はサムエル・アイゼンバーグ医師で,会員は約500人。

 外科手術の麻酔に針灸を取り入れたカウル教授は,自らが経営する眼科病院で900名の患者の手術に針麻酔を用いた。さらに自らスペイン語の針灸書を書き,アルゼンチン針灸医学院を設立した。現在,娘のダイアナ・カウルがこの学院を引き継いでいる。

 これら協会と医学院では,歯科医・獣医・運動機能専門医を対象に針灸教育を行うほか,定期的に一般医師を対象に針灸の講習会を開いている。

 1981年中国から王鈺教授がやって来て,アルゼンチンと中南米各国で初級・中級・上級の針灸医師を教育し,200人余りの針灸医師を育成した。1985年王鈺教授はアルゼンチン中華針灸学会を設立し,2年後に政府の認可を得た。1987年王教授が第1回会長を務め,中国針灸がアルゼンチン・中南米に本格的に広がった。会員は約120人。できる限りアルゼンチンの針灸レベルを上げるため王教授は国際的に有名な中国の針灸学者を招き,学術交流をはかった。特に1990年王本顕教授が中国針灸の研究の進展具合や経絡療法・電針療法の学術報告を行い,アルゼンチンおよび中南米の参加者に大きな刺激を与えた。

 1989年アルゼンチン司法教育部の許可を得て,アルゼンチン中医公会が設立された。会員は97人。1997年世界針灸学会連合会(WFAS)に団体会員として入会している。

 1998年アルゼンチンにいる8千人余りの中国人のうち針灸医療に従事しているのは30人しかいなかったが,2001年には全国で針灸医師は500人ほど(アルゼンチン籍の針灸医師が最も多い)にのぼり,全国規模の針灸学会は4つになった。アルゼンチン針灸学会会長のファン・ティン氏は「私と2人の助手で西洋医学で治らない喘息・関節炎・鼻炎・偏頭痛などの患者を毎日平均50人ほど治療している」と言う。しかし,政府が保護政策を厳しく施行しているため,外国から来ている医師の資格は認められておらず就業できない。また針灸医師のほとんどはアルゼンチンの医科大学を卒業した医師が短期の訓練を受けるだけで,中医学院で系統的に学習しておらず,このことがアルゼンチンの針灸の発展に影響している。


●国際交流
 1992年エバ・ベロン基金とアルゼンチン中華針灸学会は「中医薬・針灸によるエイズの予防と治療」のため,安徽中医学院の専門家を招き,「中・アルゼンチン伝統医学研究センター」を設立した。1995年陝西中医研究院と「推拿減肥治療センター」を開設する考えに同意。1997年中国4大リハビリセンターの1つである遼寧鞍山市湯崗子理療医院と契約し,首都ブエノスアイレスでリハビリ保健センターが開設された。ベッド数は1,300床。物理療法・推拿針灸など70種類の治療方法によりリウマチ・強直性脊椎炎・外傷後遺症・骨関節炎・腰椎間盤突出症・皮膚病を治療する巨大施設である。

 1997年ブエノスアイレスでアルゼンチン中華針灸学会の主催する第2回国際伝統中医学術大会が開催された。アルゼンチン・チリ・ペルー・中国から300人ほどが出席し,中草薬・気功・針灸による関節炎の治療,西洋医学と中医学の関係についての討論・研究を行った。

 2004年アルゼンチン伝統医学結合国際基金会のマサロ教授らが中国の山東中医薬大学を訪問し,中南米における中医教育と学術組織の共同文書に調印した。

(海洋)



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