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通巻104号(Vol.27-No.1)◇コラム



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中医だけで重症の救急患者を救う老中医・李可先生   ―『李可老中医急危重症疑難病経験専輯』(山西科学技術出版社)を読んで―

劉 海洋(本草薬膳学院)

『李可老中医急危重症疑難病経験専輯』

本書との出会い
 はじめて李可先生の名前を目にしたのは,『中国中医薬報』の記事を読んでいたときでした。
 2004年に広西中医学院の劉力紅教授が書いた『中医思考』という本が中国で出版されたのですが,その本の中には劉教授流の『傷寒論』の解釈と合わせて,中医学に対する情熱と自信,ならびに中医学の抱える問題点が語られ,たいへんな話題を呼びました。その本の著者・劉教授が,中国中医薬報社の記者のインタビューに応じ,記事の中で李可先生のことを語っていたのです。そこには,李先生の著書である『李可老中医急危重症疑難病経験専輯』も紹介されていました。
 
李老中医の人物像
 広州中医薬大学の鄧鉄涛教授は,李可先生を非常に高く評価しています。2004年の6月,劉教授は鄧鉄涛教授の紹介状を携え,山西省霊石県中医医院の院長である李可先生を訪ねました。6日間の滞在中,彼は李可先生と「中医の現状」「臨床効果」「救急患者の治療」などについて語り合いました。その後,治療に苦慮していたあるB型肝炎の患者の治療を李可先生に依頼したところ,2剤を服用しただけで検査値が改善し始め,最終的に治癒したため,たいへん感銘を受けたという話が,インタビュー記事には書かれていました。そして,李可先生に会うことによって,中医薬による救急医療・重症疾患治療に対する自信がよりいっそう確固たるものになったというのです。
 その記事を読んで,山西省霊石県という田舎にいる李可老中医とは,いったいどのような先生なのだろうか? 『李可老中医急危重症疑難病経験専輯』とはどのような本なのだろうか? 李可老中医は孫思邈のような人物なのだろうか? と,次々と興味が湧いてきました。
 その後,実際に『李可老中医急危重症疑難病経験専輯』を手にして読んでみたところ,鄧鉄涛教授が李可先生を推薦する理由がなぜなのかが,よくわかりました。
 医者がおらず,使える薬も少ない中国の貧しい田舎では,人々は体調が良くないからといって気軽に病院へ行くことはできません。ほとんどが,重病もしくは危険な状態になったときに,はじめて緊急で病院にかかります。このようなところで何十年も生活している李可先生は,独学で中医学を学び,1人ひとりの患者に対応するために,中医の内科・婦人科・小児科・外科・皮膚科・五官科・針灸科を習得し,1978年に中医師試験に合格しました。命を助けるという使命感から,『傷寒論』をはじめとする多くの書物を研究し,さまざまな治療方法を経験した結果,危篤・重症患者に対する中医による治療手段を確立し,救急治療分野において中医学という一席を獲得したのです。
 
李老中医の経験方
 この本の中には,李可老中医が経験方により,多くの患者の命を助けた症例が紹介されています。それぞれの症例には,患者の氏名・職場・住所が詳しく書かれており,その治療効果は信用に値するものと考えられます。破格救心湯は,治療に使われている処方の1つです。
 処方の組成は,附子30~100~200g,乾姜60g,炙甘草60g,高麗人参10~30g(別煎,服用時に一緒に飲む),山茱萸60~120g,生竜骨粉30g,生牡蛎粉30g,活磁石粉30g,麝香0.5g(分沖服)。
2,000mlの水を加え,弱火で1,000mlになるまで煎じます。2時間間隔で1日5回服用し,さらに必要なら日夜連続して1~2剤を服用します。救急の場合には,湯を加えて強火で煎じ,随時服用させ,24時間に3剤を服用させることもあります。
 この処方は張仲景の四逆湯類の方剤と張錫純の来復湯(野台参・山茱萸・生竜骨粉・生牡蛎粉・炙甘草・生芍薬)を加減して作った処方です。この処方には,李可先生の用薬の大胆さ,服用法の臨機応変な対応が顕著に現れているといえます。李可老中医はこの処方により各種の心不全・狭心症・心筋梗塞・重症の冷え性・感染症などの患者を治療しており,成果をあげています。
 この本の中には,このような李可先生の50年にも及ぶ臨床経験が,多くの症例を通じて紹介されています。それを読んで,李可先生に会いたい気持ちが湧いてきました。いつ会えるかはわかりませんが,まずは,ぜひみなさまにもこの本を読んでいただきたく,推薦いたします。


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